大河ドラマ「光る君へ」で紡がれるシーンをより鮮明に、より感情豊かにする劇伴。音楽を担当される冬野ユミさんに、劇伴制作の進め方や今回こだわった音楽録音の方法などについて伺いました。
――「光る君へ」で使用される劇伴の制作はどのように進められているのでしょうか。
脚本からのイメージと私の「光る君へ」に対するイメージを膨らませて、さまざまな楽曲を制作しています。チーフ演出の中島由貴さんとは長年のお付き合いがあり、あ・うんの呼吸と言いますか、どのような曲が必要だと思っているのかは、なんとなくわかります。ですが、大河ドラマはトータル150ほどの曲を作るので、大量の曲を作るために絶えずどこかにアイデアは転がってないかなと考えている感じです。
単発ドラマやラジオドラマであればシーンに当て書きをして作ることもありますが、連続ドラマの場合は大量に楽曲を用意し、その中から出来上がった映像に対して当てていくことになります。意外なシーンに意外な楽曲がぴったりとハマったりするのが、おもしろいんですよね。いろいろと試行錯誤をしながらチャレンジもし、「これ、大河ドラマで使う場面あるかな?(笑)」と思うような楽曲もたくさん作っています。
――今回の劇伴の制作においてこだわっていることを教えてください。
ピアニストの反田恭平さんとN響のみなさまにはメインテーマのほかに劇伴2曲の演奏にも参加していただいたので、この2曲にも注目していただきたいのですが、今回の劇伴制作での目玉の一つは、ベルリンのキリスト教会で録音してきたことです。チェンバロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、ヴィオラ・ダモーレといったヨーロッパの古楽器と、平安時代に奏でられていた日本の笙(しょう)を持ち込んで10曲ほどを録音しました。笙に関しては、国際的に活躍されている笙奏者の宮田まゆみさんに、ベルリンへ来ていただいたんです。宮田さんは海外でもたくさん演奏されていますが、ドラマの劇伴に参加されるのは珍しいそうで、この録音を楽しんでくださいました。ドイツの演奏家の方々も、日本の笙とコラボするのは初めてだったようで、すごくエキサイトしてくださいました。ドラマの中に贅沢(ぜいたく)に楽曲がちりばめられると思いますので、ぜひ注目していただきたいです。
――なぜベルリンの教会で録音することにしたのでしょうか。
知り合いの音響を専門とする方から、ベルリンの教会で音楽の録音ができることを伺っていて、「すごく響きの良いスポットだから、そこで録音してみるのもおもしろいですよ」と以前からオススメされていたんです。それで今回、せっかくの機会なのでぜひこのベルリンキリスト教会で録音したいと思いました。それで、以前にもお世話になったことのあるベルリンのエンジニアの方に連絡しました。
――劇伴のタイトルはどのように決めているのでしょうか。
いつも、曲の持つイメージでタイトルをつけています。ドラマの内容には関係ないタイトルが多いのですが、「光る君へ」では“月”をテーマにしたタイトルを意識しました。平安時代は、人々が月の光を見て何かを感じたり、陰陽師が月の満ち欠けなどを見て吉兆を占ったりと、物事が“月”によって左右されていたというイメージが私の中にはあるんですね。なので今回の劇伴には、「Crescent Moon」や「Blood Moon」、「Moon Sleep」など、月のついたタイトルを多く付けています。
――大石静さんの脚本を読まれた感想を教えてください。
すごくおもしろくて、すぐに次が読みたくなりますね。そして相当攻めてる。とてもテンポのいいワクワクする脚本なので、しっとりした楽曲だけではなくテンポ感のある楽曲もハマると思いました。「これって劇伴として使えるのかな…」と思いながら作っているバラエティーに富んだ楽曲も、この脚本であれば深い懐で受け止めていただけるのではないかという気がしています。大石さんの脚本を拝見して、さらに思う存分に劇伴を作らせていただこうと意欲が増しています。行き着くところまで、着いて行きます!