母と共に病院へ

私は痛みと冷や汗で気が遠のきそうになっていた。どれくらい経っただろうか。痛みで1時間以上に感じていたが、実際には20分ほどで母が一人やって来た。とにかくお腹が痛いと言うと、さすがに普通ではないと気付いたのか「あかんわ、なんでここまでほっといたのよ」と怒りながらもテキパキと動いた。自分が勤める病院のつてを使い、近所で行ける夜間救急の病院に電話し、車で行くよと言った。痛みでうずくまっている私に、「ほら、行くよ。しっかりしなさい」と腕を引っ張り立たせた。部屋着の私にコートを渡し、財布と保健証の場所を訪ねる。近くにあったバックに財布を確認して持ってきた。エレベーターの下る振動にも痛みがズキンと響く。それでもなんとか車に乗り込み、母の運転で10分もかからず病院へ着いた。

母が看護師のパートをしているからの迅速な対応だった Photo by iStock
 

駐車場から夜間入り口に差し掛かると、車いすを持って看護師さんが出迎えてくれた。看護師さんから「あらら、可哀想に、大変やったね」と優しく言われて、おもわずわっと泣いた。母は、後ろから「なに泣いてんの!しっかりしなさい」と言った。そのまま処置室のようなところへ連れて行かれ、痛いところを伝えると、触診。すぐに先生は「盲腸かな、レントゲン」と言った。流れ作業のようにスムーズに対応してもらえたのは、適切に症状を伝えた母のおかげだったと思う。今も感謝している。

ただ、この時は、痛みに耐えすぎて意識がもうろうとしていた。ああ、母に救われたんだなと思った直後、意識を失った。