トランプ政権のウォルツ大統領補佐官は今月13日「我々に民主主義のため全力を尽くせと言うならウクライナも全力を尽くせ」と言及したが、ウクライナ軍の現役兵士も「彼らの言い分は正しい」「領土を失い続けているのに『我々に都合がいい条件』で交渉が出来る訳がない」と述べた。
参考:Ukraine is failing the mobilization test
塹壕を埋めるための兵士がいなければ「前線の安定化」が実現しないため、ウクライナに都合がいい条件での停戦など夢物語
トランプ政権の安全保障問題担当補佐官に指名されているウォルツ下院議員は今月13日「ロシアと交渉を始めるのには前線の安定化が必要」「これは新たな援助や武器パッケージだけでは達成できない」「ウクライナが民主主義のため全力を尽くせと我々に言うなら、ウクライナにも民主主義のため全力を尽くしてもらう」「彼らは18歳からではなく25歳から徴兵している」「我々は人的問題が解決されるのを見届ける必要がある」と述べて注目を集めたが、ウクライナ陸軍のクロテンコ軍曹もkyivIndependentに寄稿した中で「彼らの言い分は正しい」「領土を失い続けているのに『我々に都合がいい条件』で交渉が出来る訳がない」と述べた。
“ウクライナ社会は大半は動員を望んでおらず、600万人近い男性が義務化された軍人登録の情報を更新していない。その殆どが「動員延期」や「動員免除」といった正当な資格を有していないにも関わらず、当該男性の動員は社会的な反対に直面している。中年女性らは顔を真っ赤にして集まり、動員忌避者を探す軍の担当者に向かって「恥を知れ」と叫ぶ。社会は25歳以下の動員にも抵抗感を示すが、この感情はエリートや議員の子どもには適用されず「ポロシェンコやゼレンスキーの子どもを戦わせればいい」と言う”
“社会は戦費を補填するための増税にも消極的で、戒厳令によって課せられた国民の義務についても沈黙して何も言わない。社会は別兵科の兵士を歩兵部隊に送ることも反対する。ウクライナ人にとって歩兵部隊に所属することは名誉なことではなく「一種の罰」と考えている。社会は訓練不足の新兵を戦場に送ることにも強く反対している。2014年の紛争勃発から数えれば10年以上の時間があったのにウクライナの男たちを準備させるは不十分だった。彼らは最低でも6ヶ月間の訓練を受けなければならないが、出来れば部隊から逃げやすい海外での訓練を希望する”
“この戦いを特徴づける「ドローン戦争」や「砲弾不足」について幾らでも語れるが、本当に前線を守ってきたのは歩兵だ。現在も3,000kmに及ぶ前線の1/3で戦闘が続いており、圧倒的に優勢な敵に対して前線維持に必要な人員をどこから調達すればいいのか社会は答えたがらない。政府に問題を解決させようとさせても「誰も動員しない」「25歳以下なんて論外」では何も解決しない。先に議員、検察官、警察官を戦場に遅れば気が済むのかもしれないが安心して欲しい。議員や検察官だけでは1個連隊にも満たないし、警察官は最初から全旅団で戦っているので何も解決しない”
“成熟度が試されるテストにウクライナ社会は落第したのだ。戒厳令下では選挙の実施が禁止されているにも関わらず、野党は選挙が間近に迫っているかのように政府と戦い、政府も野党との妥協点を模索する代わりに政治的な裏切り者や協力者を拘束し、どんどん社会的な信用を失って彼らに協力している。政府の失敗を批判するのは当然だが、政府の動きは社会の意向を反映するため適切な動員政策がないのだ。経済を戦時体制に移行させる社会的要求がないため、これに対応する政治的に不人気な決定もないのだ。だから敵の数的優位に関する問題が未解決のままなのだ”
“本当にパートナーが言う通りだと思う。国際社会にウクライナの民主主義を守って欲しいなら、まずはウクライナ人自身が民主主義を守らなければならない。敵がどんどん領土を奪い続けている状況で「我々に都合がいい条件」で交渉が出来る訳がない。いい加減「バラ色の色眼鏡」を外すときが来たのだ。西側諸国はウクライナの強化を望んでいるが、我々は日々後退しているため、いくら武器や資金を受け取っても「ウクライナが強化された」とは見ておらず、彼らはその事を正直に行っているに過ぎない”
