デジタルイラストを依頼しなくなった話①~技量の話
自己紹介としてAIでイラストを生成するようになってからデジタルイラストを依頼していない、という話を軽くさせていただきました。
今回はそちらについて、少し詳しく説明させていただければと思います。
最初は発注の際の参考資料目的で生成をはじめた、という話をさせていただいたのですが、現在はAI生成ばかりやっています。
デジタルイラストを依頼しなくなった理由は大きく分けて以下の二つです。
欲しい絵を描ける人がいないから
権利関係のトラブルにうんざりしているから
今回は「欲しい絵を描ける人がいない」についての話をさせていただければと思います。
注意事項
こちらに記載させていただいた内容は全て実体験であり、イラストレーター(絵師)への誹謗中傷・侮辱・イメージダウンを目的としたものではございません。
そもそもお前何者?
元々は、絵を買っていた側の人間です。
今は、AIでイラストを生成して楽しんでいる人間です。
この記事にAIで生成したイラストはのせませんが、AIを使っている人が書いた文章である、ということはおさえた上でお読みください。
※この記事の文章は全て手書きです。
個人発注者をとりまく環境について
AIでイラストを生成しはじめた経緯については、イラストレーターに絵を頼んでいたことが直接的に関わっています。
まずは個人発注者をとりまく環境についての説明からさせてください。
プロのイラストレーターさんに依頼しようとした場合、「個人さんからの依頼はお断りいたします」と、まず取り合ってもらえません。
個人が払えないような金額をふっかけているのではなく、単純に作業をする時間が確保できないのです。
全額前払いにしていくらお金を積んだって無理です。個人からの依頼を受けたところで、相手の実績にはならないので受けてもらえません。
個人発注者の依頼は絵師に限りなく有利な条件(Skeb経由)でなければ、アマチュア絵師しか受けてくれる人がいないのです。
技量チェックとラフチェックは欠かさなかった
私は初回はどれくらいの技量があるのか・きちんと仕事を進められる人なのかを必ず確かめていました。初回は本当に必要な絵とは違う絵を依頼していました。
例えばほしい絵の特徴が以下のようなものであったとしましょう。
15歳前後の少年
ファンタジー系の魔法使い
依頼先として候補にしている人は以下のように記載しているものとします。
「描けるもの:少年少女(サンプルは少年多め)、30歳くらいまでの男女。得意なジャンル:ファンタジーが得意ですが、なんでも描けます!」
この場合、いきなりほしい少年の絵を頼むのではなく、私はあえて初回は女性の絵を頼みます。
たいていはこのような指示書を作って提出しています。
15歳前後の少女
服装は現代風の私服
なぜこのようなことをしているか、いささか疑問だと思います。
人に言われたことをその通りにできる人かどうかを確かめるためです。
本当に頼みたいものは「ファンタジー系の少年」です。ですが、ファンタジー系の少年が得意なのであればあえて真逆のイメージを与えるシンプルな現代風の少女を頼みます。
描きたいものや得意なものは綺麗に描けて当たり前です。だからこそ、本当は描きたくないものを頼まれたときであってもきちんとしたクオリティを確保できるかを見ています。
もちろん納期が守れるかどうかも。納期を落とした人は少なからずいらっしゃいます。2ヶ月は余裕を見て納期を設定していたのですが、それでもギリギリになる人もときどきいらっしゃいました。
また、私が依頼をする際はラフチェックを必ずしていました。(Skebはラフチェック・クオリティの保証が禁止事項となっていますので、Skebは使っておりませんでした。)
ラフチェックをしていた理由は以下の二点です。
イメージと異なるものを納品されることの防止
著作権侵害回避
指示書の通りのものを出しているのかを重点的にチェックしていました。
それでもラフが雑すぎて伝わらなかったり、ラフから勝手にイラストの内容を変えてしまう人がいます。(この場合は修正はラフでのみ受け付けます、の場合であってもラフの時点ではなかった内容なので、清書の段階で修正させます。)
また、キャラクターデザインからご依頼する場合稀に著作権侵害物をオリジナルとして出してくる方がいらっしゃいますので、「著作権侵害回避」を目的として修正させることもあります。
(しかしこちらも全てをチェックしきれませんので、著作権侵害物が納品されてしまったこともあります。)
頼まれたものを描けない人たち
私はこのようなチェックを必ず行っていました。
しかし、初回だけでリピートがなかった人はかなりの数いらっしゃいます。
リピートしなかった人は頼まれたものを描けなかった人です。
本当に描けない人の場合、イラストがお金を取るに値するクオリティに達していません。もしくは、指示書の内容からズレたものを提出しているか「描きたくない」というのが絵から伝わってきてしまいます。
(それでも自分たちは「作業はした」ので作業代として依頼料を取ろうとします。)
自分の好みとは違う内容の発注に対する興味のなさが絵とクオリティにあらわれてしまうのです。
よくあること①:指示書からズレていく
頼まれたものが思い浮かばなかった場合や技量が足りなくて描写できなかった場合などは「描けません」と断るのではなく自分が描けるようなものに誘導して勝手に指示書の内容を歪めます。
例えばですが、髪型として「ポニーテール」と指定したとします。この絵師がポニーテールを描けなかった場合、「ひっつめ髪」、「サイドテール」、「ルーズサイドテール」などになっていることがあります。
(一つ結びという点はあっているのですが、結び方が違うのです。)
指示書に書かれているキャラの年齢や印象と全く異なるキャラがデザインされている状態などもよくお見かけします。
