映画監督・中島哲也より。

SNSとは今まで無縁でしたが、今回決意を固め、自身のコメントを発表する手段として、初めてnoteを開設しました。

まず最初に2013年『渇き。』の撮影時、我々と俳優・A子さんの間で起こったこと、その報道が2022年5月週刊誌によりなされた際、私が記者からの取材に答えずその記事が出た後も何のコメントも出さなかった件に関して・・・
そもそも私は声高に自身のことを語るのは不得意であり、さらに自身への非難や誹謗中傷にまるで無頓着で、何かを発言しそれに対して様々な反論が巻き起こって・・・という状態が長く続くくらいなら、私が一方的に責められそれで終りにしたいという、今から考えれば浅はかで呆れるほど甘く身勝手な考えによるものでした。誠に申し訳ありません。

 今回、多くの人々の協力と支援で7年振りに新作映画を作ることが出来、しかしながら週刊誌の報道に対し当事者の1人である私が何の発言も謝罪もしないまま映画を公開しようとしていることへの多くの方々からの厳しい批判に接し、また私1人が責められるならまだしも全力で今回の映画作りに参加していただいたスタッフキャストにまで人々の不信感が飛び火し、多大な迷惑をおかけしていると知り、やはり当時の報道に対し正式に私自身が発言すべきであると決意するに至りました。
以下の文は週刊誌の報道、及びA子さんのnoteに対しての当時の私の正直な事実認識であり、長くなりますが最後まで読んでいただければ幸いです。

 この件の当事者である俳優・A子さんが、問題となったシーンの撮影に際しバストトップが露出するヌードはNGで、そのことは事前に所属事務所を通じてプロデューサーに伝えていたということに関して・・・
私は、その事実を撮影当日まで知りませんでした。そもそもこの役のキャストを探す際に、バストトップも含むフルヌードでの撮影になることはプロデューサー、キャスティング担当者に伝えていましたし、それが可能な人のみオーディションに参加するよう要請しました。この役のオーディションを受け、役に決定したA子さんが実はフルヌードNGであることを知らされたのは当日そのシーンの撮影直前で、A子さんがその撮影に多くの不安と不満を抱えていたことにも正直、気付いていませんでした。

とりあえずその日の撮影は中止し、プロデューサーとA子さんの話し合いに遅れて私も参加、その席で「編集時にA子さん本人にも参加してもらい不都合な部分をカットする」と私が提案(すでにA子さんで数シーン撮影済みであったためです。)して、A子さんにもそのことを納得してもらい、翌日そのシーンの撮影を行いました。にもかかわらず、私が1度も編集室にA子さんを呼ばず、彼女のチェックを受けないままスタッフや関係者用のゼロ号試写が行われたということですが・・・
私がA子さんを編集室に呼ばなかったのは事実です。1シーンといえど編集には長い時間がかかりますし却って迷惑をかけるかもしれないと思い、問題となったシーンのワーク編集を終えたテープをA子さんにチェックしてもらい意見を聞いて修正を行えば良いと考えました。今から思えば、ちゃんと編集室に来てもらった方が、このような行き違いはなかったのかもしれませんが。

そのシーンを編集したテープは制作プロダクションのプロデューサーからA子さんの事務所のマネージャーに送り、A子さん本人にチェックしてもらうようお願いしました。後日、A子さんから編集についてのレスポンスがあったとのプロデューサーの連絡を受け、私はいくつかのカットを短くしたり、カット自体を無くす、見えて欲しくない部分を合成 処理で消すなどの作業も行いました。それはもちろん、編集テープを見たA子さん本人からの指示だと思っていましたし、ゼロ号試写まで彼女がそのシーンの編集を見ていなかったというのは、週刊誌の記事で初めて知り、本当に驚きました。

その後、映画が完成し公開となる過程で、納得出来ない気持ちを抱えたA子さんが監督の私に直接会い、彼女の思いを伝え、また私からもこうなった経緯の説明を聞きたいと何度も要請したということも、私は何も聞かされていませんでしたし、さらに言えば報道で言われているような「監督の演出にイチ俳優が口を出すな」などという発言は、A子さんに限らず他の如何なる俳優さんに対しても断じてしたことはありません。

このように書き綴ると、『渇き。』という作品の監督であり、現場を正しく掌握し、スタッフキャストをリードすべきである者の発言としては余りに無責任ととられてしまうかもしれません。
そもそも私は監督としてキャストやスタッフと頻繁にコミュニケーションを取るタイプではありませんし、カメラ前で起こる出来事にのみ集中し、それ以外のことに細かく気を配るのは不得意です。「そんな人間が監督などするな」と言われればその通りですし、反論の余地はありません。さらに、俳優にとって多大なリスクを伴うこのようなシーンの撮影にあたり、事前に監督である私がA子さんと直接話し合う機会を持たなかったことがこのような事態を引き起こした大きな要因であると、私は認めざるを得ません。結果そのことがA子さんという1人の俳優を精神的にも肉体的にも深く傷つけ追いつめて、俳優という職業を棄てるという決断までさせてしまった・・・その罪は重く、私はその罪をこれからも背負い続けねばならないでしょう。A子さんに対し、深くお詫び申し上げます。

それならば今後、このような不幸な出来事を操り返さぬために、私にいったい何が出来るのか。今回の新作映画にもいくつか気を遣うべきシーンがあり、その撮影時プロデューサーとも話し合って、インティマシーコーディネーターに入ってもらいました。私が『渇き。』において遭遇した不幸な出来事の大きな原因は、監督である私と出演者A子さんの間に正常なコミュニケーションが成立していなかったこと、私とA子さんの間にあまりにも多くのスタッフがおり、結果、監督である私の意図はA子さんに正しく伝わらず、またA子さんが役を演じる上での不安や不都合が監督の私にまでダイレクトに届いてこなかったということでした。今思い出しても、とても情け無いことです。この問題は制作体制をなるべくシンプルなものに改善し、かつインティマシーコーディネーターに入ってもらい両者の立場を尊重し丁寧に伝え合うことで、完全とは言えぬまでも多くの部分が改善されたように思います。

撮影現場におけるキャストやスタッフの人権を守るためのシステム、その完成はまだ遠く、でも小さな努力を重ねることで少しずつ前に進んでいくより他に方法は無いと私は考えますし、その努力を続けようと思います。

最後に・・・
あらためまして今回完成した映画『時には懺悔を』に参加していただいた全スタッフ、キャスト、さらに今まで我々の映画を応援して下さった全ての方々に多大なご心配とご迷惑をおかけしましたことを深く深くお詫び申し上げます。


令和7年1月21日
映画監督・中島哲也

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