在留資格を失ったトルコ国籍の女児を小学校から除籍 さいたま市が復学手続きへ
埼玉県さいたま市に住むトルコ国籍の女児(11)が、在留資格を失い、通学していた市立小学校から除籍処分になっていたことが24日までに分かった。さいたま市では在留資格がない子どもでも、パスポートや居住している場所が確認できる書類があれば就学できる仕組みで、在日外国人の支援者は「このようなケースは初めて」と憤慨する。
支援団体「在日クルド人と共に」(蕨市)によると、女児は2022年に父母と入国した。難民申請し特定活動の在留資格を得てさいたま市内の小学校に編入。昨年7月、資格を取り消され、8月に住民票も抹消されたため、さいたま市教育委員会は9月6日付で女児を学校から除籍したという。
日本が批准している「子どもの権利条約」は、希望すれば国籍に関係なく教育を受けられると定める。文部科学省も「住民票がない場合も、居住実態がある場合は公立学校に入学できる」と定め、全国の自治体に対し「柔軟な対応を行う」よう周知している。
23日、市教委に女児の復学を求めた同団体の温井立央代表(52)に対し、市側は除籍の事実を認めたという。温井さんは「(女児は)『学校が好きだった』と泣きそうだった」と振り返り、「保障されている権利を遮る理由はない。外国籍の子供に対する教育への考え方に疑問を抱かざるを得ない」と、市教委の対応を非難。同行したさいたま市議は「在留資格がなく、公的な書類が全くない立場の人に対応した前例がないのだろう」と指摘した。
一方、女児と関わった支援者は「現場の人道的判断で受け入れることは可能なはず。除籍は『正規の手続きをしてない人は受け入れない』というペナルティーでは」と差別的な意図を疑う。女児は「明るく前向きで『学校に行きたい』と一生懸命だった」とし、「学校が在留資格の状況を把握し、仮放免の出頭について声かけするなどの配慮ができていれば、今も学校に行けていたはずだ」と強調した。
■速やかに復学手続きへ さいたま市教委、「申し訳ない」
さいたま市教育委員会は24日、昨年9月に小学6年の女児を除籍したことを認め「速やかに就学できるよう手続きを進めたい」と復学を認める方針を示した。その上で「われわれの認識不足で学校に通えない期間を発生させてしまい、大変申し訳ない」と謝罪した。
市教委学事課によると、女児は小学5年の6月から通いその後、在留資格を失い除籍となったが、市のホームページには住民票登録ができなくても、パスポートと住んでいる場所が分かるものを持ってくれば学校に通えると記してある。市教委は2点以外に短期ビザや難民申請書などを求め、提出しなかったことで除籍にし「住民票の代わりがパスポートだけでは足りないと考えてしまった」と述べた。
また、文部科学省の通知にある「一定の信頼が得られると判断できる書類」を拡大解釈したとした。除籍を検討する際に文科省に相談しておらず、「今となっては問い合わせるべきだった」と反省した。