朝廷内では位階によって着用できる服の色が定められており、平安時代の貴族たちはその規則に従った正装で働いていました。大河ドラマ「光る君へ」で風俗考証を担当する佐多芳彦さんに、このきまり「禁色(きんじき)」について伺いました。
――禁色について教えてください。
禁色には定義が2つあり、一つは臣下が身につけてはならない色、もう一つは自分の位階よりも上位の色になります。朝廷では位階によって貴族の序列が示されていて、束帯(そくたい)という正装の上着(袍[ほう])に使用できる色が決まっています。誰が見てもその人の位階がわかるように、上着が色分けされているんですね。「光る君へ」では、四位(しい)以上が「黒」、五位(ごい)が「赤」、六位(ろくい)と七位(しちい)が「緑」という平安時代中期の実情を再現しています。
――公卿(※注1)でなくとも四位以上であれば「黒」なのですか?
それは時代によりますが、柄本佑さんが演じられる藤原道長が活躍したころに限れば、四位以上はすべて「黒」になります。
【注1】公卿(くぎょう) … 三位(さんみ)以上の高い位階を有する上流貴族。四位の参議も含む。
――上位が「黒」でなく、「紫」の時代もあったと聞きますが。
奈良時代くらいは「黒」ではなく「紫」でした。しかし、貴族の着ていた絹を「紫」に染めるのは非常に難しく、作るのに多くの時間と経費がかかってしまうので、「光る君へ」で描かれる平安時代の中期には公卿の上着の色は「黒」に変わっていました。
――絹を「紫」に染めるのは難しかったのですね。
木綿や麻であれば簡単に「紫」に染めることができるのですが、絹はなかなかキレイに染まらないんですね。当初は、染めるのが難しい色なので高い位階の人が着るのにふさわしいという特権性が好まれましたが、奈良時代に朝廷が疲弊してしまい、役人たちに服を支給することが困難になってしまったようなんです。それで平安時代になると、役人の服は自前になり、「紫」に染め上げたものに「薄い黒」をかけて色を補うなどの手法が取られるようになったのですが、大変なので、絹との相性が良く染めやすい「黒」に変わっていきました。
――臣下が身につけてはならない色とは、どのような色でしょうか?
天皇の晴(はれ)の儀式の袍色である「黄櫨染(こうろぜん)」をはじめ、天皇の袍色である「青色(あおいろ)」、東宮(皇太子)の袍色である「黄丹(おうに)」、上皇の袍色である「赤」で五位が許されている色とは異なるものなど数色があります。当時の人々は色彩感覚がとても豊かで、現代を生きる私たちは「赤」「青」「緑」「紫」というように一括(ひとくく)りにしてしまいがちですが、もっと繊細に分類されているんですね。ちなみに、天皇の許可があれば、禁色であっても朝廷内で身に着けることができるようになります。