盗まれたモノは保険でお金となったけれど
モノが盗まれたことを証明するために、彼の購入履歴なども必要となり、連絡すると、立ち会ってくれることになった。20代前半の私が言うより、60歳を超え、品格のある大人の彼が立ち会い、証明を裏付ける話しをしてくれたことはとても説得力もあった。また彼の会社も同じ保険会社を使っていることなどもあり、善処するとのことだった。警察の調べで管理会社の管理に不備も見つかり、これまでの物がほぼ全額保証対象と認められ、数百万円の保険金が下りることが数日で決まった。
家に泥棒が入って数週間で、数百万円が振り込まれた。彼は、駆けつけられなかったことを悪かったと口にしてくれたし、彼からもらったものにかかった保険金で好きなものを買いなさいと言ってくれた。さらに、こんな危ない所より安全なマンションに引っ越そうとすぐに探してくれた。
けれど、少し関係と気持ちが変わったのはお互いに薄々わかっていた。大切にしていた思い出の品をもう一度購入することもできるが、限定品や昔のイットバッグなどはもう手に入らない。盗品が質に流れて逮捕されるかどうかは、警察に任せるしかない。初めて就職してワクワクして購入したものたちは、自分の鎧のように高めてくれ、あれだけ大切にしていたのに、思い入れがなくなっていた。人からどう見られるかの単なる鎧だったのだ。
バッグをいくつもコレクションしていたけれど、体は一つで、同時にいくつもバッグは持てないし、実際、流行りだからともらったり、買ったりしても、気に入っていたものばかりを頻繁に使っていた。今回のように盗まれてしまうと一瞬で終わりだと思うと、本当に気に入ったものに絞って購入しようと決めた。