伊江島補助飛行場で物資投下訓練をしていた米海兵隊の輸送機オスプレイが16日、米軍への提供区域の外の海上に貨物を落下させた。民間地に落下する可能性もあった。一歩間違えれば大惨事だった。
高度を飛行する航空機から物が落ちる事故は過失であっても到底許されない。民航機で同様の事態があれば、原因の特定や防止策が厳しく問われるはずだ。しかし、米軍はどうか。落下物事故は毎年のように発生している。あまりに野放図ではないか。日本政府は毅然(きぜん)と訓練中止を求めるべきだ。
物資の大小や軽重に限らず、落下事故は起こしてはならない。しかも、今回落下したのは重さ400~450キロ、1・3メートルの立方体である。レーションと呼ばれる配給食を積んだ貨物パレットだという。人に当たった場合、人命が失われる可能性があった。
訓練でパラシュートを付けて投下したところ、海上にまで風で流された。貨物パレットは、住宅地の上空を通過して海上に落ちた可能性が高い。実際に風向きの変化があったとしても、民間地へ流される可能性のある場所での訓練がそもそも危険である。
沖縄の施政権返還後、伊江島補助飛行場では今回を含めパラシュート降下訓練などの事件事故が39件発生している。昨年1月には降下訓練をしていた兵員3人が提供施設区域外の民間地に降下したこともあった。
県内の米軍関連の落下物事故は復帰後、2023年末までに81件発生している。1965年には読谷村でパラシュートで降下させたトレーラーによって少女の命が奪われる事故が発生している。
県民が落下物事故に強く抗議してきたのは、人身や財産に被害の及ぶ大惨事への危機感からだ。落下事故が一向になくならないことへの不信感もある。
伊江島補助飛行場での投下訓練はSACO(日米特別行動委員会)合意によって実施が認められている。しかし、伊江村の名城政英村長は「認められた訓練であっても物資投下訓練は容認できない」と訴えた。村民の安全を守るべき立場として当然の姿勢だ。
米軍がSACO合意に反し、嘉手納基地でパラシュート降下訓練を続けていることも県民の安全を軽んじているとしか言えない。安全が確保できない伊江島、嘉手納での投下・降下訓練の一切を直ちに取りやめてもらいたい。
中谷元・防衛相は安全確保と再発防止を米側に求めるというが、400キロ超の貨物落下という重大事故への危機感が足りないのではないか。米軍が説明する再発防止策が何ら機能せず、これまで事故が繰り返されてきたのだ。政府は訓練中止を要求し、安全性をチェックするなど抜本的な対応が必要である。
日米地位協定が中止要求の障壁となっているならば、その改定も迫るべきである。