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勇者の嫁になりたくて ( ̄∇ ̄*)ゞ  作者: 千海
15 アーリアナ大空洞
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15−4



 そしてお約束トラップである落とし穴を避けながら、地図に無い岐路とかを次々と進んで行って、私は脳内マッピング&死者の記録を埋めて行く。

 ボクって意外と使えるでしょ〜?な緩い口調の彼を褒め上げ、つい上がったテンションでうっかり「契約して良かったです!」とか口をついてみたのなら、更に気を良くした彼は「キャラッキャラッ、ク〜☆」と全身をバラ色に染め上げた。

 ピンクの彼も、まぁ、見ようによっては可愛い…ですね?

 と。

 死霊のくせに喜び方とかやけに可愛く出来てるなぁ、と遠い目をしながら思っていたが。

 そこは一応ダンジョンだから、と気を引き締めて行く事に。

 さすがに洞窟の入り口近くはまだまだ緊張感があり、エンカウントするモンスターも弱めな方なので、イグニスさんの反応も無かったが。

 少しずつ奥へと進んで行くと、ポツリ、ポツリ、と浮上する。


「ここは六年前だね〜」


 相変わらず気が抜けた風に教えてくれるその人の、指定する場所を見定める。

 さすがに六年経ってしまうと、アイテム類は残っていない。

 主線に近い場所でもあるし、後に来た冒険者な人にでも拾われてしまったのかもしれないな、と。

 勇者様等の足跡もぱっと見、見当たらないために、そんな結論に行き当たる。


「こんな危ない洞窟ですし、アイテムが落ちていたなら一応拾って行きますよね」


 と。雰囲気にうんうん頷くと、私はそっと合掌をして先の道を求め行く。

 始めは不思議そうにしてこの行動を見ていた彼は、何回目かで納得し、君は名を知らぬ死者にでも敬意を払ってくれるんだね、と比較的真面目な口調で言った。

 いやいや、これは前の世界で、一般的にそういう意味もありますけれど…祟らず成仏してください!なお願い調子もあるんですよ、と。

 イグニスさんがコレなのでうっかり忘れちゃいそうですが、なにせ私はお化けとか、大人になっても怖いですから!(;へ:)

 そんな内心の訂正を上手く言えなさそうだったので、お得意の曖昧な受け答えとかでその場の返事を誤摩化した。




「ここは三年前かな〜♪」


 おっ、今までで一番近い、と彼が言う場所を臨んだら。

 武器やアイテムの類いのものは落ちては無かったんだけど、何か黒い煤っぽいのが細長く積もってあった。


——うーん。ちょっとこれって剣の名残っぽいですねぇ。


 一応、まさか人の骨とかじゃないですよね?と、煤の成分を聞いてみる。

 すぐに。


「違うよ☆」


 と返って来たので安心しながら手に取ると、高性能マスク様はいろいろ無茶をすっ飛ばし、その“もの”らしい香りというのを私の鼻に届けてくれた。

 やっぱり何か金属っぽいと独特の臭いを思っていると、意味不明成分を皮膚に付けたり嗅ぐんじゃない!!と誰かに言われた気がしてしまい、すぐに手を清めたり。そうです!私は小心者で慎重派なのです!と、何処の誰とも知らない何かに心で釈明していると、イグニスさんは常の調子でふわ〜と先に行っていて。あっ、待って下さい!と小走りで後を追う。




「ここは八年前だね〜」


 そんな場所では欠片を見つけ。


「…戦闘中に壊れたにしては、何だか変な切り口ですね。引き千切られたというよりは、まるでじわじわ風化したように見えますが」


 そうして腕輪の欠片とおぼしき、変色した土台を拾う。


——八年…八年…うーん、そのくらい経ってしまうと、この程度の風化はアリですかねぇ。


 一応、誰かの遺品になるかもしれないから、と。

 綺麗めな布袋を引っ張り出して、中に仕舞うと鞄にイン。

 勇者様らの足跡は、出回っている内部地図に割と忠実だったので。

 次はこっちと岐路を進んで、深度もそこそこ増した頃。


「ここは五年」


「ここは六年」


「ここは三年」


「ここは七年」


 いくつかの人の死に場所を次々と拾って行って。

 ついに聞こえた「二年」の声に、最寄りだ!と期待が膨らんだ。


「あっ、ここはアイテム類が手つかずのままですね!」


 最深部に近い事もあり、少しこじれた場所であるので、もしかしたら道を間違え死んでしまったとかかもな、と。

 しばし気の毒に思うけれども、そっとその人の遺品に触れる。

 アイテム袋とおぼしきものは、触れた所で砂と化し。中から聖獣のデザインのカメオっぽいのが転がり落ちた。

 金属製の腕輪とおぼしき離れた場所の装備品は、拾い上げると手の中でポロポロと崩壊し。仕方ない…と、洞窟の壁に刺さったままの刀剣を見て、見た目もそれほど変化が無いし、そのまま普通に持てそうだな、と柄の所をグッと掴んで手前に引こうとしたのだが。


「わっ」


 瞬間、パキリと刀身が折れ、私はその場によろめいた。


——あー…勿体ない…。


 大事な遺品でしたのに…と、何とか踏ん張りその場に立つと。何となく。何となくだが、割と手前で折れてしまった刀身部分に指を寄せ、腹の部分をホコリ取りっぽく無言でツウと撫でたのだ。

 金属製とおぼしき剣は、まだ充分に光を放ち、たった二年の侵食だぜ?と見た目は語っていたのだが。指に押された表面部分は、時間が経ったペンキみたいに、簡単にヒビが入ってパリパリと崩れていった。

 そのまま剣の断面を見て、もう一度、同じ金属製っぽい壊れてしまった腕輪を見遣る。

 更に、袋だったものから転がり落ちたカメオの裏をひっくり返し、そういえばこういうのって鋼の素材は珍しい…と。過去、社会見学を兼ねたらいいと誘われて見た宝飾の数々に、そもそも暗い色の素材は使われてなかったような……な、そんな心地になってくる。


——あぁ。変色したのか。


 と、暢気にも考えて。


——まぁ、ただの変色…と言うよりは、腐食って感じですけどね。


 と。

 何気なく再確認した剣の断面部分を見遣り。


——ん?腐食?腐食って……。


 次の瞬間サアッと降りた私の血の気を追いかけて、両腕に鳥肌が走っていくと。

 ゾワッとした強い悪寒が、私の肩を抱きしめたのだ———。

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