ある日世界に大穴が開き、そこから無数の化け物達が溢れてきた。
多くの人々が逃げ惑い、そして死んでいった。
村が焼かれ、街が壊され、国さえも滅ぼされていった。
そこには人の尊厳もなくあるのは絶望という名の地獄が続くだけだった。
人々はゆっくりと滅びゆく世界を悲嘆と諦念をもって神に願うしかなかった。
しかし、とある英雄の出現により事態は一変する。
彼の名は「アルゴノウト」。
彼は王に騙され、陥れられながら友の力を借り聖霊の武器を手にミノタウロスを倒し池に生け贄となった姫を助け出したのだ。
彼の偉業は世界中に広まった。
時に笑われ時に嘲笑を受けたただの青年が成し遂げた偉業に多くの人々が熱狂し世界に変化をもたらしたのだ。
彼らはのちにこれを「英雄神話」とよび、英雄達がつぐむ物語として多くの英雄達が生まれ死んでいくその生き様を称えそして繋いだ。
だが、そんな彼を偉大な英雄と称える者は少ない。理由は彼の伝説は滑稽で喜劇だからだ。特に熱狂するような熱い物語ではなくどちらかといえば読んでいいる方が笑うようなコメディアンな内容だからだ。そして死に様も獅子狩りの失敗というあっさりとした死に方だこれでは語り手もどう語れというのか。でも彼の仲間は知っている。彼が何を成し遂げたかったのか、彼がどうして「道化」となったのか、彼がどんなに望んでもそこにたどり着けなかったが故の絶望そして苦肉の策、その道の果てを知っている。
そう、彼は道化、ただただ人々の笑顔を願った優しい道化。
されど彼こそ英雄達の船の先頭を行く者。
繰り返そう、それこそが英雄「アルゴノウト」である。
「そこのレディ、こちらの花をあなたへ」
「あら、紳士な坊や、ありがとう。」
その男は今、ナンパをしていた。
ここは迷宮都市オラリオなんか凄い奇跡が重なり彼は記憶を保持したまま3000年後の世界に転生していた。
どこぞの変態じじいに「出会い求めるならオラリオに行け」と言われ、その口車に乗りはるばる彼はオラリオにやってきたのだ。彼の今世の名は「ベル・クラネル」祖父の影響を少なからず受け多くの思いを胸に彼は・・・
「なにやってんだーー!ベルくーーん!!」
ナンパを敢行していた。
優しく慈愛に満ちあふれた女神に叱られながら連れ戻され、説教をされる毎日が彼の新しき日常だった。
「いいかい。ベル君。」
「はい。神様。」
「私達は零細ファミリアで眷属が一人しかいない底辺ファミリアだ。」
「言っていて悲しくなりませんか。神様。」
あえて無視する。
「君がダンジョンに潜り魔物を狩りそしてお金を稼いでくれているおかげで私は生活出来ている。」
「神様もバイトで大変じゃないですか。」
「そうだが、そういう問題じゃない。いいかい、ベル君。君が恋愛をすることは怒らない。それは君たちの自由であり、僕は眷属を鎖につなぐような真似は絶対にしない。」
「でもね。・・・君がナンパを繰り返したせいで何回ホームを吹き飛ばされた?」
天界でも有数の慈愛に満ちた女神は、それはもうご立腹だった。