“軍の管理体制に問題がある?勿論だ。これが参謀本部に紛れ込んだスパイによるものだと信じているなら同情する。それは地球が平らだと信じていると同じ「陰謀論レベル」の考え方だ。司令部の最優先目標は前線の崩壊を防ぎ「決定的な後方地域への突破」を阻止することで、この状況でどのような改革を語れるだろうか?手持ちの予備戦力は全て使い果たしている。だから前線の小さな地域に様々な部隊が放り込まれ、ミスマッチを起こし管理上の問題が生じているのだ”
“軍の組織改革を議論する前に前線の安定化が不可欠で、そのための予備戦力確保は政治家の決断にかかっており、この問題を司令部に向けるべきではない。ゼレンスキーと議会は前線で起こっていることに全責任を負っている。この2つの政治的主体は動員に失敗した。この問題を解決するためには支持率や日和見的な野党に関係なく「不人気な政治的決断」を下さなければならない。そうでなければウクライナの成功はないだろう”
ウクライナ国防次官と最高司令部の幕僚を兼任するガブリリュク中将も昨年10月、情報空間に蔓延する動員プロセスへの否定的な態度について「国民の権利は大声で主張されるが、憲法や法律によって定められた義務=兵役は黙殺される」と嘆いたことがあり、クロテンコ軍曹も「戦いに参加したくはないがロシアにも譲歩したくない」「国民を戦場に送る前に政治家が先に行け」「あれもダメこれもダメ」と言っていては何も問題が解決しないと訴えており、政府は決断できない社会の雰囲気に流されず「行動を起こせ」と言っているのだ。
どれだけ西側諸国が新たな支援や武器を与えても、塹壕を埋めるための兵士がいなければ「前線の安定化」が実現しないため「ウクライナに都合がいい条件での停戦」など夢物語で終わってしまうだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Офіс Президента України
動員は最低限でその上での一定の譲歩が必要な時期だろうに。
この兵士のウクライナ社会や国民に対する怒りはもっともだと思うし、そのとおりだと思う。
ただ社会と国民の反応は一個人の幸福こそ最も尊重すべきものとする西側的自由主義思想そのものなので、
残念ながらウクライナが西側によればよるほど強くなることはあっても改善することはないと考えます。
現代社会はいかに負担を他人に押し付けて自分は旨味だけを得るかということをいかに極めるかが求められているのです。
今の西側思想で国家とか民族とか社会のためになんて流行るわけがない。
西側であればあるほど個人主義になるとは思うのですが、中国やイスラム系国家でさえ、そのような傾向は強まりつつあるように見えます。
勿論短期的には個人主義は幸せに繋がり、自分自身もその恩恵を受けているのであまり強いことは言えないのですが。。
個人主義が全世界で極まった際には、長期的に見て人類の発展は終焉を迎えそうな気がしてしまいます。
種としての団結が、進化に繋がると思うので。
動員への国民の反対に関しては、ウクライナ国家の成熟の問題ではない気もしますがどうなんでしょうか。
情報源が天からの声(制御されたマスコミや政府広報)しかなかった第二次世界大戦以前とは違い、戦争で前線に赴いた後の悲惨さはあらゆる媒体で公開されています
情報源が比較的制限されているロシアの僅か30万人の部分動員でさえ、ロシア国内ではかなり揺らいだという話もあり、現代国家、現代の人類そのものが総力戦に耐えられないのではないかと思っています。
日本で自衛隊現有戦力が壊滅しました、中国から国を守るために自衛隊への加入をお願いしますという事があったとして、強制徴兵でもなければ10万人も集まらないのではないでしょうか
>戦争で前線に赴いた後の悲惨さはあらゆる媒体で公開されている
何を見るかは国民の自由だから、悲惨な戦争のことよりも娯楽動画のほうが好まれる。公開しただけで、民の側に汲み取る意欲が薄いのでは意味がない。
>強制徴兵でもなければ10万人も集まらない
強制徴兵のためには絶対的な権力が必要で、権力の源泉は武力で、武力の要たる自衛隊の現有戦力が崩壊。
