「俺がこうしてあげる」が叶わないと不機嫌になる夫
20歳で結婚した時のことは、私にとってほろ苦い記憶だ。今ならば、自分が不安だったのだという心の状態が分かる。そうであれば、誰かに期待したり、相手に依存し過ぎずに、好き嫌いや、何が怖くて、何に怯えているかを夫に具体的に言えたかもしれない。しかし、当時の私には自分の心の状態を知ることも、うまく言葉で伝える術も分からなかった。「もし伝えて嫌われたら?」の怖さの方が勝ってしまうのだ。結婚する相手なら、そこも乗り越えられるほどの信頼を作っていかなければいけなかったのに、「結婚する」という事実だけですべてカバーできると思っていた。戸籍上のつながりがあっても、イコール愛情でつながることにはならないことは、幼いころから身をもって知っていたはずなのに。
結婚式を終えた日、着替えを済ませ、私たちは結婚式場に近いホテルで過ごすことにした。私は、彼や義両親に謝りながら、母の顔色伺う一日に疲れ果てていた。朝早くからの式だったこともあり、ぐったり横になった途端、眠ってしまった。ハッと起きると彼は「ここで夕食を食べようと思っていたのに……」とムッとして言う。色々計画を考えてくれたことは嬉しいが、私は食事に出る体力が残っていなかった。それでも、せっかく内緒で考えてくれていた計画を台無しにしてしまったことを謝った。悪いのは寝てしまった私なのだと思った。結婚式を終えたばかりで険悪なムードになってしまったので、私は何とか機嫌を取り戻してほしくて、彼の提案は翌日実行しようとなった。私たちはこういう関係を続けていくのだなと漠然と感じる1日となった。
家に戻ると義両親が出迎えてくれた。翌日からまた、義両親も一つ屋根の下、一世帯住宅での同居生活が始まる。