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科学論文なら“不合格”判決に原告が憤るわけ 理研雇い止め訴訟

さいたま地裁判決を受け、記者会見する原告の男性研究者(中央)=さいたま市浦和区岸町で2024年12月20日午後3時18分、垂水友里香撮影

 科学論文ならリジェクト(不合格)――。「理化学研究所」(本部・埼玉県和光市)での雇い止めを巡る訴訟で、訴えを退けられた原告の男性研究者(64)は、怒りをにじませ判決を批判した。大量の研究者が雇い止めされた理研で、男性は先陣を切ってその違法性を訴えていた。男性は既に控訴しており、日本を代表する研究機関を相手取った裁判の審理は控訴審に移る。

 「事実を考慮せず、非常にひどい内容だ」。さいたま地裁で判決が言い渡された昨年12月20日、男性は記者会見でこう訴えた。

 2011年に採用された男性は、1年の有期雇用契約を10回更新しながら、10年以上にわたって研究を続けてきた。乳がんの早期検出や手術に用いるがん蛍光マーカーの技術で成果を出し、理研で研究室を主宰する部長職のチームリーダーとなっていた。

 13年に施行された改正労働契約法の18条では、労働者は有期契約が5年を超えると無期雇用に転換できる権利を得る。申し込みがあると、雇用主は拒否できない決まりだ。研究職の場合、プロジェクトが長期にわたるため、特例法で一般労働者より長い10年に設定されている。

 理研は16年に就業規則を変更し、有期雇用に10年の上限を設け、その起算点を13年とした。男性は10年の期限を迎える直前の23年3月末に雇い止めされた。研究が社会で実装される矢先の出来事に、男性は「10年かけて築き上げた研究だったのに」と悔しさをにじませた。

 裁判は紆余(うよ)曲折を経た。雇い止めを通告された男性は22年7月、その無効を求めて提訴。理研はその後、男性をいったんは雇い止めにしたものの、理事長…

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