【前書き】
これを書き始めたのは2024年5月の話。久々(といっても、3ヶ月ぶりくらいなんだけど)に東京に行ったら、あまりの空気の悪さと街の臭さにすっかりやられてしまって、厳しさを感じている。なのに帰りたくないと矛盾した事を思っているのは、きっと帰ったら仕事が待っているからだろうな。学生の頃より、旅行から帰りたくない気持ちが強くなっている気がする。……などと書いていたわけだが、小生の悪い癖である。そう、必殺「後回し」である。気づけば年が変わってしまった。…はい。書きます…。
そんな事はさておき、今回のレンズは…
AI AF Zoom NIKKOR 28-105mm f3.5-4.5D(IF)
である(電車の中で撮った写真かよ、とセルフツッコミしておく)。1998年に登場したズームレンズになる。例によっていつものDタイプニッコールである。
帰省した時には毎度赴くのが恒例になりつつある、新宿中古カメラ市場さんで¥9,900で購入した。本当にここはオールドレンズが豊富にあっていいんだよなぁ。ゆっくり見れるし。今後もお世話になります。
本レンズは名機F100のキットレンズだったみたいだが、今では残念ながら(?)語られることも少なくなってしまった。地味〜にあまり世間の日の目を見ることがなかった、ちょっとだけ可哀想なレンズな気がする。
さて、長きにわたって小生のメインズームは、AI AF Zoom NIKKOR 24-85mm f2.8-4D(IF)だった。
これはかなりの万能戦士で、単焦点の沼に浸かる前は(手持ちの玉がこれしかなかったからというのもあるが)D750につけっぱだった。北海道に来てからも使用頻度は高く、流石に85/1.4Dを買ってからは出番が減っていたものの、道外へ出かける際はほぼオトモしてもらっていた。そこまで重すぎず、写りもそこそこ良好で、とにかく「標準域なら何でもできるズーム」だからであった。
だが、2024年に入ってズームリングが30mmあたりからワイド側に回らなくなってしまった。多分砂粒か何かが入り込んだか、内部で何かがイカれて引っかかったのだろうけど。D750を買った時に一緒に購入して、街中から砂浜まで、雨の日も極寒の日も、かなりハードに手荒く使っていたので、むしろ今まで何事もなかったのが不思議なくらいだ。元々中古だし、初期個体だしね。
そんなわけで年始から4ヶ月くらいは(修行、そしてスナップガチ勢という建前で(笑))、ちょうど24-85をカバーしている我が家の単焦点軍団、①Ai24/2.8s、②50/1.8D、③85/1.4Dの御三方に徒党を組んでもらっていたんだが、なんだかんだであれば楽なのが標準ズームというものである。
小生の場合は航空機でのお出かけも年数回はあるし、いくら重いものを本人が持てるからと言って、持ち込み重量の制限は(特にLCCは…)許してくれない。札幌でウロウロするにしても、何本もレンズを持って重たい荷物で歩き回るのはちょっとねえ。すすきののセクスィーで可愛いチャンネーたちに鼻で笑われてしまうのがオチってもんである。まあ、身なりからして怪しいオタクでしかないんで、別にいいんだけどさ。
もう一本24-85/2.8-4Dを買うのでも良かったのだが、小生が購入した時のバーゲンセール状態(確か、1.2万くらいで買えたはず…)からかなり相場が上がってしまった。やっぱり広角端f/2.8は魅力的だよねぇ。まだ修理もきくし、せっかくだから他のレンズも試そうじゃないかということで、後継候補に上がっていたのが本レンズになる。
メインズーム選定にあたり、ハーフマクロ機構がついている(もしくは(そんなズームレンズあるわけがないんだけど)24-85/2.8-4Dと同等クラスに寄れる)のは絶対に譲れない項目のため、必然的にハーフマクロ付きのDタイプニッコールに絞られてしまった。さらばVR機構よ…。
その上で「広角端、もしかして24mmまでなくてもいいんじゃないか…?」という結論に至った。今の小生のスタイルでは、メインズーム使用時に24mmという距離はあまり出番がなかったし、広角〜超広角域では手持ちにすでにAi24/2.8s、トキナーAT-X16-28/2.8がある。ガチンコ広角撮影はこの2本に任せればいい。ちょうど(重量的にいつも持ち出すかどうかはともかく)AT-Xとの接続もいいし、普段使いのワイド側は28mmスタートで足りるという判断になった。
