「コロナワクチンで50万人が死亡」「日本で人体実験している」…反ワク派の主張を専門家と徹底検証した結果
新型コロナワクチンに関するネガティブな情報が出回っている。その中には、「日本人の超過死亡の大半がコロナワクチン関連死」「mRNAワクチンのスパイク蛋白は毒」「レプリコンワクチン接種者は周囲の人に感染させる」といった科学的根拠に乏しい情報も多い。ジャーナリストの岩澤倫彦さんが取材した――。(前編/全2回) 【画像】厚労省前のワクチン反対運動(2024年12月13日) ※本稿は、『プレジデント』2024年12月13日号「コロナワクチンは危ないのか?」を追記・再構成したものです。 ■インフルも新型コロナも猛威を振るっている インフルエンザの感染が急激に拡大している中で、新型コロナウイルスの感染者数も同時進行で増加している。 「コロナワクチンは危ない」という反対運動が展開され、SNSなどで拡散された。これによって、ワクチンに対する不信感や忌避感が強まり、接種率が低調になっている影響と見られている。 果たして、ワクチンに反対する人々の主張は、信用に値するのだろうか? ワクチン問題に詳しい大阪大学免疫学フロンティア研究センター・宮坂昌之招へい教授の協力を得て、ワクチンに反対する主な主張をファクトチェックした――。 ■「50万人も自国民を殺してるんだよ!」 「厚生労働省の職員、出てこい! 人殺し!」 「ワクチン薬害を認めろ!」 2024年12月、厚生労働省が入る中央合同庁舎に向かって、集まった人々が激しい言葉を浴びせていた。その中には、ワクチン接種後に亡くなった人の家族もいる。 騒然とした雰囲気の中、「コロナワクチンが人を殺している」、とプリントされた横断幕が風になびく。ワクチンに反対する抗議活動だった。 「50万人も自国民を殺してるんだよ、お前ら分かってんのか、厚労省!」 こう叫んだのは、コロナ禍で注目されるようになった長尾和宏医師である。なぜ、「50万人を殺した」ということになるのだろうか?
■超過死亡数の大半はワクチンが原因? 後日、長尾医師にメールで質問すると、次の返信があった。 ---------- 過去3年間の日本の「超過死亡数」は、累計40〜60万人。多くの専門家は「大半」がワクチン関連死と推定しています。私自身も「9割以上」と思います。 (※抜粋・要約) ---------- 超過死亡とは、過去のデータに基づく予測値を超えた死亡数を指す。 長尾医師が述べた「50万人」は、累計40〜60万人の中間をとったらしい。だが、大半がワクチンによる死亡である、という根拠は示されていなかった。再質問したが、回答はなかった。 ■確かに死亡リスクはゼロではないが… “50万人の超過死亡はワクチンが原因”という主張について、大阪大学免疫学フロンティア研究センター・宮坂昌之招へい教授は、論理が飛躍していると指摘する。 「ワクチン接種と超過死亡がよく重なったのは、7回の定期接種のうち1回のみでした。“超過死亡説”が本当なら、接種のたびに超過死亡が起きたはずです。したがって超過死亡はワクチンではなく、新型コロナ感染症によって起きた、と考えるべきでしょう。 中東カタールでは、約700万回のワクチン接種が行われ、138人が接種後30日以内に死亡しました。このうち112人はワクチンとの関連は無し、あるいは可能性が低いと判断されています。世界的にワクチンが原因で死亡する頻度は、100万回接種に数回でした。 ワクチンは決してゼロリスクではありませんが、接種のメリットとデメリットを冷静に判断する事が必要です」 ワクチン接種後、心筋炎が起きるケースが報告されているが、確率は100万回に10回程度で、新型コロナ感染で心筋炎が起きる確率に比べてずっと低いことが分かっている。
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