親は人生を二度生きることができる
子供を持つことがリスクと感じられるようになってもうだいぶ時間が経ちますが、それは近年のさまざまな外的状況と相まってますます若い人の心に突き刺さっているように見えます。
子供を育てながら仕事をすることの大変さ、子育て世帯に対する世間の目の厳しさ、子育てにかかる経済的な負担の大きさが、ダイレクトに若い人に恐怖感を与えているようです。
さらに子育てを実際に行っている自分の視点でも、コンプラや配慮に満ちた今の教育方法と伝統的なしつけを整合させることの大変さや、学歴を得るために必要な勉強とこれから社会で必要とされる能力が合っていないことへの不安など、子育てに関するリスクを考えればきりがありません。
ただそういったリスクが大きい反面、子育てには良い面も当然たくさんあるわけで、今回はそちらに目を向けてみようと思います。
特に、あまり言及されたのを見たことがないけれど私がよく感じている、
「子供を持つ人は、親の視点で二度目の人生を生きられる」
というメリットについてです。
子育てはやり直しがきかないけれど
私は、子育ての本当のリスクは「正解がない」ことだと思います。
人は一度しか成長期がないので複数パターンを試しながら最適な教育を選ぶことができず、毎回ぶっつけ本番となります。
たくさんの習い事をさせて合うものを選ばせるといった方法もありますが、そういったやり方が子供に合うかどうかも事前には分からないのです。
また自分の子に何か問題が起きたとして、それがどんな間違いによって起きたのか推定はできますが特定はできません。
バグったシステムを一度元通りに戻してから修正するように、問題発生前に時計を戻すことはできないからです。
ところでみなさんは子供の頃、「なんであんなこと言っちゃったんだろう」「なんであんな選択肢を選んじゃったんだろう」って後悔した出来事が必ずあったかと思います。
そして自分の子供もそれとよく似た失敗をしてしまうことがあります。
注意やアドバイスをするときもありますがあまり強くは言えません。
なぜならそれは、血は争えないというか仕方がない部分が大きいからです。
でもその瞬間に親である自分は、かつての自分がなぜそこで失敗してしまったのか、ようやくその理由を完全に理解できるようになります。
「あっ、あのときと同じ間違いだ、周りにはこう見えてたんだ」って…
そうやって、親は二度目の失敗(子の失敗ですが)を見てはじめて自分の間違いを客観的に理解し、やるべきだった「正解」に辿り着くことができるようになります。
もちろんやり直しはできませんが、過去のもやが晴れてすっきりします。
自分が歩んだ道を振り返る効用
親は子供に育てられるという言葉がありますが、この二度目の失敗が親の成長につながっているのは間違いありません。
若い頃の過ちを振り返って改善していけるのが、親にとっての子育ての隠れた効用と言えるのではないでしょうか。
私は昔自分が住んでいた街、通っていた場所を久しぶりに訪れたときのあの感覚、見覚えがありよく知っているのに時間が経って自分が変化した分だけ違った景色に見えるというあの瞬間が好きですが、子供を見て感じることもそれに近い気がします。
最近たまたま若いときに勤めていたブラックな会社の前を通った際、毎日が嫌でたまらなかった暗い日々がフラッシュバックしてきました。
でも今の自分はその頃とは違い、あのつらい日々になぜ自分は巻き込まれてしまったのか、どうしたらうまく行けたかを理解しているので、平然とその前を通り過ぎることができました。
同じように、子の姿を見て自らの子供時代を思い出すことが、自分や子供の成長を感じたり、または自分や子供を正しい方向に向かわせたいと感じる原動力になります。
そして子を育てることを通じて、自分の成長の答え合わせをすることができ、それにより過去を過去として完結させ、その後は親として「二度目」の人生を楽しむことができます。
そんな子育ては、もし出来るなら一度はやってみたい興味深い体験だと思いませんか?
コメント