「なんで離婚するのか」

嫌だなという感情は相手にも伝わるもので、浮気を知った頃から彼と言い合いをするようになった。私はしばらく浮気していることをわかっているとは言わずにいた。しかしそれから数週間経ったころ、私が夫に対してちょっと意見を言ったことがきっかけで大きな喧嘩になった。そして互いに離婚しようという言葉が出た。

もう後戻りはできなかった。私は夫の浮気について言うと、彼は知っていたのかと驚いた様子だった。気づいていないと思っていたことに、私の方が驚いた。彼は謝ることもなく、「それならどうせ許してくれへんやろうし仕方ないよな」と言った。彼は浮気相手と別れる気はなさそうだった。こんな人に未練も全くなかった。何を悩んでいたのかと思った。

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ただ、良くしてくれた義両親が悲しむだろうから、夫の浮気が原因だという真実を伝えないようにしようと話し合って、特に慰謝料等を求めずに離婚することにした。夫から報告を受けた義両親に何度も何度も「なんで?」と聞かれた。義両親には本当に申し訳なく感じた。

 

私をかばってくれた義両親

お義父さんは、「なおちゃんのお父さんに連絡して、謝りにいかないといけない」と言ってくれた。私からまず親に話しますと伝え、ただ、実家には帰れないので、転居先を探すまで出ていけない、だから気まずい思いをさせてしまうのではないかと謝った。

もしここに母がいたら、私のことを責め立てただろう。しかしお義母さんはこう言ったのだ。
「そんなん、いつまでもいてもいいのよ。同居が嫌やった?」
そして夫にこう言った。
「あんたが悪いのよ。幸せにすると言って大事なお嬢さんを頂いたのに。あんたも最後まで、次の生活が困らないように手伝わないとあかんよ」
さらに私に優しい視線を向けて「できることある?なんか手伝おうか?」とまで……。

本心でなかったとしても、嘘でも、私を庇ってくれたことに、良いお家に嫁げていたことを改めて感じて泣いた

お義父さんは「謝りにいかないといけない」とおっしゃったけれど、義両親を実家に連れて行きたくなかったし、呼びたくもなかった。そもそも母は私が一人暮らしを始めた時「あなたは勝手に出て行ったんだから、二度と戻ってくるな」と言っていたのだ。だから、私の口から伝えるから、両親にはなにも言わなくても大丈夫ですと繰り返した。