トップ国内【スクープ】文科省、裁判資料を捏造か 揺らぐ解散請求の「根拠」

【スクープ】文科省、裁判資料を捏造か 揺らぐ解散請求の「根拠」

インタビューに応じる川口美由紀さん(仮名)=19日午後、愛知県(石井孝秀撮影)

文部科学省が東京地方裁判所に世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)への解散命令を請求したことについて、文科省が作成し裁判所に提出した陳述書に事実と違うことを書かれたと、“被害者”が関係者に話していることが分かった。審理は非公開で行われているが、家庭連合を解散させる「不法行為」の証拠として提出された陳述書が被害を受けたとされる本人が書いたものではなく、内容に偽りがあると訴えるケースは複数に上っているとみられる。(信教の自由取材班)

高齢の母親「お金取り戻してと言ってない」

「あの、本当の話、お金を●●●(息子の名前)に、私の出した分を取り戻してっていうことも、言ってないのね。(中略)だから私を利用してやっているわけよ」

文科省の陳述書に名前が載る愛知県在住の嵯峨山君代さん(仮名)は、娘の川口美由紀さん(仮名)にこう話した。文科省側の陳述書を母が書いたことを知った美由紀さんは昨年夏、一人暮らしの君代さんに会って約3500万円の被害額が記された陳述内容を自分で書いたのか確認した。

すると母親は自身が伝道した娘に「お金を返してほしいとは思ってもいない」と明言したのだ。美由紀さんは還暦を超えており、親子で30年以上も共に信仰してきた仲とあって、君代さんが自らの意思で献金をしてきたことを知っていた。

ところが、君代さん名義の陳述書には美由紀さんに「唆(そそのか)され」献金したとある。自分を伝道した母親が自分に唆されたという不自然さに美由紀さんは呆(あき)れたと言うが、「やはりそうか」と思ったという。家庭連合の被害ストーリーの下書きがあり、文科省側が面会して聴取した個々の内容を書き添えるなどして、話を盛られたのではないか―。そのような陳述書に高齢者の君代さんが全容をしっかり把握できないまま、署名させた疑いが濃厚だ。

君代さんは卒寿を過ぎているが家庭連合の信仰歴38年の信者で、娘の美由紀さんを伝道している。また君代さん、美由紀さんとも自身の夫を伝道し、改めて結婚を教団式で行うため1992年に韓国ソウルで行われた国際合同結婚式にそれぞれ参加した。

君代さんは熱心に信仰をしてきたが、高齢化と共に身体は弱り教会通いから遠のいた。そこへ2年前の安倍晋三元首相銃撃事件が起こり、激しい家庭連合批判報道が起きた。

そして2023年の正月、美由紀さんは兄から呼び出された。弟も同席したその場で、美由紀さんは兄と弟から「家庭連合をやめろ」と迫られた。美由紀さんはその場で断った。だが、美由紀さんによると君代さんは現在、息子たちによって本人の意思とは別に脱会状態にあるという。「身の回りの面倒を見てもらう立場になり、高齢で弱者となった立場につけ込んで、これまでの母の人生すべてを否定させるのは親不孝だ」と嘆く。「お金を返してほしいと言っていない」と君代さんの肉声を聞いた美由紀さんは、批判報道で不安に陥った家族を利用し、嘘(うそ)の書かれた陳述書で家庭連合を解散に政府が追い込んでいることに恐怖を覚えるという。

家庭連合への解散命令請求は東京地裁で審理中だ。NHKや大手紙が報じたところによると、これまで4回の審問が開かれ「現役信者らは元信者らの主張には虚偽が含まれ」(読売新聞ネット版2024年12月13日)ると主張したと報道された。これについて教団関係者によると、審問に出廷した文科省側の証言者2人が、陳述書内容に事実と食い違う点があると認めたという。

文科省に虚偽の内容を書かれたと訴えているのは、嵯峨山さん親子だけではない。60代男性信者の遠山伸司さん(仮名)は、文科省の陳述書で先祖の因縁を解かなければ不幸になるなどと、信者から脅されて献金したことにされていた。遠山さんは、関係者に「献金の動機が異なる」と伝えていた。

遠山さんは入信して約30年になるが、海外での伝道活動や奉仕活動に取り組む日本人信者への応援などのため献金を続けてきたという。しかし、元首相銃撃事件が起きた頃、経済的理由で生活が苦しかったため、テレビで家庭連合を扱う番組を見て知った相談窓口の電話番号に返金を期待して連絡をした。そこで弁護士を紹介され、さらにその弁護士を通じて文科省の職員2人に面会し、聞き取り調査に協力した。

だが、なかなか返金が実現しないので、遠山さんは直接教団に訴え出て、関係者と交渉を重ねて和解に至った。

文科省の陳述書については「あれは自分が書いたものではない」と話している。陳述書の文末には「(教団に)解散してもらいたいと願うばかりです」という一文が記述されていた。しかし、遠山さんは文科省の聞き取りにそのような発言をしておらず、それどころか面会した文科省の職員からは、教団解散のための陳述書だと聞かされていなかったという。遠山さんは文科省に複数の訂正を求めたものの、陳述書が直されることはなかった。

また、東京都練馬区在住の現役女性信者の足立真由美さん(仮名)は、実母名義の陳述書が文科省側から提出されたことを知り、母親に直接確認した。すると足立さんに母親は「書いていない」と明言したという。

足立さんの実父は全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の山口広弁護士を代理人として、献金に関する請求を行っていたが、献金の返済は既に終了し、和解解決していた。なぜ、母親が了解していないのに母親が「書いていない」という陳述書が、解散命令請求の裁判に提出されているのか、一切不明だという。

ある関係者によると、文科省の陳述書の中には家庭連合の教義に触れているものがあり、聖書に登場する人類始祖の男女のうち女性を「イブ」と表記しているという。しかし、教団では日本聖書協会の聖書に倣って「エバ」と呼称しているといい、「これ一つ取っても本人ではなく文科省側の作文と分かる」(教団関係者)という。

信者の名前を利用し、偽りや誇張を陳述書に盛り込む文科省の手法が浮かび上がっており、非公開裁判の審理で文科省の権力乱用をチェックできないことは懸念が残る。

文科省が家庭連合の解散命令を求める主な根拠となっているのは、教団が32件の民事裁判で敗訴したことと、解散を訴える陳述書が約300通提出されていることだ。だが、陳述書を提出した“被害者”からは、文科省が請求申し立ての趣旨に沿って陳述書の内容を捏造(ねつぞう)したとの訴えが相次いでいるといい、文科省の主張の根拠が大きく揺らぐ事態となっている。

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