女性へのプレゼントを購入しにスーツ姿の紳士が
朝出勤するとランチも建物から出ないため、仕事が終わって帰る頃には夜。一日中立ち仕事で、休みの日は疲れ切って家から出ない。天気や季節の変化も感じないまま、ただ仕事と家の往復で時間は過ぎた。
そんな日が続いている中、オシャレなスーツ姿の紳士が訪れた。かなり年上の会社経営者で既婚者だという。奥様へのプレゼントですかと聞くと、社員の女性の誕生日と退職祝いを兼ねてプレゼントを渡したいと言ったが、愛人か夜職の彼女にプレゼントだろうなと思った。そういうお客様も少なくなかったのだ。とてもよく話す方で、話の流れから年齢を伺うと、私より40歳くらい上だった。お世辞ではなくずいぶん若く見えた。
思わず「信じられない!全く見えません、私おじいちゃん子だったんですけど……」と言ってしまった。彼は大笑いし、嫌な顔をせずに近々海外旅行へ行く話や、明日から出張で行く九州の特徴や食べ物の話をしてくれた。どの場所も、私が一度もいったことがない場所だったからとても楽しく話しながらも、接客した。そして彼はいくつか提案をしたコーディネートを選び、購入してくれた。
プレゼント包装をし、もしサイズなど合わなかったら交換できるとお伝えして、お会計を済ませた。送り出すまでに、結構長い時間接客した気がする。その後ランチ休憩に出て戻ると、他のスタッフから「さっき接客したスーツの方、戻って来たよ」と紙袋を渡された。紙袋にはお菓子と御礼が一言書かれたお名刺が入っていた。女性にプレゼントを購入しにきた人だ。誰にでもそうなのだろうと、一お客様として気にも留めなかった。