8.【仲間が増えました】
リタがメンバーになった夜、町を無事に脱出できたお祝いをすることにした。
料理を始めるとリタが話しかけてきた。
リタにはシェフスキルがあるそうで、食材を見るだけでその時、そのメンバーに最適な料理ができるとのことだった。
試しにタンドリーチキンのシーズニングを見せると躊躇なく七面鳥を倉庫から持ってきて焼き上げてくれた。
手の込んだものは後日にすることにしてパスタを作ってもらいシャンパンで乾杯をした。
全員がいける口だったので夕飯が終わるころにはワインボトルが5本も空いていた。
片づけはアイリーンが清拭の魔法であっという間に済ませてくれた。
今後のことは明日話そうとお開きにすると、ホームズとアイリーンがホームズの部屋に、リタとゴーンはゴーンの部屋に消えていった。
私は一人寂しく異世界転生のアニメを見てから寝た。
パンが焼けるにおいが漂ってきて目が覚めた。ゴーンがリタに顎で使われながら朝食の配膳をしていた。姿はしっかり新婚夫婦だった。
朝食後に今後の方針について話し合った。
「昨日、仇討ちに協力させてもらうと言ったけど私のいた国の仇討ちについて少し説明させてほしい。私の国では個人間の復讐や仇討は基本的に認められていない。その代わり相手の犯罪行為を詳らかにして、法に判断をゆだねるというやり方だ。
なじみのない考え方だと思うがグレー商会の会長をホームズが殺すと、ホームズが犯罪者として裁かれる可能性がある。私としてはホームズに犯罪者になってほしくない。
なのでグレー商会のやったことを領主に知らせて領主にさばいてもらう方法を取りたいと考えているんだ。
そのためにはホームズの意見を領主が聞き入れるようにホームズの地位を高めることまずやりたい。幸いホームの機能を利用すれば数年でホームズを大商会の会長に押し上げることは可能だと思う。そのうえで領主に話を持っていくのはどうだろうか」
「即答はできない。リタやアイリーンと相談して答えを出させてほしい。ただ今日明日、仇討ちに行けるわけでないのでまずやるべきことを話し合いたい。」
「私の提案を検討してくれるだけでもありがたい。それからもう一つ、新婚の君たちには大変申し訳ないのだが拠点が決まるまでは子供は作らないようにしてほしい。強制はできないが避妊をするなら私の国で避妊に使っていたコンドームが提供できる」
「ヨシトさん、実は避妊のことはホームズと相談済みなのです。幸い私は清拭魔法が使えるので妊娠の心配はないのです。教会では強制性交された女性のために清拭魔法で体を清め望まぬ妊娠を防止することもやっていました。」
「お姉ちゃん、私にも清拭魔法をかけて」真っ赤な顔をしてリタがアイリーンの耳元でささやいた。
(清拭魔法で避妊ができるのか、もしかして清拭魔法って汎用性が高い?怪我した時の傷口を洗うとか言ってたよな)
私からの話がひと段落するとホームズがテーブルに地図を広げて最初にどの街を目指すべきか話始めた。ホームズは最初に我々が会った橋にでてそこから馬で領都に向かうのがいいという考えだった。
ゴーンからはおおむねその案で良いが領都に着くまでに私のレベルアップをしておきたいという意見が出た。
リタからは領都に行くまでに途中の村で商売をしてお金を増やしておきたいとの提案があった。
答えを出す前にティーブレイクをすることにして地図を本棚に片づけた。
この時、家の照明が点滅した。
スピーカーがドラムロールをならし、「異世界の地図を入手しました。 アカシックレコード検索のレベルが2になります」と奏でた。
PCでアカシックレコード検索(2)の内容を確認する。
・地球の出版物をすべて検索できる
・異世界の地図をすべて閲覧できる
・検索・閲覧は紙で出力もできるがホーム内のすべてのディスプレイで見ることができる。
