テレビ用語の基礎知識
テレビマンは「またぎ」が上手くないとダメだと言われます。「またぎ」と言っても猟師さんのことではありません。CMの間に他のチャンネルに変えられないようにするテクニックのことを「CMまたぎ」というのです。「どうやってCMをまたぐか」というのはNHKを除けば誰しもが悩みます。
かつてはエゲツない方法でまたぐのがディレクターの腕みたいに思われていました。「CMのあと驚きの展開が」と言いつつちっとも驚かなかったり、スポーツ中継で「ついに日本の〇〇選手登場!」と言いながらそのあと30分たっても登場しなかったり、見世物小屋の看板並みにみんなで煽りまくったりした結果、ずいぶん視聴者の信頼をなくしました。
例えば「突然スタジオでプロポーズが始まった」とか、本当に驚きの展開なら「CMのあと驚きの展開が」とは言わずに「CMのあと突然のプロポーズ!」って言うでしょうから、もう誰も「驚きの展開が」という決まり文句は信じないでしょう。「CMのあと誰々登場」と言われても、「終了間際の時間にこのテロップが出るということは、来週のゲストが誰々さんなんだな」と察知するくらい、視聴者に手の内は見透かされてます。
エグいまたぎは嫌われるようになりました。あと、CM前と同じことをCM後に繰り返すのも嫌われるので、あまりしなくなりましたね。最近逆に気になるのは何の前触れもなく突然CMにいくまたぎ方です。
この間とある情報番組で、おしどり夫婦のおばあちゃんが99歳のおじいちゃんに看取られて息を引き取った感動シーンに直結して「飯盛りなんちゃら」という全自動飯盛りマシンのCMが流れたのは結構、衝撃的でしたし、ネットもざわついてました。
もうひとつある「またぎ」が「○時またぎ」で、他局で番組が始まる時間帯にCMを入れず、チャンネルを変えられないようにします。例えば19時から21時までの2時間番組なら、20時00分前後にはCMを入れずに、20時少し前から面白い内容をできるだけ引っ張ります。僕がいた頃の朝のワイドショーは、NHKの朝ドラ(当時の放送時間は8時15分~8時半)に変えられないように、8時10分くらいから8時半まではどの局も絶対にCMを入れませんでした。
あと深夜番組なんかでは、時間が遅くなるほど寝る人が増えるので、前半はCMを入れずに後半でCMを連打します。テレビマンは意外と細かいところで視聴率のためにせせこましい工夫をしているのです。効果がどのくらいあるのかは、怪しい気もしますけどね。
■鎮目博道(しずめ・ひろみち)
テレビプロデューサー。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。1992年テレビ朝日入社。社会部記者や、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。