父の事故死、見知らぬ地での結婚生活

その修理中、祖父は屋根から落ちて亡くなった。

父方の祖母や兄弟たちは、不吉な結婚だと感じ、この結婚は取り止めようと言った。母の姉たちは、そんなことを言わず予定通り妹をもらってくださいと懇願したと言う。父方では祖父だけが、予定通りしようとかばってくれた。一家の主がすると言えば従う時代と家系であったため、そのまま式は予定通り行われた。

 

幼いころから、母は何度となくこの話をし、そのたびに泣いていた。何度も見せられた結婚式の写真の母は、自分の母ながら、本当に美しかった。こんなに美しい女性なら当時でもモテたと思うし、恋愛も楽しめただろう。若くて一番いい時期に、おしゃれややりたいこともたくさんあっただろうと感じた。同時に母からは、結婚するまでは家から出さない。婚前交渉はあり得ない。恋愛結婚できる世の中になったことがどれだけ幸せで、お見合いを強いない母の考えが、どれだけ有り難いことなのかを、何度も説かれた。聞かされるたびに、恋愛も結婚もするなと言われているようなプレッシャーでもあった。

母は結婚したのち、父の仕事の都合で田舎から離れた見知らぬ土地で暮らし始めた。新婚生活を楽しむ間もなくすぐに兄ができ、1年あけて私と妹が続けて年子で生まれた。普通の家庭であれば、結婚して順調に子宝に恵まれることは何より幸せな事。初孫の誕生を喜び、親が駆けつけ、手を貸しながら世話をし、母になること、親になることを教わるのだろう。しかし母には、頼れる家族も、親しい友人もいなかった。

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