そもそも、自衛隊を壊滅させてしまった無能が率いるままで新兵を集めても勝てるはずがなく、軍が崩壊した場合のウクライナが「さっさとロシアに降伏せよ」としかならないように、「さっさと中国に降伏せよ」としかならないだろう。前提が負けている国家がどんな悪あがきをしても、より悲惨になるだけ。
>成熟度が試されるテストにウクライナ社会は落第したのだ
“国家”という幻想を守るために個人の生命を進呈するのが成熟した社会だというのなら、そんな成熟は要らないし本当に過去にそんなテストに合格した国があったのか、どうか
頽勢に臨んで精神的な話をするのは耽美かもしれないけれど中身がない 本当に必要な政治的な決断は、動員の決定ではないでしょう
“国家”という虚構を力を結集するための手法とし、個人の生命と財産を守り活用するのが成熟した社会だと考えます。国家を幻想で終わらせず、実利を得るための協力体制へと昇華させられるかどうかが鍵。
テストの基準は定かならずも、個人的には秦漢、隋唐、北宋、明清の各王朝の発展期の中華、インドのマガダ朝、帝政ローマ、アケメネス朝ペルシア、ササン朝ペルシア、アッバース朝イスラーム、オスマン帝国、ヴェネツィア共和国など、その域に達した政体は世界各地の歴史にあると思う。ただし、成熟の後に腐敗と崩壊が来るのはいずれの政体も避けられなかった。
そして、旧ソ連亡き後のウクライナという国家は、それらの“成熟に達した国家”へは至っていない。未熟なまま下り坂へ向かってしまったケース。類例ならば南北朝時代の宋斉梁陳やワイマール共和国など。
>成熟度が試されるテストにウクライナ社会は落第したのだ
この理屈だと全体主義国家の北朝鮮や大日本帝国、古代中国や古代ローマ帝国は極めて成熟した社会になりますね・・・
他の方も言っていますけど先進国で合格するのはイスラエルくらいでしょうか
国民が戦争を続ける気がないなら
もう止めろとしか言いようがありません
他国は、直接派兵してくれないですからね…
(国力差が大きいため)早期停戦して、兵力温存・陣地整備・陣地の監査を行って、抑止力を保つべきだったと常々思います。
独ソ戦ウクライナ戦線の戦訓は、平原が広がって地形阻害があまりないですから、突出と包囲の繰り返しで消耗しやすいんですよね。
もう何故継戦出来てるのか不思議なレベルで階層の分断が進んでるな。
ウクライナ上層部は兵士達を把握せずに適当な作戦ばかり立てるし、民間はもう政府を信頼してないのか、単に御都合主義なのか知らんが兵役から逃げるし、国中をどうしようにもない御都合主義が覆っているんじゃないのか?
>>成熟度が試されるテストにウクライナ社会は落第したのだ。
このウクライナの軍曹さんには悪いけどそのテストに合格できる西側の国なんてアメリカとイスラエルくらいじゃない?
で、そのアメリカも現代じゃあ、損害がデカくなりいよいよとなればあっさり撤退の判断を下す国になったわけでさ
国が滅びようと最後まで戦うと国民1人1人が実際の行動で示す国なんてないわな
西側兵器やNATO式戦術で事態を打開だ!ってやってた時から思ってたけど、ウクライナって西側社会に幻想を持ちすぎじゃないか?
和平と融和を訴えて当選した大統領が最もかけ離れた存在になり果て、野党を禁止し選挙も国民投票すらしないのに民主主義を守れとか正気とは思えませんね。
人いないし動員するしかないよね どうしようもない
ここらへんプゾゥトフの記事とは正反対ではあるな
負けてるっていう端的な問題に対して解決策は政治レベルにしかないのに、問題を履き違えて司令官の人選で揉めてるのが滑稽に見える
現実を受け入れられてないのは敗戦責任に直面したくない政府と軍だと思うけどね
一般国民はもうこれが勝てない国家総力戦でこのまま続ければ最後の一人が死ぬまで終らないことに気付いてるよ
国家総力戦と呼ぶには、国外に逃げた人間が多すぎる気がします。
何百万人ものウクライナ人が戦火を逃れて他国で生きている中で、「最後の一人」は定義すらできない。今のままだと総力戦になど永遠になれないまま、国家の空中分解に至るのではと。
トランプに過度な期待はしてないがバイデンの始めた戦争、東欧のゴタゴタにアメリカが関わる理由がないとトランプが匙投げたらロシアと仲介しようとする国、政治家は残ってるのだろうか?
