実家に電話をすると…

父に、婚約者とそのご両親を紹介したいということを話し、成人式の日に彼が予約してくれたホテルに、きちんとした格好で来てくれないかと言った。電話の向こうで母が何かを言っているのはわかっていたが、これまで母が言ってきた通り、「早く結婚しなさい」を叶えるのだから、不満はないはずだった。電話を替わった母は、矢継ぎ早に彼の年齢や仕事、給料、家柄、彼や親はどんな人間かを聞いてきた。私は、答えるのがばからしいと感じた。そんなことを聞いて何になるのか? 母に彼をジャッジする権利もなければ、人を判断や批判できるような立場なのか? と腹が立った。

電話口の向こうに母が…Photo by iStock
 

それまで溜まっていたものもあったし、私の味方でいてくれる彼を悪く言われたような気がした苛立ちから、彼や彼のお母さんがこれまで掛けてくれた優しい言葉やしてくれたことについて説明をして、思わずこう言ってしまった。

「自分は娘の大切な成人式の振り袖一つも気にかけてくれなかったくせに」と。

母は、「当たり前じゃない! あんたが家を出たんだから。あちらがうちの娘をもらうんだから、それくらいして当然でしょ」と言った。信じられなかった。あれだけ父の姑、小姑にいじめられていた母が、「彼のご両親に祝ってもらうのが当然だ」と語ることが。本当ならば、せっかくご挨拶に来て下さるというお申し出をお断りして、家にお招きすることもできないことを恥じ、娘をお願いしますと頭を下げるくらいの気持ちでいてほしかった。しかし、母の言う「当然」や「常識」「考え方」が、私とはまったく違うことが改めてわかった。どこまでいってもそれは理解し合えないと思うと、虚しさもあった。とにかく、母には親としての役割も、これ以上何かを頼むことや期待することをやめて、できるだけ関わらないことで自分と彼との生活を守るしかない。