母の本当の怒りの原因は

母が今怒っているのは、バレーボール部にを入部しなかったことでも、部活をサボったことでもないと思った。これまで自分したくてもできなかったことを娘にさせて、コントロールし、自分がしている気になっていた。けれど、男の子とのデートなど、母が経験できなかったことは、娘にもさせない。させてたまるものかという思いだったのだ。なぜそれがわかるかというと、実際そう言われていたからだ。私はそういうことを一切できなかった、お前もするなと。

 

母が少し遅れて帰ってきたのは、彼氏から色々聞き出すためだった。今回初めて一緒に帰ったのではないということ、お付き合いをしているということ(婚前交渉はダメだと言われたそうだが、そもそもしていなかった)、部活をサボって会うことも何度かあったということ……。つまり母ができなかったことを私はやっていると確認したのだ。そして、その上で袋を私の顔に振り下ろしたのだ。

普通なら、自分ができなかったことを、せめて子供にはやらせてやりたいと思うのではないか。自分のほろ苦い思いを抱えながら、子供のために環境を整えてやろうと思うのが親心ではないのか。母は、自分がしてもらえなかった、できなかった、愛されなかった記憶しかないから、私を愛することができないのだろうか。しかし兄や妹に対しては違う……。

とてつもない恐怖に襲われた。母の子供の頃の環境の思い出や負の感情は連鎖し、私の人生にも受け継がれ、同じような苦しみを抱くように仕向けられていた。その影響の結果、自分も将来母のようになってしまうのではないかと思うと、たまらなく不安で怖くなった。

父が私に「二階へ行け」と言い、這うように階段を上がった。長い長い時間が経った気がした。

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