例えばですが、「活発だけどしっかりもので世話焼きなキャラ」という依頼内容だったはずなのに、「活発な幼い顔立ちのぶりっ子キャラ」にされていたなんてケースはよくある事例です。「活発」はあっていますが、他はまるで真逆です。人を世話するのが好きなキャラだったはずなのに人に世話をされる側のキャラになってしまっていますね。
他に遭遇したことのある事例として、「年齢相応の見た目」と書いてあるのに年齢より幼い印象を与えてしまうデザインが提案されることも多かったです。こちらは指示書に記載されている年齢の見た目を描けないときに起こる現象です。
(特に30代以上の男女は描ける人が少ないので、10代の男女よりもこういった事案が起こりがちです。設定年齢30代のはずなのに10代にしか見えないキャラデザインが提供されることもしばしばあります。)
指示書と違うんだけど?と指摘すると「こっちのほうがかわいいと思う」「キャライメージにはこっちの方が合っていると思う」と主張してきたりします。指示書の内容には合わせてくれません。技量が足りないので合わせたくても合わせられないのです。
よくあること②:嫌々描いたのが見ていてわかる
仕事として割り切って描けない場合、以下のような特徴が見受けられます。たとえデザインがいいものであったとしても、使い物にならないイラストが納品されます。
明らかな手抜きが散見される
素人目で見ても明らかにバランスがズレている(骨格が曲がったポーズをしていて実際にイラストと同じポーズを取ることができない、顔パーツがズレていて福笑い状態、などが多いです。パースがずれていて遠近感について違和感を感じるなども遭遇歴あり。)
ラフチェックから勝手にバランスやデザインなどが変えられていて別物になったイラストが出てくる
私は自分で背景をつけるのが好きなので、依頼をするときは背景を透過と指定しています。
後から文句を言ってくる人がたまにいらっしゃるので、「背景は自分でつけるので、透過で納品してください」といった形で背景に関する加工があることは最初に明示しています。
手を抜いている場合、余計な下絵線が消されていなかったり、塗り残しがあったりします。
特に8割くらいの方で見受けられたものが以下です。
白目が塗られていない
髪の毛の毛先が塗られていない
この状態で背景をつけた場合、塗られていない部分に背景が出てきてしまうので、絵として使い物になりません。
特に背景の色がキャラの配色と全く異なる鮮やかな色であればあるほど悲惨なことになります。
白目がなくて本来白目の部分が背景の色になっていて、そのかわりに白目がないキャラクター、不気味ではありませんか?
個性派キャラでもないのに髪の毛先にメッシュが入っていると、キャラの印象が変わりませんか?
(意図的に色を変えるメッシュはともかく、塗り残しの場合は毛先だけ明らかに塗ってないなっていうのがよくわかったりしますが。)
使い物にならない、という点においては使用用途としてどのように使用するかを最初に提示しているのに、その使用方法では絵が崩れる、きれいに表示されない、といったことにもたびたび遭遇しています。
(特に多いのがアイコンイラストで、アイコンとして設定した際に自動縮小されることにより絵のバランスが崩れてしまうことがあります。)
絵から「描きたくない」という感情が伝わってきた場合、使い物にならないものを納品してきた場合、最後までやり遂げられなかった場合は二回目の依頼はありません。
個人からの依頼を受けてくれるような人はそのような人が大多数を占めていました。
そして頼める人間がいなくなった
反AIの方はよく「AIに学習させるくらいなら依頼をしてくれ」と発信しています。
しかし、たいていの場合は必要とされているものが描けないのです。それでもお金は欲しいので「できます!」と嘘をついて依頼を受け、自分勝手なイラストを制作して自分の意見として描けるものの中からなるべく近いものを選んだものを案として提示し、発注者の意図を無視してゴリ押しして納品します。
難しい内容に挑戦することは確かにスキルアップの過程において大事ではあるのですが、求められているクオリティに達していないことによる修正地獄で大変なことになります。お互いにとってよくないので、最初から頼みません。時間の無駄です。
他にも、そもそも描ける人が見つからない、といったこともよく起きます。
アニメ調の一枚絵しか描けない人はよくお見かけします。ちょっと違う画風の絵、例えばリアル調のファンタジー系(某有名RPGシリーズの3Dモデルのような画風、とお考えください)などの画風は描ける人がほとんどいません。
このようなものを頼みたい場合、そもそも頼める相手がいませんので、AIに頼らざるを得なくなります。
リアル系はAIが得意な画風でもありますので、イラストとして投稿されているものはほとんどがAIで生成されたものです。完全人力で描ける人はかなりのレア人材と化しておりますので、個人からも受けてくれる優しい人の場合は当たり前のように2年・3年待ちといった状況になっています。(たいていは作業時間が取れないので、受けてもらえません。)
かくして、頼みたいものを描けるだけの技量を持った人が見つからない、もしくはいたとしても個人という立場の弱さから依頼を受けてもらえないので、AIに頼らざるを得なくなりました。
②に続きます。
コメント
2とても共感しました。私自身も仕事で外部にバナー依頼をする時は自分である程度のラフデザインを見本として作り、それを元にして作成して貰うという形をとっています。
それでもまったく違うデザインにされるのはよくあることです。キャッチコピーも「収まりが悪いから」と勝手に変更されたり。
本当に欲しいものを作ってもらうのも一苦労ですよね。
ヨハ男様
コメントいただきありがとうございます。
実はデザインの依頼経験もありますが、同じような経験をしております。
共感いただけてとても嬉しいです。