6.【ホームズの結婚】
「俺たちを殺そうとした奴等が店の前で嫌がらせをしているって何なんだ」
「まあ、私たちのことは始末済みだと思っていたようでしたから目的はリタですかね」
「リタを狙っている奴は多いぞ」
「まあ、私から見てもリタは美人ですからね、婚姻の話も少なからずありましたし」
「ホームズやゴーンを始末してまで、リタさんを手に入れようと執着している人に心当たりは?」
「まあ、グレー商会からリタを代官の妾にしないかという話をもらったことはありましたけどね」
「そうですか、お二人が不在の間のリタさんへのかかわり方からすると代官はリタさんを手に入れたい、グレー商会は代官の手先になってうまくやりたいってとこですかね」
「ホームズさん代官と争ってこの町で暮らすのってどうなんですか」
「それは、今までも多少の嫌がらせはありましたけども何とかなる範囲でしたので」
「何言ってんだよ、始末されそうになったんだぞ、こうなると権力を使って何をしてくるかわからないぞ」
「私、代官の妾になります。そうすれば命を狙われることもないし、兄さんも仕事がやりやすくなると思うの。」
「だめだ、絶対にダメだ。そんなんじゃリタは幸せになれない。幸せじゃないリタはリタじゃない。そうだホームズと三人で町を出て領都に行こう。しばらくは俺が冒険者で稼ぐ。その金をもとにしてホームズが店を開けばよい。そうすれば幸せに暮らせる。
「ゴーンさんありがとう、嬉しいけどそれはできないの」
「なんでだよ、俺リタを幸せにするためならいくらでも頑張れるぞ」
「兄さんは町を出られないのよ」
リタはホームズが町を出られない理由を話し出した。
ゴーンが町来るずっと前のことになるが、ホームズは幼馴染のアイリーンと将来を誓っていた。
アイリーンの両親は郊外に牧場を持っていて一人娘のアイリーンとホームズを結婚させて跡を継いでもらう予定にしていたのだ。
その日は冬に備えて牧草収穫の最盛期だったこともありホームズの家族も全員で手伝いに行っていたのだ。
広い牧草地だったので散り散りになって草刈りをしていたのだが、突然付近にいるはずのないゴブリンの集団が現れホームズたちを襲ってきた。
森に近いところで作業していた順にアイリーンの両親、ホームズの両親が殺され気づいたアイリーンがリタの手を引きながら町に近いところにいたホームズのほうに逃げてきた。
ホームズは二人をかばうように持っていた大鎌を武器にしてゴブリンに立ち向かった。
必死に大鎌を振りかざして何とかゴブリンを撃退した時にはリタをかばったアイリーンが大けがをしてしまったのだ。
農場を売却したお金を使って教会で治癒の魔法をかけてもらったが、全快することはなくアイリーンは失明してしまったのだ。
目が見えなくても結婚してほしいというホームズに対してアイリーンはかたくなに拒否してそのまま教会でシスターになってしまったのだ。
ホームズとリタはアイリーンの役に立とうとそれ以来ずっと協会に寄付を続けているのだ。
幸いにしてアイリーンは治療の影響か清拭の魔法が使えるようになり清掃や、けがの治療で教会に役立つためホームズの寄付があることもあり、それなりに大事にされているのだ。
なのでリタもホームズも町を出ることができないということだった。
「あのう、確認なのですがホームズとアイリーンさんは今でも愛し合っているのですよね」
「ああ、少なくとも私は愛しているしアイリーンもそうだと思う」
「あと、結婚への一番の障害はアイリーンさんの目が見えないということですよね」
「多分アイリーンはそれを気にしていると思う」
「結婚出来ればこの町を出るのに障害はないのですよね」
「ええ、この町に未練はありません」
「わかりました。ホームズすぐに必死になってアイリーンさんにプロポーズしてください。アイリーンさんの了承がもらえたら私の家に招待してプレゼントを差し上げますよ。結婚が決まってからじゃないとご招待はできませんけどね」
「ヨシトさん良いのですか助けてもらって」
「ええ、ホームズは私の命の恩人ですからね。でも結婚してくれないとメンバーになれないと思うのですよね」
