3週間後の彼との再会
3週間の留学はあっという間に過ぎた。滞在中一泊でラスベガスに行き有名なショーを見たり、ナパバレーのワイナリーを見学したりもした。彼が出会った時に話してくれたそのラスベガスの土地に今一人で来ている。寂しさなのか恋しさなのか、彼と来たらどうだったかなとも考えた。まだまだ勉強が十分ではないし、サンフランシスコの空気に別れを告げるのは名残惜しく、すぐにでも戻ってきたいと思った。最終日近く、当時の日本では、エルメスやヴィトンほどまだメジャーではなかったボッテガベネタのショップを見て、彼に長財布、自分にトートバックを購入した。泥棒事件以来、初めての買い物だった。妹にもお土産を購入して帰国した。
彼は空港まで迎えに来てくれていた。永遠の別れのように涙ぐんで離れた3週間前とは違い、弾けるような笑顔で迎えてくれた。思わずただいまーと言ってハグをした。その瞬間、言い表せられない違和感を抱いた。ふわっと、香水のような匂いがした。これまでは整髪料のにおいだけで、香水はしなかった。お互いに離れていた期間に感じるものがあったと思う。それをどんな風に伝え合うのか?分かり合えるのか?私は少し不安になった。
彼が運転する車でマンションに戻り、荷物を置いて軽くご飯を食べようとなった。以前彼が話してくれた景色を見てきたよとか、出会った彼女のこと、食べ物がおいしかった、出発時にくれたショールがとても役立った、彼へのお土産を渡し、もっと勉強をしたい、早くいけばよかったなど…私から話したいことは尽きなかったし、彼もニコニコしながら「へえー」と聞いてくれていたが、その顔は笑顔なのにつまらないのか興味がなさそうだった。小さい頃から母親の顔色伺っていた私は話すのをやめて、3週間彼はどんな時間を過ごしたの?と聞いた。彼は何も変わらず過ごしていて、寂しかったよと言ったが、私のテンションと彼のテンションの違いはすぐに気付いた。
◇後編「40歳年上の彼がセッティングした虐待母との会食が「地獄」となった日」では、帰国してから彼の勧めで母と直接話すことを決意した日のことをお伝えする。