一方のテレ側は「ポートレート用に85mm以上あればいいでしょう…」という緩い基準である。なんだかんだで70mmじゃあ足りない場面が多いんだよね。まあテレ側も85mmでよかったんだけど、105mmという距離がどうにも苦手というか慣れないので、修行の意味も込めて使いましょうね、ということにしておこう。
開放F値は3.5-4.5と明るいレンズではないが、どうせいつも通りf/5.6よりも絞って使うことしかないだろ、ということであまり気にしていない。現代のデジタル機ならある程度感度を上げて対応したっていいし、元々Dタイプのズームレンズに開放での性能は求めてないし、ということで…(笑)。と言いつつも、作例にはそれほど載せていないが、裏では開放でもそこそこ撮ってしまった。
【外観】
外装はそれなりに年季が入っていてキズもあるものの、光学系は綺麗だったので買うことにした。キットレンズ出身ということもあってか、そんなに高級感のある外観ってわけでもないし、問題なく使えりゃあいいんですよ、使えりゃあ。外観文字はプリントっぽい。まあキットレンズ出身なんで…。
ズームリングが太くて回しやすい。トルクもそこそこ。ぶら下げていたら勝手に回っていくなんてこともまったくない。一方でフォーカスリングはほっそい。あまりMFでの使用は考慮してないのかな。その割にはトルク感がないわけでもないので、後述するマクロ使用時は使えなくもない。もちろん本家マイクロニッコールなんかと比べちゃダメなんだろうけど。Dタイプニッコールなので絞りリングも残っている。
はい。ということで毎度恒例(?)の、マクロ機構切替スイッチ。50mm〜105mmで使用可能。最短撮影距離は圧巻の0.22mで、これが日常使いだとキクんですわ。50mm未満ではそもそもスイッチがマクロ側に切り替わらない。またマクロ使用時、フォーカスリングがマクロ域にあると元に戻せないので、お空にでもAFしてから切り替えてあげるとスムーズ。あ、もしくはMFに切り替えてガチャガチャやるか。どちらでもいい。最初は慣れないが、使ってるうちにこなれてくる。50mm以上しか使わないような場面では、ずっとマクロ側にしておいてもいいかも。
シリアルナンバーはここ。比較的初期の個体みたいだ。別に隠すようなレンズってわけでもないので、小生はここまで普通に全レンズともシリアルナンバーを公開してしまっている。そんなにやましいこともないし、ノクトとか大砲単焦点みたいな隠す必要性がなくもない貴重な玉も、我が家には残念ながらないんで…。
D750に装着。初見の感想としては…「いやー、ダサいっす…」。めちゃくちゃダサいってことはないけど、「下の上よりの中の下」ってとこ。24-85/2.8-4Dとか、85/1.4Dなんかと比べてしまうと、もうダメ。フードをつければ…と思うかもしれないが、参考までに調べたらラッパみたいになってしまい、尚更ダメだった。しかもIFじゃないから、ラッパの先端がグルグル回るんだぜ。もうつけない方がいいんじゃなかろうか。まあいいっすよ。撮影に使えりゃあ。
小生のフィルム機、F90Xにも装着。こちらの方が本来想定されていた組合せに近いんじゃないかと思われる。しかし片手で持つには少ししんどいくらいの重量だ(F90Xが重いんだけどね…)。オールプラスチッキーズなのにね。中身はちゃんと詰まっておりますよ。ボディもレンズも両方、腐っても一応メイドインジャパンなんで。
【作例】(現像は全てLightroomで適当にやってます)
ほぼ初撮りに近い1枚。なぜ209系を撮ったのかは分からないが、多分逆光耐性を見たかったんだと思う。まあ、こんなもんです。いやー、マズいですなぁ。…見なかったことにしよう(笑)。列車自体の描写は良し。
買った翌日、羽田のエスカレーターを上っている途中に見上げて撮りたくなった1枚。スナップにいいぞ、とこの辺りで既に思い始めている。
普段はあまり出番がない50mmでスナップしようと考えた…のだと思われる。のだが、これを見ても特にコメントできることがない(笑)。
ハーフマクロONにして、グッと近づいてみると世界がさらに広がる。色ノリがやりすぎず綺麗なのも推しポイント。この時代の標準ズームの醍醐味は、やはりハーフマクロだなあ。
綿毛の質感まで、よく捉えられているんじゃなかろうか。やっぱりハーフマクロは、小生の撮影には最早欠かせなくなってしまった。背景ボケはどうだろう。ちょっとベッタリ目かな?