「よかったなホームズ、というわけでリタおれと結婚してくれ。俺はお前を愛しているしお前だって俺のことは嫌じゃないだろ。それにホームズとアイリーンさんが結婚すればおれと結婚するのに障害はなくなるよな」
「兄さんにゴーン、何訳の分からないこと言ってるの、アイリーンは目が見えないから任さんに迷惑がかかるから結婚しないって言っているのよ。それにヨシトさんのプレゼントってこの人何も持ってないじゃない」
「ヨシトさん、ありがとう。私今からアイリーンのところへ行って何とか結婚の承諾をもらってきますね。もちろんヨシトさんのプレゼントについては何も言わずに結婚を勝ち取ってきます。」
「じゃあ、ゴーンも頑張ってリタさんに結婚の承諾をもらってください。プレゼントの話はなしで。」
しばらくするとホームズが3階の部屋に入っててきた綺麗な女の人と幸せそうに手をつないで。
「ヨシトさん、この人が私の大事なアイリーンだ」
「アイリーンさん初めまして、ホームズにお世話になっているヨシトです」
「ヨシトさん? 初めまして」
「ホームズ、ホームに戻るからアイリーンさんの手をつないでおいてくれよ」
(ゴーホーム)
「ホームズ、ダイニングの椅子にアイリーンさんを座らせてくれ、あとアイマスクをアイリーンさんに」
「アイリーンさん、わざわざお越しいただいてありがとうございます。すみませんがアイマスクをしていただけますか。これは特別なアイマスクで目隠しをするというよりも心が穏やかになる効果があるものなのです。
ところでホームズに何と言われてここにお見えになったか教えていただくことはできますか」
「あ、はい、先ほど突然やってきて結婚してほしいと、その話はもう何年も前に断り済みなので変わりませんよといったのですが、もう我慢ができない結婚できないなら死ぬとか言い出して。
それからヨシトさんと友達になったことと代官様ともめていることもあり、私も一緒に町を出て暮らしたいと。
すこし前に死にそうになってやはり私と一緒にならなければ生きている意味がないと悟ったと。
ただ、私にとってヨシトさんが嫌な感じの人だったら一緒に町を出ることはできないので一度会って話をしてほしいといわれて伺いました。」
「ああ、そうですか。実は私遠い国から来たものでこちらに知り合いがいなくて初めて会ったのがホームズとゴーンだったのですよ。いろいろあって二人は信頼のおける仲間だと思っていて一緒に行動したいのですが、長期の旅になりそうなので大事な人も誘ってほしいといったのですよ」
「そうですか、でも御覧の通り私は目が見えないので旅の間中ご迷惑をおかけすると思うのですよね。ですからやはり結婚の話はお断りしようかと思って。でもホームズには幸せになってほしいし、ホームズがここまで信じている人とお話をしたいと思って伺いました。
聞いていた通りヨシトさんて良い人みたいですね。私視力を失ってから邪な考えを持つ人はなんとなくわかるようになって、こんなヨシトさんならホームズを大事にしてくれると感じて。ですので私抜きでホームズと一緒に旅をしてください」
「アイリーンさん、一緒に旅ができないのは目が見えないからですか、仮に目さえ見えればホームズと結婚するし一緒に旅ができるってことでいいですか」
「はい、そうですね、私はどうするとホームズが幸せになるかずっと考えていたのです。私のために教会に寄付してくれていることも知っていましたし。ずっと好きでいてくれることも知っていました。
ホームズのためにはすべて拒絶したほうがいいと思いながらも思い切ることができなかったのです。
でも今日ホームズ私への思いを正直に伝えてくれて、これからやりたいことも伝えてくれたのでホームズのためなら私の思いを断ち切ろうと決心できました。
仮とおっしゃいましたが目が見えるようにはなりませんから、ヨシトさん私の思いも全て載せてホームズを託しますのでどうぞ旅をしてお幸せになってください。」
この時、家の照明が点滅した。
スピーカーがドラムロールをならし、「アイリーンがメンバーになりました。」と奏でた。