家に帰るととんでもないことが…

彼からはよく海外旅行に誘ってもらった。私の仕事が休めないことが理由で先延ばししていたが、思い切って有休をすべて使って行くと決心した。少し長めの海外旅行を計画してくれたとき、彼はこんなことも言った。

「仕事をそんなに頑張らなくてもいい、辞めてもいいよ」

「これだけ毎日過ごしているのだから、もう少し広い家を借りようか」とも。本当に未来を考えてくれているんだなと感じた。お互いの人生を重ねて、時間を共有し同じ思い出を作っていく。お付き合いをしていく先には、当然結婚があると信じた。指輪やお揃いの時計、たくさんの「お揃い」や「彼色」「彼を感じさせる」プレゼントをしてくれた。

しかし、付き合いが長くなってきた矢先、事件は起こった。

ある日、彼と食事したあと、自宅マンション下でいつものように別れた。しかし部屋に帰ると様子がおかしい。当時の暮らしていた家は、マンションの角部屋で、エレベーターのすぐ前の部屋。エレベーターを降りたら玄関が見える。玄関の扉に新聞受けになるドアポストがついていた。その挿入口の金具枠が雑にガムテープで止められ、ぶらんとしていた。一瞬、自分の部屋のはずはない、降りる階を間違えたかと思って周りを見渡した。部屋番号はあっている。朝、戸締りをして出掛けてから帰っていない。ドアポストから、点いているはずがない明かりが漏れていた。一気に血の気が引く。冷や汗が出て、自分でも信じられないくらい体が勝手にガクガク震えた。ドアノブに触れると、鍵が開いていた。

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自分の家だが、震えながらそっと開けてみた。様子がおかしいのは一目瞭然だった。下駄箱もすべて開けられ、玄関横のお風呂場の電気も点いていた。玄関からリビングに繋がる廊下には、明らかに靴で歩き回った跡があった。人気はない。静まり返った部屋。端の方で靴を脱いで上がった。リビングに入ると、朝開けて行ったはずのカーテンが全て閉められていた。その反対で、閉じられているはずのあらゆる引き出しや棚の扉が開いて、机にあったはずのノートPC、テレビもない。ジュエリーボックスが無造作にひっくり返っていた。

リビングの奥にはベッドルームがあり、ウォークインクローゼットがついていた。ベッドルームは明かりがついていないが、クローゼットのドアの隙間から明かりが漏れていた。

点いていないはずの電気が…Photo by iStock

クローゼットには、18歳で働き始めてこれまで大切にしてきたバックや時計、アクセサリーが、箱は箱でまとめてきれいに整理整頓して置いていた。しかし、引っ越ししたばかりかのように、何一つなかった。いくつかの箱やポーチ、ハンガーが床に落ちていて、かけていた服も引き出しも物色された形跡があった。声も出なかった。初めて就職してボーナスで購入したバッグも、元夫からのプレゼントも、彼から頂いたプレゼントの数々も、きれいさっぱりなくなっていた。ガクガク震えながら膝から崩れ落ち、震える手で携帯を探して彼に電話した。

◇20代前半尾女性が、帰宅したら家が荒らされていた……想像するだけで恐怖に固まるシチュエーションだ。普段は電話してはいけないと言われている彼へ思わず電話をしてしまった奈緒音さんはどうなるのだろうか。

詳しくは後編「「私は優先されてない」40歳年上男性との禁断の恋、虐待された私が思い知った現実」にてお伝えする。