「邪魔で仕方ない」金型を自腹保管 日本で横行、下請けは泣き寝入り
あなたの自宅に他人の私物で埋め尽くされたスペースがあるだろうか? それらは捨てられず、いつでも使えるよう管理しなければならない。しかも何十年にもわたり、無償で。信じられないような話だが、そんな慣行が日本の製造業でまかり通っている。
多くの下請けが連なるものづくり産業で、不適切な取引慣行が横行しています。実態に迫ります。
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金属塊100個山積み
「うちの所有物なんて一個もない」
2024年夏、国内屈指の産業集積地として知られる愛知県。自動車用プラスチック部品メーカー常務の都築孝弘さんは、作業場の一角を見やり苦笑した。
視線の先には山積みの金属塊。大きいもので1辺1メートル超、重さは20トンに及ぶ。ざっと100個はある。
いずれも部品の製作に使う「金型」だ。部品の形状に沿って作られた金属の型に液状の樹脂などを流し込み、固めて成形する。
量産が終わっても修理などで部品が必要な場合がある。注文があればすぐに作れるよう、所有権の有無に関わらず下請けが保管するケースがほとんどだ。
都築さんの会社にあるのも所有権のない金型ばかり。どれも長年にわたって使用実績がなく「休眠状態」だという。当然、管理担当者の人件費や、保管場所を借りればその借地代などがかかるが、「うちのスペースを取引先の金型置き場として提供している。それも無償で」(都築さん)。
受注側が発注側の求めに応じるなどして金型を保管・管理する場合、それらの費用は発注側が負担するよう下請け法は求めている。
法令違反も疑われるが、都築さんは「取引先から『保管料を支払う』と言われたためしがない。こちらから正確に計算して請求したこともない」という。
費用負担「受注側」9割
中小企業庁と公正取引委員会が19年、受注側約3万社と発注側約2700社を対象に実施した「金型に係る取引の調査」によると、量産終了後の金型の保管・管理費用の負担者について、回答した3344社のうち89%が「受注側」だとした。
その理由(回答2932社、複数回答)は、「取引慣行のため」が61・2%で最も多く、「契約書等書面で明確になっているため」は4・4%。多くの取引で明確な取り決めもなく下請けが費用を負担している実態が浮かぶ。
費用負担について「相談があれば協議する」という発注側は少なくない。だが、必ずしも交渉が成立し、受注側が望む通りに負担してもらえるとは限らない。発注側からすれば、話がこじれるようなら他の下請けに切り替えれば済むためだ。こうした取引上の立場の優劣が根底にある。
実際、取引先の金型を計3000個以上保管している横浜市のプラスチック部品メーカーでは、保管料を負担してくれる取引先は1社だけ。それも年間たったの4…
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