直秀(毎熊克哉)らが町辻で披露し、まひろ(吉高由里子)や藤原道長(柄本佑)らが通って見ている「散楽(さんがく)」は、平安時代の芸能の一つです。大河ドラマ「光る君へ」で芸能考証を担当する友吉鶴心さんに、「散楽」について伺いました。
――散楽とはどのようなものなのでしょうか?
散楽とは中国から伝わった滑稽(こっけい)なものまね、軽業、曲芸などの多種多様な芸の総称で、百戯(ひゃくぎ)、雑技ともいわれています。正倉院に散楽が描かれた絵図が納められているのですが、それをじっくりと時間をかけて見て、どのような動きをしているのか、その動きによってどのようなリズムが生まれるのかを考え、今回は「光る君へ」オリジナルの芸能を作らせていただきました。私は「困ったときは正倉院」とよく言っているのですが、日本の文化に関しては、正倉院を丹念に調べれば、わからないことはまずありません。
――どのように動きを付けていかれたのでしょうか?
ドラマにおいてバク宙をしている座員もいましたが、正倉院に残る絵図でも、さまざまなアクロバットを行っている様子が描かれています。今回の散楽は、3拍子を基本にして作り上げました。3拍子にすると、「右足と右手、左足と左手が同時に出る」というナンバの動きが非常にしやすいんですね。能や日本舞踊では、「右足が出て左手が出る、左足が出て右手が出る」という二足歩行による動きをしますが、ひと世代前の動きにすると、3拍子であるほうがとても動きやすいんです。
――ドラマでは貴族に対する風刺劇となっていますが、実際の演目も風刺が多かったのでしょうか?
風刺的なものがあったかどうかについては、絵図からはわかりません。
――演奏に使われている主な楽器は、尺八と太鼓でしょうか?
そうですね。尺八については法隆寺に、伝説ではありますが聖徳太子がお吹きになったというものが残っており、これをベースにして作りました。昔は雅楽で使われる楽器の一つとして尺八も含まれていたのですが、あまりにも音が小さくて外れてしまいました。
――庶民が尺八を演奏している理由は、庶民でも容易に作ることができるからでしょうか?
竹や木に適当に穴を空けて、適当に吹いていたであろうと推察されます。
――貴族が演奏するような楽器は高価なので、やはり庶民では手に入らなかったのですね。
実は、お琴は庶民も弾いているんですよ。
――弾いているんですか?
高階貴子さんや源倫子さんがお弾きになったような立派なものではないのですが、弾いています。どうやって弾いているか? 木の板をたたいていたでしょう。
――木の板を楽器にしているとは驚きました。
庶民も楽器を演奏したいんです。でも、貴族が使うようなものは高価なので使えない。そこで、落ちている木の板を琴に見立てたり、木の棒を笏拍子に見立てたりと、身近にあるものを使っているんですね。散楽で使用した楽器は、当時のそのような考え方に沿って仕立てさせていただきました。