・ディスプレイで見る際は地球の文字と異世界の文字を自由に選択できる
ティーブレイク後に改めて地図を大画面に映し検討を再開する。
精緻な地図に村・町・都市が表示され拠点を選ぶとそこの主産業・人口・不足物などが表示される。
「すごいなこれは、これで行く順番を検討し直そう」
最初に橋のところに出るのは変わらなかった。ただ橋のそばに大きな草原があったので馬たちに新鮮な草を食べさせたいということで、一頭に一人ずつ乗って草原に行き馬に草を食べさせていた。
試したいことがあったので私は馬から降り手綱をゴーンに預けてリビングに戻る。そのまま厩に移動してゴーンに預けた馬を思い浮かべ<come back>と唱えた。
私の馬が厩に現れた。成功だ。馬にまたがり草原に戻るとゴーンが唖然とした顔を私に向けてきた。皆に集まってもらって私のやったことと同じようにやってもらった。
やはり馬を呼び寄せることが可能だった。これで飼い葉を準備する必要がなくなったし馬の運動不足も解消できるようになった。
しばらくはこの草原を使うが準備が整ったら牧場を買ってもう少し多くの馬を飼うことにしよう。
夕飯をリタとゴーンが準備している間にアイリーンとホームズにアカシックレコードの良い利用方法についてはなしてみた。
アイリーンには地球の医療関係の本を読むと清拭魔法の使い勝手が良くなるのではないかと話した。
特に毒・細菌・ウィルス・公衆衛生について知ってもらうことが重要と考えていると伝えた。
ホームズには商売とマーケティングに関する本を読んでもらうことを提案した。
食後にはリタとゴーンにも話した。
リタには地球の食料・料理・栄養に関する本、ゴーンには武術に関する本を進めた。
次に行く村を検討しているときにゴーンがダンジョンの表示に気づいた。領都の近くにゴブリンダンジョンがあるぞ。
初心者のレベル上げに最適だそうだ。私の参加は必須だが皆もいったほうがいいとのことでそのための装備も整えた。
日々のルーチンも徐々に整っていく
私とゴーンの二人で街道を進んでいく。
リタは料理担当
アイリーンはかたづけ担当
ホームズは訪問予定先分析だ
空き時間には皆担当分野の本を貪るように読んでいた。
ダンジョンが近くなり街道から外れ草むらをかき分けながら進んでいると、ホームズが毒蛇にかまれた。死ぬことはないが二三日は具合が悪くなる程度の毒らしい。
ホームに戻るなりアイリーンがホームズのかまれたあたりを凝視し始めた。見つめているうちにアイリーンの額には汗がにじんできたが、それと反対にホームズのかまれた辺りの腫れが小さくなっていった。
「毒を清拭できました」アイリーンは地球の本を読んでいるうちに清拭魔法で毒を除去できるのではないかと考えていたそうだ。
この時、家の照明が点滅した。
スピーカーがドラムロールをならし、「清拭魔法を感知しました。 治癒のレベルが2になります」と奏でた。
PCで治癒(2)の内容を確認する。
・所有者およびメンバーがホームに戻ると怪我が直ちに治癒する。
・所有者およびメンバーがホームに戻ると体に影響を及ぼす量の毒が除去される。
怖くて試すことはできないがまた一つ我々の安全度が上がった気がする。
今日は朝からゴブリンダンジョンに挑戦する。
まずゴーンが一人でダンジョンに入り第一階層からホームに戻れるか実験する。問題なく戻れることが確認できたので全員でダンジョンに突入した。
決めた通りゴーンが前衛でゴブリンの足止めをする。私と女性二人は槍型スタンガンで遠間からゴブリンを感電させる。
ホームズとゴーンで行動不能に陥ったゴブリンのとどめをさしていく。リタもアイリーンも槍型スタンガンの取り回しがうまくゴーンが逃した敵も無理なく感電させていた。
