「ネガティブすぎ」と笑う夫は「優しい」のか

全てが母親のせいとは言わないけれど、こんな考え方になっていたのは、幼少期に愛されなかったことが大きく関わっているのだろう。当時はわからず、ただただ悩んだ。どれだけ褒められたくて頑張っても、褒めてもらえず、暴言を吐かれ続けた日々。母が望むバレーボールの世界で平手打ちされながらやったトレーニング。彼氏と歩いているのを見られたあと、瓶の入ったビニール袋で顔を殴られたこと。自立してからも勤務先に来てお金をせびられたこと。すべてが、私の心の中に澱のように溜まり、「どうせ私なんて」という恐怖で覆われていた。

 

その歳の頃に経験することができないまま、早く大人にならなくてはいけなかったこと。生きていくことが辛いと感じていたことさえ言えずに、逃げ場が学校にも家にもなかったこと。一人で死にたいと手首を切ったこと。義母の食事を中断させて迎えに来させてしまった。その罪悪感から、一気に色々なことを思い出し、思いが溢れてしまったのだ。

お義母さんは、泣きながら謝る私に「仕事で嫌なことがあったん?」と肩をポンポンとしてくれた。お義父さんも、「嫌なら辞めたらええよ」と言ってくれた。私の母なら、有無を言わさず私を怒っただろう。仕事を辞めたらいいだなんて選択肢はなく、「あんたが悪い」と言っただろう。そんな時彼がちょうど帰ってきた。泣いている私にびっくりして「どうしたん! おい、おかん!」とお義母さんに怒った。

私が否定するより先に、お義父さんと彼が誤解で言い合いになった。家庭内が、少しぎくしゃくした空気になった。仲の良い家庭に私が嫁いだばっかりに、こんな空気にしてしまう……と自分をより責めた。「被害妄想が強すぎとか、ネガティブすぎ」と笑って言う彼。その言葉をとても冷たいものだと感じる自分がいた。私がなぜ苦しいかに向き合わず、きちんと知る前に母親を怒鳴るその姿勢に、違和感を拭い去ることができなかった。

自分がいるから仲良しの親子がギクシャクしてしまう…そんな風にすら感じてしまった Photo by iStock

◇想像しなかった同居。義両親がいい人であればこそ、安心できずにいる自分を責めてしまう奈緒音さん。後編「新婚で義両親と同居…母の虐待に苦しんだ私が離婚を決意した「決定的な出来事」」では夫への違和感を決定づける出来事についてお伝えする。