泥棒に遭った私にかけた母の言葉は…

そんな彼からの配慮は嬉しく思いながらも、母になかなか連絡できないままに、付き合いが1年、また1年と続いていた矢先に起きたのが、自宅に泥棒が入る事件だった。怖くて慌てて電話した彼に、自宅に帰った時間に電話したことを窘められた。それまでにないような冷たい対応に自分の立場を思い知った。

 

実はこのタイミングで母とは再会せざるを得なくなった。
私が泥棒に遭い、警察に「自宅以外にどこか帰る場所はある?」と聞かれて唯一思いついたのは、当時実家の近くで一人暮らしをしている妹の家だった。私が妹に電話をすると、妹はこう言った。

「もちろんいいけど、お母さん来てるよ、大丈夫?」

母は、妹の家に入り浸っていたのだ。この時は自分でシティホテルに気軽に泊まったことなどなかったし、どこにでもネットカフェのある時代でもない。それになにより一人でいるのは恐怖だった。母がいても、妹の家しか行く場所はなかった。

妹が母に泥棒に遭ったことを説明したのだろう。家に着くなり、母にはこう言われた。

「どういうこと? 離婚してそんなとこに1人で住んでるからよ。アパレルみたいなちゃらちゃらした仕事をしているからよ」

この人は、娘が泥棒にあっても、「大丈夫?」の声も「無事でよかった」という声もかけられないのか。いや、思っていないからそういう言葉が出ないのだろう。以前犬の散歩中に車に引きずり込まれた時にも警察に「この子が悪いんです」と言っていたっけ……。

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妹の家で母と再会ことにより、こののち母からまたお金の催促をされるようになる。それは翌日妹宅で「保険金が下りるかもしれない」という内容の電話を横で聞いていたからだ。