順調に第5階層まで進んだ。
「よし、あそこに見えるセーフティールームに入って家に戻るぞ。」
昼食を終えセイフティールーに戻り装備の最終確認をしているときにとんでもなく美しい女剣士が飛び込んできた。
「女の冒険者がいたのか、良かった、私を殺してくれ、ニンフォマニアックの呪いをかけられた」
そういうなり何かに耐えるようにうずくまった。
「あれこの人ビクトリアさんじゃない、よくお姉ちゃんの教会に寄付していたわよね」
「ああそうだな、ビクトリアさんに間違いないだろう。よりによってニンフォマニアックの呪いか」
「ビクトリアさん、アイリーンですわかりますか」
「アイリーン?目が治ったのかよかったな。もう精いっぱいなんだ早く殺してほしい」
「ビクトリアさん一つだけ、今死ぬのと呪いをかけた人に報復するのとどちらが良いですか」
「報復と言っても、そのために数多くの男性の慰み者にされるのは耐えられない。殺してくれ」
「いえ、男性はここにいるヨシトさんだけです私たちを信じて任せてみませんか」
「もう正常な判断はできないんだ、アイリーンに任せる一番いい方法をとってくれ」
「ヨシトさん、一緒に来てください リタさんも手伝って ホームに戻りますよ」
「ヨシトさん、リタさん、ビクトリアさんをヨシトさんの部屋に。ヨシトさんはビクトリアさんを運んだらリビングで待っていてください。リタさんはビクトリアさんの服を脱がせて毛布を掛けておいてください」
「ヨシトさん勝手をしてすみません、ビクトリアさんをどうしても助けたいのです。お気づきかもしれませんがニンフォマニアックの呪いとは男性と交わらないと狂ってしまうという呪いなのです、それなのに呪いのせいで自殺もできなければ男性に抵抗することもできないのです。
さらにひどいのは短期間に大量の精を受けないとやはり狂ってしまうのです。一人の男性ではどんなにその女性を愛していても50人分くらいの精を2日ほどで注ぎ込むなんてできっこないですからね。
ですからこの呪いを受けた女性はゴブリンの巣に放り込まれるか、娼婦に落とされるか、殺されるか、狂うかしかないのです。
でもヨシトさんならいったんホームから出て戻ればステータスが全回復するので体力的には可能だと思うのです。
ビクトリアさんは素晴らしい人なのですヨシトさんの優しい心でビクトリアさんを救ってください」
「・・・・・」
「本当に時間がないのですヨシトさんお願いします」
リタと入れ違いに私は部屋に押し込まれた。
「ビクトリアさん、私はヨシトといいます誠に申し訳ないが治療だと思ってがまんしてくれ」
「そんなこともうどうでもいいの、早く私に、お願い、もう抑えきれない」
部屋に充満するビクトリアの甘い香りに私も理性を失った。
あとで聞いた話だがニンフォマニアックの呪いは同衾する男性の機能を高め理性を低める効果もあるとのことだった。
それから二日間、二人はお互いを貪りあった。私は体力回復のため何度もホームから出入りをしたがビクトリアさんは部屋から一歩も出なかった。
私が最初に外に出たときにアイリーンさんがユニットバスの使い方をビクトリアさんに教えてくれていた。あとは私が外に出るたびにアイリーンさんが部屋に清拭魔法をかけリタさんが軽食やお茶を差し入れてくれていた。どうやらそのたびにビクトリアさんの気持ちに寄り添うようにしていたようだった。
貪りあった二日間であったが一日目が終わったあたりからビクトリアさんの様子が変わっていった、何か理性が戻ってきているようだった。私も同じタイミングで理性が戻ってきていた。
そして二日目の朝にはお互いの考え方や能力が頭の中に流れ込んできたが、敢えて気づかない振りをしながら交接をつづけた。
二日目の昼過ぎだった