珍しくEasti-Dが来たので。鉄道撮影でも万能に働いてくれる。105mmで距離が足りないなら、潔くAPS-Cクロップするか、自分が動けばいいのサ…
団臨の撮影。シャドウを持ち上げ、あとは露光量とハイライト調整。f/11まで絞ってくると結構パリパリした感じ(?)になってくる。これはちょっと…という方もいるかも。
ハーフマクロは50mm〜なので、これは範囲外。最短撮影距離0.5m目一杯で撮ったんだろうが、ISO4000まで上げているのと、それでも暗くて低速シャッターなので、拡大されるとちょっとキツイかな〜。奥ピンにして誤魔化してますね、これは(笑)。
コントラスト上げ、ハイライト下げ、質感が損なわれない程度にノイズ軽減。全体的な粗さはまあ、ご愛嬌。水平線が意外に歪んでなくて驚いた。
来春廃止+棒線化されるということで抜海駅へ。ワイド端で樽型収差あり。
テレ端でハーフマクロON、APS-Cクロップして、アキアカネを大きく捉える。こういう芸当もできる。SSもまだ余裕があるので、もっと絞りたかったですねえ。
- AI AF Zoom Nikkor 28-105mm F3.3-4.5D+D750
- 105mm 1/125秒 f/8 ISO100
- 北海道池田町
破綻しない程度にコントラスト上げ、ハイライト下げ、シャドウ持ち上げ。太陽も正面から受ければこの程度で済むらしい。
APS-Cクロップで撮って出し。ここまでやれるかと正直撮っててビックリした。
見返してみると、完全に主観だが50mm〜85mmあたりで特に良好な結果が出ている気がする。これもAPS-Cクロップで。イルカはとにかく速いので、SS勝負。AFについては、日中だからだと思うが迷いや遅さを感じることはなかった。もっとも、AF駆動に関してはこのレンズが凄いというよりはD750がすごいわけで。
APS-CクロップしてISO8000でこれなら、まあいいでしょう。水族館ではガラスにぴったりくっつけて撮らないと反射がひどいが、寄れなくて困るという悩みを抱える方は多いだろう。これは0.22mまでガンガン寄れるし、APS-Cクロップすればテレ端換算150mmクラスになるので、水族館撮影にはなかなかいいレンズだと感じた。もちろん、室内では感度爆上げ必須で、なおかつブラさないスキルが必要になってくるが…。
【総括】
「一般ピーポーならば」日常はこれ1本で(ほぼ)完結する。
使用前からの期待通り、割となんでもできる優秀な万能レンズである。決して明るさはないが、高感度耐性が上がっているデジタル時代だからこそ、その万能性に磨きがかかっている。絞って撮っても感度を積極的に上げられることでシャッタースピードを稼げるから、いい時代である。ノイズだって、そりゃボディに依存する部分もあるけど、後からでもある程度消せちゃうし。勿論、現代の物凄いシャープネス、バッキバキの解像を求める方には縁もゆかりもない(というか、元々そこまでのクラスのレンズではないので)。ある程度粗さも受け入れられて、大きく引き伸ばしたりしないユーザーなら、本レンズは合うのではないだろうか。ボディ次第だが。
全部ではないけどDタイプニッコールは基本的に手ブレ補正がないので、高感度耐性が上がってSSが稼げるボディで使える今、Dタイプが再評価されるのもわかる気がする。アッサリ目だが描写に変な癖はなく、素直にDタイプニッコールらしいレンズだと言っていいと思う。逆にそういう電子的な(?)制御がないから変な壊れ方もしないんじゃないかなあ。一時期のM/A切り替えリングみたいな、構造上お粗末だった部分は置いといて。あとこれはおまけだが、手持ちの玉の事情で「手ブレ補正」というものをここ4年ほど全く体感していないのだが、手ブレに関して自分の感性が上がるのはいい。最新のレンズやボディを使っていればやらなくてもいいはずの、涙ぐましい苦労や思慮を手間暇かけてやるわけである。でもこの姿勢は忘れたくないね。
話を戻そう。ハーフマクロ使用時の描写はお見事の一言だ。日中帯であれば「これ以上の写りのマクロを求めるなら本格派単焦点マイクロニッコールを買え!」としか言えない出来、と言っていいのではないだろうか。小生はこれで十分満足してしまっている。日常の撮影に加えて、花や昆虫・フィギュアなど、マクロの世界もついでに撮ってみたいというユーザーには大変ピッタリだ。
