宇和島 閉校予定の小学校「みんなで校歌を歌おう」
- 2025年1月16日
愛媛県の宇和海のそばにある全校児童が3人の宇和島市内の小学校。ことし令和7年3月で、146年あまりの歴史に幕を下ろす。学校では、閉校になるまでにできるだけ多くの思い出を作ろうと、さまざまな記念イベントが企画されてきた。その1つが、冬休みに行われた「みんなで校歌を歌おう」というイベント。その様子をのぞいてみた。
(NHK松山放送局 宇和島支局 山下文子)
特集の内容はNHKプラスで配信中の1月10日(金)放送「ひめポン!」(総合 午後6時10分~)でご覧いただけます。
児童300人が3人に
1878年創立の宇和島市立結出小学校。昭和20年代から30年代には、全校児童が300人を超えていた。しかし、現在通っているのは3年生の宮本椿さん、4年生の菊地禅さん、そして6年生の中川羅以さんの3人だけだ。道徳や体育などの授業は3人一緒に受け、科目によっては先生と1対1のときもある。彼らの両親や祖父母など家族も同じ小学校の卒業生で、近所のおじちゃんやおばちゃんも、同じ学びやで育った。学校に残る資料をめくると、校舎は昭和54年に建て替えられたものの、体育館として使われている建物は、古い写真に写る当時の姿そのままだった。
「みんなで校歌を歌おう」
長年、地域と密着してきた小学校だけに、閉校が決まった去年、令和6年の6月には、教職員だけでなく地域の人たちからも「何か記念事業をしたい、思い出に残るイベントをやりたい」という声が上がった。そのなかで、昭和47年に作られた校歌を大勢の人たちと一緒に歌えないだろうかという話になり、思い出作りに「みんなで校歌を歌おう」と教職員や地域の人たちが卒業生たちに呼びかけた。学校の資料には、当時『研修の一部として職員各自が校歌を作り、それに基づき校歌を制定した』と記録されていて、地域の自然の美しさや子どもたちへの希望が歌詞に込められている。
学校中に響いた笑い声
迎えた当日、1月3日。学校に大勢の人がやってきた。卒業生などおよそ230人もの人が集まった。在校生の3人は「受付はこちらです」と案内役を務めた。
「何年ぶりやろね、元気やった?」「先生、私のこと覚えとる?」「お互い変わらんねー」とあちらこちらに笑顔があふれていた。
校舎の廊下には、かつての卒業生の懐かしい写真の数々が並べられていて、当時小学生だった自分たちの写真を見つけては、思い出話に花が咲いていた。海風は冷たかったけれど、澄み切った青空のもと、再会を喜び合う人たちの温かな気持ちが辺りにあふれていた。
学校中を巡って校歌を歌う
在校生3人と集まった人たちは、思い出が詰まった校舎のあちらこちらで何度も校歌を歌った。音楽室で図書室で、さらにはランチルームや体育館で。
ピアノの生演奏に合わせて大勢で歌う校歌には、圧倒されるものがあった。児童3人にとってこれだけの人数で歌うのは初めてのことで、心に深く刻まれたようだった。
3年宮本椿さん
「勇気が出て私も大きな声が出せた感じがしました」
4年菊地禅さん
「迫力とか耳に響いて楽しかったです」
6年中川羅以さん
「こんな大人数で歌えるのが初めてでうれしかったです」
卒業生たちも久しぶりに歌った校歌に心を動かされたようだった。歌うごとに、伸びやかでおおらかな歌声とともに、心地よさそうな笑みがこぼれていた。
「もう忘れてて歌えないかなと不安でしたが、意外と覚えているもんだなと思いました」
「久しぶりに聞いたらすっごいいい歌詞だなって思いました。『雨や嵐に打ち勝ちて』とか『心を磨き世に尽くす」とか、心新たにまた明日からかんばろうという気持ちになりました」
「当時は歌うのが嫌だなとか、めんどくさいなと思うこともありましたが、みんなでこうして覚えてて歌うというのはいいなと思いました」
「少人数の学校ならではの、いいところがたくさんあります。これからもちゃんと思い出として心の中に残しておきたいです」
取材後記
小学校の近所に住んでいるという女性は「本当にさみしくなる。いつも聞こえていたチャイムの音や何かのたびに聞こえていた校歌が私の日常だったので」と話してくれた。卒業した後も学校のある地元で暮らしていると、懐かしさとともに日々の暮らしが変わっていくさみしさも加わるのだろう。
閉校とともに、当時、何気なく歌っていた校歌が歌われなくなり、なくなってしまうように思うと、愛おしくなるのが私にも分かる。実家に帰ったときに、おいやめいが校歌を歌っていたことがある。そのときに、私も一緒に口ずさみながら、4番まである歌詞を全部覚えていたことに自分でも驚いた。そのくらい記憶に染みついているのが、校歌なのかもしれないと改めて感じたのである。
NHKプラス配信終了後は下の動画でご覧ください。
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