大河ドラマ「光る君へ」

躍動せよ!平安の女たち男たち! 創造と想像の翼をはためかせた女性 紫式部

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音楽 冬野ユミさん ~まひろの人生が花開く“ピアノ協奏曲”

美しいピアノの旋律やハープの調べが印象的な大河ドラマ「光る君へ」のメインテーマ。優雅さだけでなく激しさも併せ持ち、主人公・まひろ(紫式部)が歩む人生の紆余曲折(うよきょくせつ)を表しているかのようです。音楽を担当される冬野ユミさんに、メインテーマに込めた思いなどを伺いました。

――「光る君へ」の音楽制作のオファーを受けたときのお気持ちをお聞かせください。

「とうとう私、ここまで来られたんだ」と思いました。とても光栄なことです。劇伴作家として、大河ドラマの音楽を担当させていただけることは目標の一つだと思いますし、「もう思い残すことはない(笑)」というくらいの気持ちです。

――メインテーマの制作は、どのような構想で行われたのでしょうか。

主人公が紫式部だとお聞きして、すぐにメインテーマは「ピアノ協奏曲」にしようと決めました。紫式部の激動の人生や、平安時代が持つ雅(みやび)さ、華やかさ、耽美(たんび)さ、セクシーさなどを最も表現できるのが「ピアノ協奏曲」だと思ったんです。
まずは口ずさめるようなメロディーを意識しながら、2か月くらいをかけて3曲のデモ音源を制作しました。それをスタッフのみなさんに聴いていただいたのですが、A曲のこの部分がいいとか、自分はB曲のこちらのほうが好みだとか、本当にみなさんの意見がさまざまで(苦笑)。正解がないので、どのように取捨選択をして2分半ほどの短い時間内に凝縮し、メインテーマにふさわしい一曲にまとめ上げていくのかはとても悩みました。

――メインテーマはゆったりと始まり激しく終わりますね。

曲の始まりは華やかにしたい、という思いが強くありました。私の中で「平安時代=きらびやか」という印象があり、イントロの部分は金箔(きんぱく)がひらひらとスローモーションで舞い落ちる様子をイメージして作っています。まひろの人生が花開いていくような優雅さと、まひろを演じる吉高由里子さんの華やかさも重ね合わせて、表現しています。制作統括の内田ゆきさんからの「ボッティチェリの絵画、プリマヴェーラのような」というキーワードもこのイントロのイメージにつながっています。
最後はトリッキーにハーモニーを重ねて、ピアノの黒鍵のグリッサンドで終わらせていますが、これには「このドラマは攻めていますよ」というメッセージを込めています。「光る君へ」では、これまで大河ドラマではあまり映像化されてこなかった時代が描かれますし、美しく終わらせるよりも攻めている感じを強調したいと思ったんです。

――ピアノ演奏には反田恭平さんが参加されていますが、どのような経緯で実現したのでしょうか。

メインテーマは「ピアノ協奏曲」にしたいと思ったのと同時に、ピアノ演奏は絶対に反田恭平さんにお願いしたいと強く思いました。反田さんのピアノ演奏は以前から聴いていて、技巧だけではなく、自分の音をお持ちのすばらしいピアニストだと感銘を受けていました。実は私、反田さんのファンなんです。
それで、私が制作した曲のピアノ演奏をお願いするならばこの機会を置いてほかにはないと思い、「私がいかに反田さんのファンで、あなたの音をすばらしいと思っているか」という熱い長文のメッセージを反田さんのマネージャーさんに送らせていただきました。打ち合わせのときに「暑苦しかったと思いますが、私の思いは伝わりましたか?」と伺ったら、クールにフフっと笑ってくださいました(笑)。とてもお忙しいスケジュールの中、反田さんにピアノ演奏をお願いできると決まったときは、本当にうれしかったです。「これは、なまはんかな譜面は書けないぞ…!」と思い、超気合いの入った譜面を書きました! 少し気合いが入りすぎてしまったかもしれませんが(笑)。反田さんが奏でてくださったことで、より雅で、より華やかで、より耽美で、よりセクシーな曲に仕上がったと思います。

――今回のメインテーマでは美しいハープの調べも印象的ですが、ハープへの思いもお聞かせください。

平安時代の雅さ、華やかさ、耽美さ、セクシーさを表現する楽器としてハープも取り入れたいと思い、ピアノ演奏の反田さんと同様に、私がずっと憧れを抱いていたハーピストの朝川朋之さんに「今だ!」と思ってお願いをさせていただきました。朝川さんが奏でられるハープの音色は、とても独特なんですよ。現代ではとても珍しい弦をハープに張っておられることに加えて、弦を弾くタッチが本当にすばらしいんですね。あれほど粒立ちの良いハープの音を奏でられる奏者は、なかなかいません。
朝川さんにメインテーマのデモ音源をお送りした際には、「平安の絵巻物がダーっと広がっていくような色彩を感じますね。この世界観にハープはとても合いそう」とお返事をいただきました。ハープは、ポンポンポンと弦を弾いて奏でる音だけではなく、指を滑らせて弦をなでるように奏でるグリッサンドの音もとても大切です。ハープのパートに関しては、朝川さんと何度もやりとりをし、アイデアをたくさんいただきました。曲の後半にはピアノとハープとの掛け合いのようなパートもありますが、反田さんと朝川さんによって平安絵巻の世界がより色鮮やかに表現されたと思います。
演奏後に朝川さんから「ハープとピアノのすごく良いコラボレーションができたので、このメインテーマを聴いたら日本中のハーピストが喜ぶと思います」と声をかけていただき、とてもうれしかったです。

――完成したメインテーマを聞いたときの感想を教えてください。

すばらしい音楽家のみなさまに演奏していただいて、自分の作曲した曲が形になったんだという感激が押し寄せました。ただ、聴けば聴くほど「あそこはこうすればよかった…」とか、「このアレンジにすればもっと良かったかな…」とか、まだまだ手を加えたいと思う箇所が出てきてしまって…。自分でも「しつこいな」と思いますし、一緒に仕事をしている方々からは「くどいね」とよく言われるんですけれど(笑)。これはもう私の性分なので、しかたがないですね。「光る君へ」の放送のたびに毎回流れて視聴者のみなさまのもとへ届くメインテーマを制作することができて、率直にうれしかったです。
   

 

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