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広河隆一さんに「レイプされた」記事、見出しは名誉毀損…文藝春秋に55万円賠償命じる 東京地裁
判決後に記者会見を開く広河隆一さんの代理人弁護士(2025年1月22日/東京・霞が関の司法記者クラブ/弁護士ドットコム撮影)

広河隆一さんに「レイプされた」記事、見出しは名誉毀損…文藝春秋に55万円賠償命じる 東京地裁

文春オンラインに掲載された記事で名誉を毀損されたとして、フォトジャーナリストの広河隆一さんが文春オンラインを運営する文藝春秋に550万円の損害賠償などを求めた裁判で、東京地裁(小池あゆみ裁判長)は1月22日、同社に55万円の支払いを命じる判決を言い渡した。記事の削除や謝罪広告の掲載は認めなかった。文藝春秋は控訴する意向を示した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●2019年に「レイプされた」と訴える記事が掲載

判決などによると、文藝春秋が運営するウェブサイト「文春オンライン」に2019年12月27日、<「あの人は私を2週間毎晩レイプした」広河隆一“性暴力”被害者が涙の告発>という見出しの記事が掲載された。

記事では、広河さんの海外取材に同行した女性が、帰国するまでの2週間、毎晩ホテルの部屋で広河さんから「レイプ」されたなどといった証言が記載された。

これに対して、広河さんは2023年、「レイプ」という言葉を使用した記事の見出しと内容が、暴行や脅迫を伴う「強制性交等罪」に該当する行為を示すとしたうえで、そうした意味のレイプの事実はなく名誉を毀損されたとして提訴していた。

文藝春秋側は裁判で、記事が掲載された当時、「レイプ」という言葉は「強制性交等罪」に限定されるものではなく、経済的または社会的な関係上の地位の差を利用したような性行為(2023年に改正された刑法における「不同意性交等罪」)を含む概念として一般に認識されていたと反論した。

●裁判所「当時、レイプは強制性交等罪と理解される」

東京地裁は今回、見出し部分だけを見た場合と、見出しに加えて記事本文を読んだ場合を分けて検討した。

まず、見出し部分について、「レイプという表現は、多義的に用いられる場合もあるものの、本件記事の掲載当時の一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、通常は、強制性交等罪に該当する行為をしたという意味に理解されるものというべきである」と指摘。

そのうえで、一般の読者が記事の見出しだけを見た時は「女性に対し強制性交等罪に該当する行為をした人物であるという印象を抱く」と判断。見出し部分だけに不法行為が成立するとした。

一方で、見出しと記事本文の両方を読んだ場合は、全体としては、相手方が望まない性交渉を行っていたという不同意性交等罪を基礎づける事実を摘示したと理解するべきとした。

そのうえで、取材内容等から、記事全体から摘示された事実については、記者が少なくともその重要部分について真実であると信じるにつき相当の理由があるとして、不法行為の成立を認めなかった。

なお、記事に記載された内容が「真実」であると認められたわけではない。

記事削除と謝罪広告については、見出しと本文を読めば、「一般読者は、原告が不同意性交等罪に該当する行為をしたことが摘示されていると理解するものと認められ、その場合は不法行為に該当しない」などとして、いずれも認めなかった。

●広河さん「ようやく息をつける気持ち」

この日の判決後、東京・霞が関で記者会見を開いた広河さんの代理人である渥美陽子弁護士は「記事の見出しが与えるインパクトは非常に大きく、この点について裁判所が名誉毀損を認めたことは評価できる。他方、記事の内容について、広河さんがおこなったとされる行為の具体的な対応について事実と異なる点が多くあったにもかかわらず、全体の文脈で概括的な事実摘示とされてしまったことは残念に思う」と話した。

今回争われた記事は、2018年12月26日発売の「週刊文春」に掲載された記事がもとになっていたが、渥美弁護士によると、時効の関係で裁判ではネット上の記事についてのみを対象とすることになったという。

判決を受けて広河さんは代理人を通じて「みなさんにはっきり言っておきたいことは、私はレイプはしていないということです。本日の判決について、事実がどうであったかをきちんと検証をして、このような判決をいただけたことは、私にとってようやく息をつけるという気持ちです」などとコメントを出した。

文藝春秋の法務・広報部は、弁護士ドットコムニュースの取材に「このたびの判決が、記事本文の真実相当性を認めた点については妥当な判断と捉えています。一方、敗訴部分については到底承服できないため、即時控訴いたします」とコメントした。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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