悩んだ末に父に電話を…

早番は9時から18時、遅番が12時から20時。しかし残業がないことはほとんどないので、18時に終わるといっても終わらない。遅番で帰りは21時くらいになることもザラだった。

痛みを感じ、痛み止めを飲んでごまかしてから3日目。その時は早番遅番遅番、というサイクルだった。冷や汗をかきながら仕事を終え、何とか家に帰り横になった。座薬は一度にたくさん入れられないが、入れて1時間しても再度入れないと辛いくらいだった。今冷静に考えれば、痛み止めの飲み過ぎはとても危険で、なにより病院に行くべきだったとわかる。しかし当時の私は「休めない」「誰にも頼れない」という思いに支配されていたのだ。まるで剣山をお腹に強く押し当てられているような痛みだった。吐き気もするし、どんどん痛みが強くなり、冷や汗が止まらない。

尋常なことではないことはわかった Photo by iStock
 

彼に連絡したら、優しいからきっと駆けつけようとしてくれるだろう。しかしすでに仕事終わりの遅い時間に連絡するのは申し訳ないし、「この程度のこと」で頼るのはどうかと遠慮した。ずっと一人ぼっちで頑張ると決めて進んできたから、人に頼る、甘える術が分からなかったのだ。

私は、悲しいながらこれまで「痛み」に慣れてはいた。骨折しながらバレーボールの試合に出されたこともあったし、母にイチゴジャムの瓶で顔を殴られて顔が歪んだこともあった。しかし、これまでの痛みと比較しても、腹痛は尋常ではなかった。殴られても蹴られてないのに、なんでこんなに痛いのか。悩みに悩んだ挙句、23時ごろ父に連絡した。

まだガラケーの時代。LINEもない。父に電話をかけるまでに悩みに悩んだが…Photo by iStock

◇母と絶縁したいと思いながら、実家に連絡するしかなくなった奈緒音さん。「実家に甘えることが怖い」という現実が、痛みが本当にひどくなるまで相談させずにいた。やむなく父に連絡をとった奈緒音さんは、母と再会してしまうのか……詳しくは後編「ようやく逃げた毒母に「助けられた罪悪感」…19歳の私が結婚を決意するまで」にてお伝えする。