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14−2



 忘れられた街道を行き、無事にティンブルという名の街に着いた彼らは、最後まで何があるか分からないからと依頼主(イシュ)を共に連れ立った。幸い…というよりは、互いの予定も合ったのだ。イシュがウィーリーズで預かった曰く付きのお荷物は、どうやらこちらの領主様へのお届けものだったらしい。

 隣に並ぶ領地の手前、表向きは仲良くしたいが、本心はしたくない…という妙な事情でもあるのかな?と邪推してしまったが。わざわざ闇市場から高額そうなモンスターをかき集めてきたくせに、結局それも叶わなかったウィーリーズの領主サイドに、イシュに目を付けられたなら逃れられない運命です、と内心で合掌し。

 やはり、やってきたお迎えさんに連れられて行く彼等を見遣り、一人ぽつんと残されるのって、ちょっぴり寂しいですよねぇ、と。久しぶりに哀愁が身にしみた。

 その夜、イシュから連絡があり、依頼は無事に達成したよ、ついでに僕も夕食に呼ばれる事になったんだ、と。微妙によそ行きモードな語りに僅かに疑問を覚えつつ、次の日の朝には街を出る予定みたいだ、な勇者パーティの情報を横流しして貰う。

 そして翌日、大体いつも彼等が出発する頃に、街の東の門へとやってきて。


 そこでまさかのイシュの姿に、呆気に取られて気が抜けた。


 途中、うっかり勇者様にぶつかってしまったり、そのせいで変な感じに気を使う羽目になったり、と心で涙したのだが。そんなこちらを酌んでくれたのか、今日は徒歩で荷馬車を引いてる幼なじみが言い掛けた。


「ここから聖地(メガリス)までならさ、お昼頃には着けるかなって思うんだけど」

「そうですねぇ…私達の歩幅に合わせて頂くと、お昼は少々過ぎてしまうかと思います」

「特に仕事も入ってないし、ゆっくりでいいと思うよ。聖地巡礼って言葉の響きがいいよねぇ。オレ達は種族的には関係ないけど、エルフの聖地ってどんなものなのか興味があるし、もし何かにあやかれるならあやかりたいなぁ」


 のほほんと加わってきたライスさんと微笑みあって、それは確かにそうですねぇ、と。ちょっと緩んだ空気の合間に当のソロル氏が声を出す。


「あのさ、エルフの聖地って言ってもさ、大した事とか無いと思うよ。確かに森を出る時に、もし近くを通ったならって変な石を持たされたけど。同じように里を出た他のエルフ達とかも似たような事やらされてるなら…変な小石だらけの聖地って、想像しただけで気持ち悪い」


——うわぁ、なんて罰当たりな事言いよっと!?


 この子ほんとに聖職者かよ!?な大概な発言に、思わずそちらに目を向けて、「なに?何か文句ある?」な言葉を付けた表情に「いや、文句ってほどじゃないけどさ」と、アイコンタクトな会話を交わし。

 結局、その後も他愛ない会話を続けたり、続けなかったりしてみたり、と。割と緩んだ雰囲気で聖地に向かって行ったのだ。

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