フジテレビ、社長・会長辞任も収拾難しく 番組改編控え
中居正広さんと女性とのトラブルに関するフジテレビジョンの一連の対応は、同社の経営責任問題に発展した。2024年12月の問題発覚後、対応は後手に回った。広告主や株主からの圧力も日に日に増し、広告営業は事実上ストップした。追い込まれた末の経営刷新だが、事態の収拾は見通せない。
フジテレビの嘉納修治会長は27日の記者会見の冒頭、「人権に対する意識の不足から、十分なケアができなかった。当事者の女性に対し、心からおわびを申し上げます」と陳謝し、自身と港浩一社長の辞任を改めて表明した。
港社長は17日の記者会見を一部のメディアに限ったことについて「透明性や説明責任を欠くものだった。メディアの信頼を揺るがしたことを痛感している」と話した。
28日には親会社のフジ・メディア・ホールディングス(HD)の清水賢治専務がフジテレビ社長に就任するが、新体制は暫定的なものとなる。遠藤龍之介副会長は「第三者委員会の報告が出てくる時期(3月末)を一つのめどとして、それぞれの役員が責任をとる。常勤役員全員に波及すると思う」と説明した。
経営混乱の背景には後手に回ったフジテレビの対応がある。
フジテレビが当初、日本弁護士連合会のガイドラインに準拠した独立性の高い第三者委員会の設置について明言しなかったことも同社への不信を増幅させる結果となった。
広告主は雪崩を打ったようにフジテレビでのCMを差し止めた。同社は1月にACジャパンに差し替えた分は広告料金を請求しないことを決めた。24年3月期のCM収入は1473億円で、月間平均で約122億円となる。
4月の番組改編期に向けた営業はピークを迎えている。清水氏が「セールスは事実上、止まっている」と述べるなど、厳しい状況が続いている。
日本たばこ産業(JT)は27日、「人権問題を重視しており、今後の適切な調査と説明を引き続き求めたい」とのコメントを出した。2月分のCMについてはキャンセルを求め、3月分については状況に応じて判断する。ヤクルト本社は「フジテレビの対応が明確になるまでは広告の出稿を見合わせる」とした。
株主からもコーポレートガバナンス(企業統治)の欠陥を指摘する声が相次ぐ。アクティビスト(物言う株主)として知られる米ダルトン・インベストメンツは「真相隠蔽」と強く批判した。
その遠因にはグループのいびつな統治構造や企業風土がある。グループのトップとして40年近く実権を握ってきたのが、日枝久フジサンケイグループ代表だ。17年に代表権のある会長を退いたものの、フジ・メディアHD、フジテレビともに取締役相談役として残る。
労働組合から記者会見への出席を求める声が上がったが、日枝氏は27日、姿を見せなかった。遠藤副会長が「出処進退については色々なところで話している」と述べるにとどめた。嘉納会長が「業務執行には関わっていないため」と説明する場面もあった。
遠藤副会長は23日にも「すべてのことを日枝が決めているわけではないが、影響力があることは間違いない」と話した。フジテレビの社長は業績悪化や視聴率の低迷を理由に、短期での交代を繰り返してきた歴史がある。こうした人事案件にも日枝氏の影響を指摘する声もある。
フジテレビ新社長の清水氏は「信頼回復なくして、フジの未来はない」と述べた。再生に向けた道程は長い。
フジテレビの港浩一社長は、中居正広さんと女性とのトラブルに同社社員が関与したと報じられた問題について謝罪しました。トラブルへの社員の関与については外部の弁護士らによる第三者委員会を設置し、調査します。スポンサー企業がCMを差し止めるなど、影響は拡大しています。
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