母が「男女交際」に過剰反応する理由

中でも、顔の骨が歪むほど殴られなくてはいけなかったきっかけは、「恋愛」「男女交際」だった。

これは、母にとって全く経験することができなかったからだと私は強く思う。
以前にも書いたが、父と母は親が決めたお見合い結婚だ。当時は珍しいことではなかっただろうが、結婚までに会ったのは両親同席のお見合い含めて3回。お見合いのあとすぐに結婚することが決まり、そのあとふたりきりでデートしたのはたった2回。一度は映画に行き、もう一回は喫茶店でお茶をしただけだったと言う。

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当時の母の写真を見たことがあるが、ひいき目に見てもきれいで、アパレルの工場に勤めていたため、服や髪のセンスが良かった。だからデートのときは普段以上に母は目いっぱいのおしゃれをして出かけた。そんな姿に父が気付くわけでも、気の利いた言葉を掛けるわけでもなく、会話も弾まなかったという。実際私は母から父への文句を聞いたことがあった。頑張ってきれいにしてもまったく反応してくれず、会話も弾まない男性とのデート。それだけでも辛いことなのに、「この人と結婚する」ということは決まっていたのだ。

さらに父は、高校生のときお付き合いしている女性がいたのだという。それについて、母がずっとよく思っていないことはわかっていた。母が「学生のときの付き合い」に対して過度に反応していたのは、父が高校生の時に彼女がいたことも大きく影響しているのかもしれない。

だから、私が高校生のとき、彼と歩いて帰るところを目撃した母は、きっと許せなかったのだ。自分がしたくてもできなかったことを、娘の分際でするなんてもってのほか。させてたまるものかという苛立ちがあったのだろう。

母のこの「男女交際」への歪んだ思いは、その後私が性暴力の被害者になったときに、私をさらに絶望に追い込むことになった。

◇母親の過度な「異性」への価値観は、若林さんが性暴力を受けた時にも驚きの言葉として表面化する…後編「犬の散歩中に車に引きずり込まれ…性暴力に遭った私に母が口にした驚きの言葉」にて詳しくお伝えする。