スピーカーがドラムロールをならし、「ニンフォマニアックの呪いが解除されました。治癒のレベルが3になります」と奏でた。
ベッドの中でビクトリアさんを見ると恥ずかし気に私のほうを見つめてきた。
我慢できずに軽く口づけをしてから私は部屋を出てアイリーンさんとリタさんにビクトリアさんの世話を頼んだ。
リビングで治癒レベルの確認をする。
治癒(3)の内容を確認する。
・所有者およびメンバーがホームに戻ると怪我が直ちに治癒する。
・所有者およびメンバーがホームに戻ると体に影響を及ぼす量の毒が除去される。
・所有者およびメンバーがホームに戻ると呪いが解除される。
この家はどこまでも私たちのために尽くしてくれるようだ。
リタさんがリビングにきてホームズとゴーンに自分の部屋に戻るように指示した。
入れ替わりにアイリーンさんとビクトリアさんが入ってきた。
アイリーンさんの服を着たビクトリアさんが女神にみえた。私はまだニンフォマニアックの呪いが解けていないのかもしれない。
呆然とビクトリアさんを見つめる私の前に二人が腰かける。私の隣にはリタさんが座っている。
何か話さなくてはと思うのだが私はビクトリアさんに見惚れて声を出すことができない。
「ビクトリアさんにはヨシトさんのことと、この家のことを説明しました。ヨシトさん、ビクトリアさん何か話したいことはありますか」
私はビクトリアさんから目を離すことができず声を出すこともできない。
「ビクトリアさん、ヨシトさんはあなたに見惚れちゃって声も出ないってさ、あなたから話したら」
リタさんの誘導でビクトリアさんが話しを始めた。
「ヨシト様、呪いを解いてくださってありがとうございました。ヨシト様には醜態をさらしてしまいましたがおかげ様でほかの方に知られることもなく呪いが解けました。
私は辺境伯の娘で第3王子の婚約者でしたが第3王子の母に呪いをかけられてゴブリンダンジョンに転移させられたのです。
これから私は第3王子の母に報復をして、そのあと自害します。彼女は私がどうやって呪いを解除したか探るでしょうがヨシト様の情報は一切漏らさず報復と自害成し遂げます。
ありがとうございました。それから、それから、お慕い申し上げておりますヨシト様」
この時、家の照明が点滅した。
スピーカーがドラムロールをならし、「ビクトリアが配偶者になりました。ホームのレベルが2になります」と奏でた。
「あらぁ、ビクトリアさん残念ね、死ねないみたいよ。ヨシトさんがあなたに惚れちゃって。家もあなたを配偶者認定しちゃたから。この家の認定って嘘がつけないからビクトリアさんもヨシトさんの配偶者になりたいと思っているのは明白なのよね」
「ヨシトさん、ビクトリアさんに言うことあるでしょう」
「ビクトリアさん、私は異世界人でステータスも低くて、とても辺境伯のお嬢様の配偶者になる資格なんてないのですが、私のすべてをビクトリアさんに捧げますので結婚してください」
「ヨシト様、ありがとうございます。実は今朝、ヨシト様の考え方や能力が私の頭の中に流れ込んできたのです。こんな素晴らしい方と一緒に生きていきたいと思いました。でも、呪いをかけられてあさましい姿をさらした私がそんなことを望んではいけないと思い報復をした後に死のうと思ったのです。」
「ビクトリアさん、私の頭の中にもビクトリアさんの考え方や能力が流れ込んできました。それが私のからだ中に染み込み魂をつかんで離さないのです。呪いの影響による行動など何も気にしていません。改めて申し込みます私と結婚してください」
「はい、ありがとうございます。私をヨシト様の妻にしてください」
この時、家の照明が点滅した。
スピーカーがドラムロールをならし、「ビクトリアが魂の伴侶になりました。ビクトリアがホームの副所有者になります」と奏でた。