マクロンは仏国内でそれどころじゃない、シュルツはおそらく2月に退場、その後もドイツは政治・経済が不安定なのは続くだろう
中国は請われたら動くかもだけど昨年に欧州委員が口出すなとキレた、けれども欧州委員は威勢の良いこと言ってるだけでプーチンとやり会える政治感は居ない、インドはロシアから安くエネルギー資源買えるから口挟む理由がない
政治の外でもローマ教皇の発言にゼレンスキーがキレてるし、オリンピック休戦とかもウクライナは反発するだろう
中国も国内の不況深刻化とアメリカとの対立再燃でそんな余裕は…。
>国際社会にウクライナの民主主義を守って欲しいなら、まずはウクライナ人自身が民主主義を守らなければならない。
敵は本能寺にあり?
プリゴジン「それをやるなら自家用機の点検はしっかりとな」
動員の話はよく出ていますが前線でまとまった人数を動かせる下士官は足りているのでしょうか。
ここまで負け戦が続くと経験を積んだ兵士がほとんどいなくなっているような気がします。
これまでも質の低い士官の話はでてるのに、教練で容易にはカバーできない
途中送信失礼
カバーできない士官の話は確かにあまり議論されてないように思われますね。兵士の愚痴レベルでは聞くのですが。
それこそウクライナ的モジュール旅団システムなら下士官の力がより重要になってくるでしょうに。
自国民の動員はしたくないのに停戦監視に20万人派兵しろと西側に要求するゼレンスキーに説得力はないな
戒厳令下で選挙の事を考えなくて良いのに選挙間近が如く振る舞う政治家に国民、か。
今さらだけどさ、どの道ゼレンスキー大統領は戦争が終わり次第戦争指導の責任を取って云々になるんだし大統領に与えられた権利を振るっちゃって良いんじゃない?
上でも語られていたけど我が国だって物価高で大変だ、給料を上げろっていいながら生産者には価格を据え置けって負担を強要するような意見を平気で言えるような人が多いんだし。西側も良い所ばかりじゃないよ。むしろ戦時みたいな非常事態こそ東側の方が「やれ」「はい」で済んで楽だと思う。
「戦いに参加したくはないがロシアにも譲歩したくない」「国民を戦場に送る前に政治家が先に行け」「あれもダメこれもダメ」と言っていては何も問題が解決しないと訴えており、政府は決断できない社会の雰囲気に流されず「行動を起こせ」と言っているのだ。
本邦でも絶対同じような事言われるんよな
災害はすぐ復旧復興しろ増税許さん公務員がやれetc
「先に政治家の給料を下げろ」「公務員は最低賃金で働かせろ」(そんなことしても大した余剰は出ないんだけど…)
「台湾有事になったら国に従順でない人間から徴発して前線へ送れ」(中国と戦うのは民族的沽券に関わる名誉じゃないんかい!)
別にウクライナに限らないと思うんですよね、単に人間なんてそんな物というか そして劣勢だからそういう方向になってしまうだけで、優勢な時はそんな話はしてないでしょう
あとは誰が現実をみて本当に重大な決断を下せるか、あるいは最後までいかなければ止まることができないか しかしまぁ我が国の太平洋戦争見てもそうですが、人間なんて本当どうしようもないですね とは言えそれこそが地であり本質でもあると思うのですが
よくわかります。
税金の徴収の仕事をしていたのですが「延滞金払ってるんだから遅れたって良いだろ」とか普通に言われますし。いや私の時給1300円に郵便代紙代印刷代パソコンの電気代etcで余裕で赤字ですっていう
そして鳥インフルが起きれば事務方だろうが1年目の新人だろうがまとめて殺処分に送り込まれ、陰謀論者に食糧難を煽っているとかワケわかんないこと言われるんです。