親になっても子どもを愛せるのか

そうこうしていると、「近所の人にお孫さんが生まれたのよ。会って来たよ。かわいかったよ。なおちゃんはいつかな?」と義母から言われるようになった。彼の会社の先輩にも赤ちゃんが生まれて、ご出産お祝いなどの用意をするために買い物に出かけると、お店の方からも「ご懐妊ですか?」と聞かれた。お祝いですと選びながら、彼が子供好きなこと、望んでいる事も分かった。もちろん、何気ない会話であり、お義母さんにも店員さんにも全く悪気はないだろう。それでも、プレッシャーに感じた。そして、漠然と自分が母親になることに対して恐怖が沸いた。

ベビーカーを見ても、むしろ不安が…Photo by iStock
 

私を殴っていた母は、早くに母親を失くして、幼い弟妹に対して母親代わりをつとめた。自分も甘えたい中学生のときに甘えられず、若くしてお見合い結婚し幼い子供を持った。父に対しても頼りたいときに頼れなかったのだろう。泣き喚く子供たちが3人もいて、愛し方がわからず、今なら理解される「育児ノイローゼ」のようになっていたのかもしれない。兄のことは溺愛していたが、そのイライラの矛先が私にだけ向いてしまった。

当時の私は、母親同様に愛されてこず、叩かれて育ったので、不安でいっぱいだった。私も子供に同じようにしてしまうのではないか? 私が愛されなかったのに、子供をうまく愛することができるのだろうか? 今の時点でこんなに気を遣っているのに、義両親に頼れるのだろうか?……私自身が親になるための心の準備ができていなかった。

結婚してから1年以上経っていた。いつ授かったとしても当然喜ばしい事なのだから、妊娠したら中絶という選択肢は一切ない。そうなると、自分が母になること、子供の愛し方がわからないことへの恐怖から、赤ちゃんができるようなことをすることそのものも怖くなった。