すきえんてぃあ氏の歴史言語学研究について
そもそも「何不」の縮約だから同声母(匣母)の「盍」になるのだし。古典漢語と音韻学/中古音の知識があればこういう誤りはしないだろうと思いますが…。 x.com/cppig1995/stat…
2025-01-17 12:51:37あと滑稽なのはこれです。ウィクショナリーの「盍 *m-[k]ˤap」から要らない部分をとって「kˤap」にアレンジしていますが、これもまた氏が古代中国語について何も理解していない証拠になります。 B&S の *m.kˤ- は *kˤ- ではなく *gˤ- になるからです。しかし、氏にそんな知識はありません。 (続く) pic.x.com/Vywj62p9I3
2025-01-17 05:58:20接頭辞*m-は声母の有声化をもたらしたものとして仮定されているのでこれを削って単なる kˤ にはできないし、「何不」の意味で使われるならすでに gˤ であったと見るべきで、「盍」*gˤap が推定される。
2025-01-17 20:31:24望之さんのご指摘について解説しますと、「何不」→「盍」なので、すきえんてぃあ氏の動画の中で「何不」を *gˤajpə、「盍」を *kˤap としている(最初の部分が一致しない)のはおかしいということです。
本人はちゃんとそのこと知ってるみたいなので余計謎 pic.x.com/m1WI8GMa82 x.com/motijuki1017/s…
2025-01-17 18:35:36すきえんてぃあ氏は、動画へのコメントで「何不」→「盍」と言っていながらも、最初の部分が一致しないことを疑問に思わなかったようで、全くの無知であることがよくわかります。
おまけ:第2弾「文字化けを高句麗語と勘違いして解読しちゃいました」
ここでちょっと面白い話をしようと思います。「文字化けを高句麗語と勘違いした天才研究者すきえんてぃあの話」です。 このスクショを見ると、氏は「内洸米」という高句麗地名を「ナクァルメ」と解読したり、「紛」と「岩」の対応を指摘しています。しかし、そんな高句麗地名はありません。 (続く) pic.x.com/4UvlIKbW3t
2025-01-18 03:58:36実は、すきえんてぃあ氏は、史料の原文や先行研究の論文ではなく、とある(かなり怪しい)個人ウェブサイトに載っている高句麗語の記事を見て研究をしているのです。 このウェブサイトでは、文字鏡フォントを使っていわゆる外字を入力しています。「洸」は実は「尒」、「紛」は「峴」です。 (続く) pic.x.com/CFMiEtQXat
2025-01-18 03:58:37「尒」「峴」はいわゆる環境依存文字で、この個人ウェブサイトの記事が作成された20年前(2004年)の時点では、日本のPC環境では対応不可だったので、文字鏡フォントという特殊なフォントを使って、「洸」を書くと「尒」に見えるように、「紛」を書くと「峴」に見えるようにしていたのです。 (続く)
2025-01-18 03:58:37しかし、文字鏡フォントがインストールされていない環境では、「洸」はそのまま「洸」、「紛」はそのまま「紛」に表示されます。 原文にろくに触れたことのないすきえんてぃあ氏は、「内洸米」「仇史紛」のような高句麗地名が存在すると勘違いして、「洸」を「光」の字音で解読したのです。 (続く)
2025-01-18 03:58:38これはすきえんてぃあ氏が、高句麗語の研究ごっこにおいて、実は歴史書の原文も、先行研究の論文もちゃんと読まずに、2004年に書かれた個人ウェブサイトの記事を見て研究を進めていたという証拠です。 しかも文字化けに気づかず、それを高句麗語として「解読」しているという。もはやギャグでしょう。
2025-01-18 03:58:39おまけ:第3弾「戦国七雄の魏と三国時代の魏は、当時の発音が同じ?」
すきえんてぃあ氏は、日琉語史の知識も中国語史の知識もないのに、なんか色んな発見を成し遂げた「在野の天才研究者」の「ふり」をしていますが、氏の動画をもうちょっと一緒に見てみましょう。 これは氏の「当時の発音に基づいた中国歴代王朝名」という動画です。 (続く) pic.x.com/xVUKP31E6y
2025-01-19 20:31:41まず、中国語史に興味がある方なら、「隋」を前期中古音にしていて「唐」も前期中古音にしていることに違和感を覚えるでしょう。 唐は618年から907年まで続いた王朝ですが、7世紀からは「ダン」じゃなくて後期中古音的な「タン」の時代で、日本語の漢音「とう」にもその影響が見られます。 (続く)
