15−8
「あ〜…あのさ、ちょっといい?」
その時ふらっと戻って来ていた美中年なライスさん、我々の微妙な空気を感じ取って謝罪して、「これを見て貰えるか?」と勇者様に槍を出す。
——あっ、槍!あったんだ!
と、体中が熱い最中(さなか)に冷静に反応し、わ〜、良かったですねぇ!!と。
ごく普通に内心で祝辞を述べる。
大きさはこれまで使っていたのと同じ位か少し長くて、前の世界の偃月刀な部類に見えた。
土ぼこりを被りまくって輝く部分は見えないが、しっかりした造りの上に、そこはかとなく漂っている“もの凄い”存在感。ちょっと平伏したくなるのを頑張って耐えてると、おもむろにソレに伸ばされた長く綺麗な指先が、様子を伺う皆の前で思い切り弾かれた。
「…っ」
痛みを耐えるイケメン顔が、弾いたソレを見定めて。
「クライス!?」
「大丈夫でござるか!?」
と。
思い遣る仲間の声に、大丈夫だ、と静かに返す。
「娑羅流々花(さらるるか)と言うらしい。どうやらそれは…神器、のようだ」
何故か“神器”の一言で沈(チーン)…な空気になった彼等に。
「すっ『シャラルルカじゃ!その呼び名は好かん!!』…ご、い」
(じゃないですか…!)
とか。
感動のまま讃えようとした私の言葉を遮って、急に槍から雄叫びが。
いや、思わず雄叫び表記はしたが、まぁ、可愛らしい女性の声で。
次には槍がほのかに光り、その“精”らしく、うすぼんやりしたこれまた綺麗なお姫様とか、にゅっと顕現してみたり。
『気安く妾に触るでないわ!!』
キッと睨んだ彼女の先には、虚を衝かれた勇者様。
ライスさんは槍を握って「ガーン…(゜゜;)」な顔で硬直したが、慌てて地面に置こうとしたら『置くでない!!』と叱られる。
——……さすが…さすが神器級…。例え相手が“勇者”でも、容赦ない拒絶っぷりです……。
すごい。
すごいよ、ライスさん。
この時代、神器持ちとか、殆ど類を見ないのですが…。
気性の荒さがハッキリ分かる初っ端からのこの態度。どこをどうして気に入られたのか想像もつかないけれど。
——あぁ、これは名が残る…!
と、思わずじりっと後ずさったら、心底切ない顔をして目敏くこちらに視線を寄越す。その横で勇者様は「すまない」と槍に詫び、少し溜飲を下げたらしい槍の精のお姫様。
『このような陰気な場所は好かぬ!』
と叫び。
『早う日の下(ひのもと)に連れてゆかぬか!』
と、言うだけ言って姿を消した。
「「「「「「………」」」」」」
そして再び沈(チーン)な空気がどんよりと漂って、一人、二人と視線を交わせば。
「…戻るか」
と、勇者様がお疲れモードで呟いた。