勤務中に腹痛が…
診察を受けないまま、引っ越してから2週間ほど経った頃、勤務中に腹痛に襲われた。腹膜炎の時ほどではなかった。すぐに生ぬるい感じが太ももに伝ったので、出血したとわかった。慌ててトイレに駆け込み、早退させてもらいその足で産婦人科に行った。あの産婦人科の内診台に座ることが本当に嫌だった。すごく緊張して何もされる前から涙が勝手にでた。
流産した。先生が器具を入れ診察すると、正確な週数はわからなかったけれど初期だと言われ、既に完全に流れているため特に処置の必要もないと言った。どうしていいかわからずお腹を叩いてしまいましたと伝えたら、「それが直接的な原因とも言えない。命は授かりものだから。授かったからと言ってちゃんとみんなが健康に生まれる、育つとも言えない。今回は残念だったけれど、まだ若いから自分を責めないように、必要なら精神的なサポートも受けられますよ」と言われた。
この子は、自分のお母さんが生まれてくることを望んでいないことを察したのだろうか。今生まれて来ても幸せになれないと伝わって、お腹にいるのを止めたのかもしれない。子は親を選べないというが、この子は、生まれる前からダメなお母さんに気を遣ったのかもしれない。このお母さんのところではないと選んだのかもしれない。
ニュースで少しずつ虐待の報道が出だしていた。全員とは言わないが、幼く母になった親の子は、その子供もまた未成年で子を生んでいることが多く見られた。まだ準備のできていない状態で望まぬ親になった場合、育児放棄や虐待のケースも報じられた。その流れに、抗いたかった。自分には、まだ産む資格も母親になる器もなかったと理解し、これでよかったのだと。
義母から驚きの言葉が…
この時の流産と先生に言われたことが、今でもずっと忘れられない。その後の人生にも影響していくとは、この時には想像もしなかった。漠然と、いつかまた信頼できるパートナーと、最善のタイミングで授かれたらと願った。流産をしっかり自分で向き合い乗り越えるためにも、産婦人科の助けは求めずに帰宅した。たくさん泣いて謝った。頑張ると自分に何度も言い聞かせた。今回生んであげられなかった子の為にも、もしかしたらいつか授かるかもしれない子の為にも。
本当に一人になった。人生を改めてスタートする。頼る人もいない一人だから、さらに仕事を頑張って生きていかなくてはと覚悟した。
数ヵ月後、お義母さんから連絡があった。お義父さんのお姉さんが亡くなったと。親戚がお姉さんだけだったので、良くしてもらっていたから参列した方がいいかと聞いたが、電話口でお義母さんに謝られた。「なおちゃん、うちの息子が浮気したから離婚したんやね。ほんまにごめんやで。何にも知らんと」彼が浮気相手を妊娠させて、再婚することになったそうだ。妊娠何ヵ月か計算すればおのずとわかること。お腹の大きな奥さんを見るのも、彼の顔を見るのも吐きそうだった。参列は遠慮し、御香典だけ郵送する、「お元気で」と言って電話を切った。
【次回は3月10日(金)公開予定です】
#1-1顔が歪むほど殴られた…40代女性が抱え続ける「母のコントロールの悪夢」の告白
#1-2骨折した足にテーピングして…娘をバレーボール選手にしたかった母「驚愕の行動
#2-1母はなぜ私を殴り続けたのか―40代女性が考える「高校に行かず嫁に出た母の孤独
#2-210歳の私が「祖母の標的」だった母をかばったら…止まらぬ母の暴力
#3-1些細なことで始まった小学校でのいじめ…母に「甘えるな」と言われ絶望した日のこと
#3-2斜視の手術で目に包帯…母に殴られ続けていた私が唯一感じた「母の優しさ」
#4-1料理が気に入らないと箸もつけない父への不満が…私を殴り続けた母「父との関係」
#4-2私のことは殴っても父に従順だった母が、「家事をやらない人」に急変した理由
#5-1家事をしなくなった母が祖母と叔母と演じた「修羅場」、巻き込まれる子どもたち
#5-2いじめをかばってくれた友人との突然の別れ…そのときの母の驚愕の言動
#6-1殴る蹴るに、タバコまで…母が私だけに暴力を振るうようになった経緯と「母の夢」
#6-2母が薦めた看護学校は回避しても…高校の推薦入試合格の日に感じた「絶望」
#7-1高校合格の日に母からボコボコに…入学前からの悪夢と兄との関係の大きな「変化」
#7-2瓶詰め入りの買い物袋で顔を…高1の私の顔が歪むほど母に殴られた日の話
#8-1高校トップの成績・進学希望の兄に「学歴はいらん…」妹の私が見た「父の呪縛」#8-2学歴はいらない」男らしさを強要する父、進学を諦めた兄…子どもの人生とは
#9-1大学進学を阻んだ「父の呪縛」…兄が「親ガチャ」から脱出できた理由
#9-2犬の散歩中に車に引きずり込まれ…性暴力に遭った私に母が口にした驚きの言葉
#10-1目標金額200万円…母の暴力と過干渉に苦しむ女子高生が計画した「自立の道」
#10-2親ガチャの悪夢から抜ける…母に虐待された女子高生が「自立計画」を実行に移すまで
#11-1 親ガチャから逃れるために高3で一人暮らし…それでも続く「母の呪縛」
#11-2「お金都合してくれへん?」高卒で自立した私に忍びよる母の「せびり」
#12-1「母から逃げたい」自立した19歳の私が再び実家に連絡せざるを得なかった理由
#12-2 腹痛とともに感じた「母に助けられる恐怖」…19歳の私が結婚を決意するまで
#13-1 性暴力も「あんたが悪い」…母の虐待に苦しんだ私が20歳で結婚を決めた理由
#13-2 婚約者の両親が「ご実家に挨拶したい」私を虐待してきた母による成人式での悪夢
#14-1 「母の呪縛から逃れたい」虐待を経て20歳で結婚を決めた私が見た「暗雲」
#14-2 母の虐待から逃れ、20歳で結婚…突然の義両親との同居で始まった「別の苦悩」
#15-1 母の虐待に苦しみ続けた私が、20歳の新婚で夫の両親と同居して直面したこと
#15-2 新婚で義両親と同居…母の虐待に苦しんだ私が離婚を決意した「決定的な出来事」
#16-1 20歳で結婚、2年で離婚を選んだ私に虐待の母が告げた「信じられないひと言」
#16-2 母の呪縛に怯え18歳で自立、20歳で結婚、2年で離婚…私の中に芽生えていたもの