またAPS-Cクロップするとテレ端で換算150mm級と、望遠に片足突っ込んだくらいのスペックになるため、水族館や動物園での撮影でも活躍できる。水槽展示の撮影で寄れずに困っている方には救世主的存在だ。
一方で本レンズを使用するにあたり、どうしてもよぎってしまう存在がある。後年(2000年)発売になる、Ai AF Zoom Nikkor 24-85mm f2.8-4Dである。前述の通り私のメイン標準ズームだったわけだが、ここで24-85/2.8-4Dに対し、本レンズを採用するメリデメを比較してみることにしたい。先輩後輩による似たもの同士の全面戦争である(笑)。
【28-105/3.5-4.5Dを選ぶメリット】
・軽い:重さにして約100g違う。あまり大きな違いではないが軽いに越したことはない。
・フィルター径:28-105は62mm。24-85は72mmである。基本的には小さい方が安い。
・ハーフマクロ:花撮影などと言った本来的なマクロの使い方をするならば、28-105の方がテレ側が長い分、(若干だが)より被写体に寄れる気がする。最短撮影距離はほぼ同じ。
・描写:D750ではどちらもアッサリ目の描写で、具体的な差をうまく言葉にはできないんだが、28-105の方が個人的にはほんのちょっとだけ好みだ。花撮影するなら断然こっち。
・相場が安い:24-85は今や2万越えがゴロゴロしている。28-105はその半額前後程度から、状態のいい玉が手に入る。
【28-105/3.5-4.5Dを選ぶデメリット】
・暗い:各焦点域で24-85と比べ少し暗い。感度を積極的に上げないと室内撮影等では24-85より苦しい。割とISO4000〜、下手したら8000〜のシチュエーションも出てくる。高画素機では夜間や室内が厳しいかも…?(といっても、最近の高画素機は優秀なんでしょうけど…)
・広角域:28-105の方が広角域の歪曲が気持ち大きいような気がする。頑張ってはいるけれども。とはいえ24-85もテレ端はそれなりに歪むから…誤差の範疇かもね。まあそんなにデカい歪曲ではないので、気にならない人はOK。
・ズーミング:28-105はズームで前玉が回る。PLフィルターを使用しての撮影等には向いていない。
・ハーフマクロ:ここが一番デメリットに感じた。50mm〜ではテーブルフォトにおいて苦しい場面が出てくる。かといって28mmや35mmでは最短撮影距離0.5mで足りない…。24-85は35mm〜でハーフマクロ使用可能で、この35mmという画角はテーブルフォトに最適。卓上で撮れないものは無い。
・見た目がダサい、安っぽい:ボディにつけた状態で美しさを感じるのはやはり大口径の24-85。外装も28-105の方がDタイプあるあるのツヤツヤプラスチック感があり安っぽい。まあ元々キットレンズだから仕方ないんだけど。
・中古品の状態:24-85の方はほんの数年前まで現行品で売られていただけあって、高くても状態の良い玉は多いんじゃないかな。(何故か)まだ大本営で修理できるみたいだし。
…ということで、上記の2本比較してみたものの、かなーーーーりの一長一短である。とはいえ役割被りまくりなので、2本どちらも持ち出すわけにはいかない。個人的には外観の質感含めて、どちらか1本だけ所有するなら…相当迷うけど、うーん……24-85/2.8-4Dを選ぶかな〜とは思う。なぜって…ハーフマクロが35mmから使えるので…。
ただ、決め手は本当にこれだけ。
28-105/3.5-4.5Dも捨てがたいくらい、性能もコスパも良い隠れ優秀ズームレンズだと思うんだよ。なんならコスパはもっと良い。105mmまでどうしても欲しい!という人は即決でいいんじゃないか。
万能なのは同じだし、なんだかんだで愛着が湧いてきてしまったこともあって、最近はずっとお供してもらっている。カメラを持ち出すとなると、こいつは毎回ついてきている。旅行中はこれ1本で殆ど済むからラクだよね。写りにも満足してるので、まあ当分手放すことにはならなさそうな気がする。
中級機以上の一眼レフボディを買った方、最初のお供の1本としていかがだろうか。きっと長きにわたって活躍してくれるはず。ちょっとダサい外観も含めて、愛してあげてほしい。レンズフードは、多分あの大きさではあまり効果を発揮できないだろうから、「ラッパ」で撮影がしたい物好きな人だけ買って付けてくれ(笑)。