何度となくプレゼントを理由にお店に…
それから数週間経って社長さんが訪れた。今日もプレゼントでお探しですか? と声を掛けると、買い物ではなく、初対面の時に話していた、九州出張の名物土産をわざわざ届けに来てくれたという。びっくりして御礼を伝えると、仕事が何時に終わるのかを聞き、食事に誘われた。「これは少し危ない」と感じた。嘘もないし、良い人のようには見えたけれど、お食事をご一緒するのもおかしい。私はやんわり仕事が遅くなるのでと言い訳してお断りした。彼はしつこく誘うこともなく、ではまた今度と言って帰って行った。
それから、何度となく社員や娘へのプレゼントを理由に訪れて、購入してくれた。来るたびにいろんな話をしてくれて、当然私の売上成績は上がり、顧客様のようになった。
仕事の終わりにお茶でもしないか
顧客様には、スタッフから特別なインビテーションのご連絡をすることもある。彼の携帯に御礼とセールのご連絡をした。彼は仕事終わりにお茶でもしないかと誘ってきた。これだけお世話になっているし、話していても楽しい方だ。お茶くらいならと、いつもお菓子などを頂いていたので菓子折りを持ってお会いすることにした。職場のすぐ近くにあるホテルのラウンジに入る。私はここで初めてアフタヌーンティーのスイーツの盛り合わせを見た。彼は、糖尿の気があるけど、あれを食べてみようかと笑ってオーダーしてくれた。
「たくさんお菓子があるので、ゆっくり食べながら話しましょう。あなたのことを教えてください」
彼は言った。私は最初に「おじいちゃん」と言ったことを謝り、それからこれまでの人生や家庭環境などを話した。小さい時に妹が病弱でおじいちゃんに預けられていたこと。母がヒステリックで厳しく叩かれて育ったので、不安で寂しく、自分がダメな人間だといつも自信がないこと。小さい時のおじいちゃんの膝の上だけは安心できる場所だった。結婚もしたけどすぐにダメになったこと。彼とは子供ができず同居しながら浮気されていた等、正直に丸ごと話した。
最初に店で話した時、離婚してから久しぶりに男性と話したのだが、すごく楽しく、話しているうちにおじいちゃんと話しているような安心感があったので、そう言ってしまったと伝えた。彼はニコニコ、「大変だったね」と受け止めて全く動じない。
安心できる方だな、と感じた。
◇おじいちゃんくらい年が離れているけれど、見た目はとても若々しく、ゆっくりと話を聞いてくれる紳士。しかも顧客として支えてくれる頼れる男性。奈緒音さんが心を開いていくのも自然な流れだった。しかしそこからどのように関係が変わっていくのか。後編「既婚者だけど…母の虐待に苦しんだ私が、40歳以上年上の社長に本気で惹かれるまで」でお伝えしていく。