彼と一緒にいたら、きっと幸せになるはず

時期を同じくして、私の愛犬が車にひかれる事故があった。車の人は車を降りて来て、そんなに怪我がひどくないことを確認すると、ちょっと笑って「ごめんねえ、みえへんかったわ」と言った。犬はおでこを擦りむいた程度だったが、私は号泣してしまった。そうしたら彼が車の人に「何笑ってんねん! ふざけんな!」と怒ってくれたのだ。犬はすぐに動物病院に連れて行って、無事だったが、こうして「私が悪い」と言わずに怒ってくれることに、強い信頼を抱いた。母だったらきっと「娘が悪いんです」と言ったことだろう。

 

彼と一緒にいたら、きっと幸せになるはず。
「これだけしてもらって結婚しないのは悪いのではないか」「他には私に優しくしてくれる人はいないのではないか」とも思った。

その年のクリスマスの少し前のことだ。「結婚しない?」とプロポーズされた。
一緒にずっといるのは苦痛だな、気を遣うな、と思った気持ちは、「いや、こんなに優しくしてくれているのに、結婚しなかったら申し訳ない」という思いでふたをした。「きっと幸せになれるはず」と繰り返し思った。

20歳の冬、私は自分の中にあった重たいなにかを見ないようにし、逃げるように縋るように、彼との結婚を決めた。

若林さんは「結婚」は「一緒に暮らしたいから」するものという考えはなかった。ただ、逃げるように彼との結婚を決めた Photo by iStock

◇若林さんが結婚した理由は「一緒に暮らしたいから」でも「家族が欲しいから」でも「自分の年齢を考えて」でもない。もちろん、多くの人が持つ理由で結婚しなければならないということは一切ないが、そもそも「結婚したい」と思ったのだろうか。
そして、結婚とは「家族」も絡んでくる。若林さんが義理の両親・婚約者と自分の両親を引き合わせることになったときの話は、後編「婚約者の両親が「ご実家に挨拶したい」私を虐待してきた母による成人式での悪夢」にて詳しくお伝えする。