「憧れの先輩」から離れる辞令が

以前も書いた通り、私の職場には憧れの先輩がいた。オシャレで、きれいで、自分で稼ぎ、自分の人生を生きていた。そして先輩に教わって、私もお金を貯めてブランドのバッグを買った。自分がこれだけ頑張ったんだという証拠のように思った。先輩のようになりたいと、仕事も頑張り、自分の味方になってくれる好きな人もでき、自分の人生と自由を生きているようで、本当に充実し満足していた。

年が明けて、私は春に新しくオープンする店舗に、オープニングスタッフとして異動を命じられた。実家から逆方向で離れる。会社からすれば、頑張っている事への評価だと言われたし、実家から離れることも希望通りではあったが、目標である憧れの先輩から離れることに、私はとても落胆と不安を覚えた。もっと先輩の傍で学びたかったし、ずっと一緒に働きたかった。

入社した店舗ではよい販売成績を残していた。だからこその辞令だとはわかったが、先輩から離れることがショックだった Photo by iStock
 

しかし会社員なので当然辞令には従うしかない。2ヵ月後に異動と考えるだけで憂鬱になり、胃がキリキリ痛むようになりながら勤務していた。気持ちの問題かと思っていたが、胃というより腹痛に変わっていった。学生時代は拒食もあったし、お金を貯めるために極端に食費を削っていた時期もあったので、生理不順と、生理痛が重いのは常だった。そのせいかもと言い聞かせては、痛み止めを飲みながら出勤した。

しかし普段ならすぐに引く痛みも、翌日になっても変わらず、痛みの波が押し寄せて来ては冷や汗をかいた。新店舗の会議や準備のことで本社に行く日もあり、プレッシャーかなと言い聞かせながらごまかして働いた。
当時の店は休んでしまうと評価が下がる。実際、どんな先輩も、生理痛がひどくても痛み止めを飲んで店に立っていた。「とにかく休むことはできない」と思っていた。