まずは1年だけ就職してそれから大学に入ったら?
翌日、父がいないとき、母が兄にこう言った。
「本当に大学に行きたいなら、お母さんがお願いしてあげるから。それか、1年だけ就職して大学に行ったらどう? お母さんがお金を貯めておいてあげるから」
兄は、納得はしなかったが、この母の言葉を信じたようだった。高校3年生の進路は、進学ではなく就職と決めた。学校の先生たちは進学しないのかともったいながったらしい。そして就職活動では学校1、2の成績優秀な兄だったので、順調に進んだ。大卒でも入るのが難しいと言われている一流商社に、一発で内定した。
その後、兄はバイトでお金を貯め、まずは運転免許証を合宿で取得した。私にとって兄はヒーローであり、目の前で現実に向き合って実際に頑張っている尊敬する人だった。就職後は慣れない業務に忙しそうにしていたが、毎月家に数万円お金を入れていた。そして、母との約束を信じて勉強もしていた。同じように就職し、同じ仕事に就いていても、高卒大卒では初任給のスタートが違い、悔しい思いをしていた。だから大学を出て再就職したいと心から願っていたのだ。