2025-01-19 20:31:41漢音は、720年に完成した『日本書紀』にも一部採用されているので、「ダン」→「タン」のような d- > tɦ- の発音変化は、720年より前に既に遠く日本まで伝わっていたのです。 なので、「隋」を前期中古音にしたら、「唐」は後期中古音にするはずです。中国語史に関する知識がある人ならね。 (続く)
2025-01-19 20:31:42しかし、すきえんてぃあ氏は中国語の時代区分という基礎的な知識を持っていないうえに、『日本書紀』に採用されている漢音系の漢字音の特徴すらも把握していないので、こんなデタラメな動画を作ってしまったのです。 問題はそれだけではありません。次は三国時代の「魏」を見てみましょう。 (続く)
2025-01-19 20:31:42よく見ると、左の春秋戦国時代の「魏」と、右の三国時代の「魏」が同じ発音になっています。400年以上離れているのに発音が同じわけがありません。 すきえんてぃあ氏が採用している Baxter & Sagart (2014) の再建体系では、戦国時代の後半に *-uj という発音は *-wəj となったとされます。 (続く)
2025-01-19 20:31:43また、*N.qʰ- は、早い段階で *qʰ- が摩擦しているはずで、これは *N.q- と *N.qʰ- の反映の差に関わる問題なので、この分野をちゃんと勉強した人なら知っているはずです。 もしそれを知らなかったとしても、*N.qʰ- のような子音連結が三国時代の漢字音において想定されないのは常識です。 (続く)
2025-01-19 20:31:43なので「魏 *N.qʰujs」の発音は、実は「ンクイス」から「ンフォイス」を経て、『三国志』の時代には「ングォイ(ス)」みたいな感じに変化していたわけです。 それを反映していないのは、氏はウィクショナリーに載っている上古音(=春秋時代以前)をコピペすることしかできないからです。 (続く)
2025-01-19 20:31:44つまり、すきえんてぃあ氏は、 ① 日本書紀の漢字音の特徴も知らない ② 中国の三国時代の漢字音も知らない ③ 中国語史の時代区分すらも知らない ④ 動画は、自分が理解できていないコピペ情報で作ってる ということです。そんな人が魏志倭人伝を完全解読したとかデタラメ動画を作っているのです。
2025-01-19 20:31:44言い忘れましたが、すきえんてぃあ氏がこの動画で「唐」を後期中古音ではなく前期中古音にしたのは、氏のコピペ元であるウィクショナリーに、前期中古音の発音しか載っていないからです。 ご覧の通り、/dɑŋ/ みたいなものしか載っていません(最後の二つは、中古音から予測される現代北京・広東語)。 pic.x.com/Q2ZCCx40EJ
2025-01-19 20:38:13「魏」も同じで、上古音は *N-qʰuj-s であるとしか書いていません(正確には、欧米の学者の復元案 *N-qʰuj-s と、中国の学者の復元案 *ŋɡuls の二つが載っています)。 すきえんてぃあ氏は、こういうインターネット上の公開情報のコピペしかできない人間で、発音変化を計算する能力は持っていません。 pic.x.com/QU3dOnJG7s
2025-01-19 20:42:17公開情報コピペしかできなくて、前5~前3世紀の戦国七雄「魏」と、400年後の『三国志』の「魏」の当時の発音が同じ「ンクイス」だったという、冷静に考えれば誰でもおかしいと気づくような動画を作っている人間が、その『三国志』の魏が記した魏志倭人伝の日本語を独自研究で解読? ただの虚言です。
2025-01-19 20:50:56この最後の部分が大事だと私は思っています。
すきえんてぃあ氏は、氏が私の研究内容を盗用しているという私の指摘に対して、自分は盗用したことがない、独立的に同じ結論に至っただけだと言い張っています。しかし、ツイッターで検索すれば出てくる、私に研究内容を教わっている証拠とかもありますし、何よりも、こんな何も知らない人が独立的に偶然同じ結論にたどり着いたというのは、客観的に考えてもありえないように思います。
そもそも同じ上古音なのにBaxter-sagartとZhengzhangで違う復元音になっちゃってる時点で言語学の信憑性ってどうなのよ?ってなる。
清水義範氏の「序文」っていう小説を思い出すぜ。さらにこの「序文」、清水氏の出世作の「国語入試問題必勝法」で国語の問題文として出すというネタもやってて面白いぞ