「宗教二世」の問題はここ数年さらに注目されている。
厚生労働省は令和4年12月27日に「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」を公開した。
〇児童虐待への該当性を判断するに当たっては、Q&Aで示す例示を機械的に当てはめるのではなく、児童や保護者の状況、生活環境等に照らし、総合的に判断する必要がある。また、その際には児童の側に立って判断すべき。
と明記している。しかし、虐待されている親子関係に、さらに宗教が加わったのが若林奈緒音さん(40代・仮名)のケースだ。
奈緒音さんは幼少期から母親からの暴言・暴行に苦しめられてきた。少しでも早く自立しようと必死でお金を貯めて計画し、高校卒業前に一人暮らしに成功する。しかし会ったときの暴言はやむことがなく、さらにお金をせびるようになっていた。
自分のように苦しむ人をつくりたくないと体験を率直に綴る連載「母の呪縛」、20回前編では、お金を渡すのは最後にしようと10万円を渡したときの悲しい体験をお伝えした。後編では、その日に受け取った宗教のチラシから、過去のことを思い出す。
中学生のときの母の「宗教」とは
母に絶望し、泣き疲れて帰宅したとき、街中で何気なく受け取った宗教の勧誘のチラシが目にはいった。母が様々な宗教にのめり込み、私に多くを強要してきた過去が蘇る。
宗教に母がのめり込んだのは、兄と私が中学生、妹が小学生だった阪神大震災の直後だ。それまでは「きちんとする生活」を大切にする主婦だった。パッチワークをし、手の込んだ料理をつくり、部屋もきれいにする。キッチンには自分が大切にしている食器を整然と並べていた。
しかし1月17日のあの日、母の目に入ったのは愛する食器が粉々になっているところだった。そしてその日から母は「きちんとした生活」を捨て、変わっていったのだ。
ある日突然キッチンに神棚のようなものが備え付けられ、紙のお札が飾られた。「毎朝一番はじめのお水と炊き立てのご飯を飾ります、台所で朝いちばんの水道をひねる人がお水を供えるように」と言われた。小さな鏡のようなモノや金色の高価そうな置きものがキッチンの角に桐の台に飾られていた。
しかし、椅子に乗らないと神棚には届かない。イスをつかって背伸びしてやるしかない。
突然加わったルールは毎朝面倒だし、すごい高価なものと言われたので怖かった。兄と妹は忘れても怒られることはなかったが、私は許されなかった。