合意ない配置転換は「違法」、88万円賠償命令 大阪高裁
職種を限定する合意をした労働者に対し、使用者が別の職種への配置転換を命じられるかが争われた訴訟の差し戻し審判決が23日、大阪高裁であった。中垣内健治裁判長は同意のない配転命令は違法だとして、命令を出した滋賀県社会福祉協議会に88万円の損害賠償の支払いを命じた。
最高裁は2024年4月、労働環境の変更に関する労使間の合意を重く捉え、労働者の同意のない配転命令は「違法」とする初判断を示した。この日の差し戻し審判決は、最高裁判決に沿って、使用者は本人の合意のない配置転換を命じる権利をもたないと判示した。
原告の元技師は、同社協が運営する施設で福祉用具を改造する部門で約18年間勤務していた。施設側は2019年、同部門の縮小などを理由に総務課への人事異動を内示。原告側は配転命令には根拠がなく違法として提訴した。
中垣内裁判長は差し戻し審の判決理由で、施設側は元技師との面談などを通じ、職種を限定する双方の合意について容易に認識できたと指摘。その上で、職種変更の合意を得るための働きかけなど「尽くすべき手続きをとっていない」として、元技師の配置転換は違法だと結論づけた。
一審・京都地裁と二審・大阪高裁は、原告には職種限定の契約があったとした上で、配転命令は解雇を回避する目的もあったと指摘。配転命令には合理的な理由があるなどと判断し、原告側の請求を退けた。
最高裁は「適法」とした二審判決を破棄し、賠償責任の有無などを検討するため同高裁に審理を差し戻した。
労働契約法は双方が合意すれば、契約で定めた労働条件を変更できると定めている。一方、契約で従事する職種を限った場合は、労働者が同意しなければ別の職種に配置転換できない。
判決後、原告代理人の塩見卓也弁護士は記者会見し、差し戻し審判決は「職種限定の合意があっても配転が必要な場合には(労働者への)説明や解雇回避の義務を果たさなければならないと指摘した」と強調。「雇用主側の取るべき対応を具体化したといえる」と話した。
同社協は取材に「判決文が届いていないのでコメントは差し控える」としている。