「成人式はどうするの?」
彼に正直に話すしかないなと思っていると、彼から「成人式はどうするの?」と聞かれた。ハッとした。それはそうだ。多くの20歳の人の親は、振袖がどうとか相談しながら親が準備してお金を出してくれるのだろう。母も、小さい頃に母親を亡くし、中卒で働いて家庭を支えていた。自分も成人式を祝ってもらえなかったから、娘の成人を祝おうなどという考えは、まったくなかったのかもしれない。でも彼のご両親にとってはごく自然な事のようで、20歳になる若いお嬢さんをお嫁さんに迎えるのだから、お祝いしたいと言ってくれた。その気持ちを喜ぶどころか、どうしてなの?と正直怖くも感じた。そんなふうに思ってもらったことがないから不思議で、祝ってもらっていいのだろうかと不安に思ったのだ。
彼が、友達と約束がないのなら、送り迎えもすると言ってくれた。私は彼に状況を話し、とてもじゃないけど実家にご招待できないと伝えると、「それなら、せっかく振袖を着ているし、成人式の日に一緒にどこかでお昼ご飯でも食べて、両家のご挨拶にしようか? 振り袖姿見たいし」と言ってくれた。こんなにいい人がいるのだろうか。良いご両親の元に生まれたからなのか。この人と結婚しないと私は一生幸せになれないだろうと感じ、私も彼にそう思ってもらえるようすべてを捧げなくてはいけないとも思った。
今ほどネットもスマホもない時代。急いで仕事の合間にカメラ店にある案内チラシや、貸し衣装屋さんに電話をし、振袖の手配をした。母娘で選んでいる姿を見たり、相談している会話を聞くと、寂しさと虚しさもあった。