第9話 出会ってしまった
目を覚ます。
いつもと同じ時間だった。
あのライブから3日が経過していた。
のっそりと起き上がり、ふと横に目をやると...何故かスク水で寝ているエルナさんがいた。
「...す、スク水!?」
はち切れんばかりの水着に思わず目を背ける。
すると、ゆっくりと目を開けて、「...おはよう。...どう?...興奮した?」と、小首をかしげながら聞いてくる。
「...それはまぁ...」と、答えると「えへへ。紅葉くんのエッチ」と、言われた。
えっちなのは確実にあなたの方ですよ。
「ね、いよいよ明後日だね」と、楽しそうに頬を赤らめながら言う。
「...うん」
「乗り気じゃない?」
「いや、なんか緊張するなって...」
「大丈夫。2人で愛を深めましょう?」
少しだけ心に穴が空いてしまったが、その穴はエルナさんとの時間が埋めてくれた。
きっと、1人だった本当にやばかったかもしれない。
それからいつものように準備を始めて、車で学校まで送ってもらい、新たな1日を踏み出そうと...そう思っていた。
◇
校門近くを歩いていると、圧倒的なオーラを放っている女の子が横を通る。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093092379838339
「...え?」
そこに居たのは芹沢聖奈だった。
相変わらず無表情で、何事もないように当たり前に歩いていたのだ。
思わず声をかけてしまう。
「...せ、芹沢さんですよね!お、俺昔からファンで!知らないと思いますけど、YELLって名前でスパチャとかもして、本当に初期の方から応援してて...!!」と、頭で文章を考えるより先に言葉が出るように溢れ出したものを彼女にぶつける。
すると、彼女は驚いたような表情をした後、俺の手を引いて抱きしめてきた。
「...え!?//」
「...YELLさん...知ってるよ。ずっと会いたかった。私がアイドルを続けられていたのはあなたのおかげなの。いつか、お礼をしたいと思っていた」
すると、そのまま俺にキスをするのだった。
「!?//」
次の瞬間、背後からとてつもない殺気を感じる。
振り返ると、校門からこちらを真っ黒な目で見つめるエルナさんがいた。
そして、高速で「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」と言っているのが何となくわかる。
「あ、す、すみません...そ、その...実は俺には婚約者がいまして...」
そう芹沢さんに告げると、今度は彼女が目を真っ黒にし、「は?何それ、聞いてない。彼女いないって言ってたじゃん。ずっと私だけを好きって言ってくれてたよね?嘘ついたの?」と、腕をかなり強めの力で握ってくる。
こわいこわいこわい!
幸せと恐怖と動揺が入り混じる中、すでに色んな視線を浴びている。
「おい、あれ、芹沢聖奈じゃね?」
「いやいや、何言って...って、まじ?」
「隣の男誰?」「てか、なんでうちの高校に?」
そうだ...そういえばそうだった。
何でうちの高校に...。
「この学校を選んだのは本当に偶然だよ。たまたま、知り合いの人が校長をやっていて、そのツテを使って裏口入学したの。そこでYELLさんに出会えるなんて...運命だよね」
裏口入学って...。そんなのアリなのか。
「...とりあえず、婚約者のこととか、私たちの今後について、放課後に話をしよう?って...もしかして、校門の所から私を睨みつけてる女の子が婚約者さん?ふーん?かわいいね。おっぱいも大きいし。外国人さん?だよね。...私とは全然違うタイプじゃん」と、お腹をつねられる。
いや、この感じはだいぶエルナさんと似ている気がするが...。
波瀾万丈の予感を抱きながら、学校に入る。
◇
学校内では既に噂が流れていた。
あの、芹沢聖奈が入ってきたらしいと。
ちなみに、彼女はどうやら通信制の学校に通っていたため、2年までの過程はすでに終えており、3年生として転校してきた。
学年が違うため、接点はないはずなのだが、小休憩が来るたびに彼女は2階の2年1組の教室まで来て、俺と話にくるのだった。
「それでね、私は本当に救われてね...。でも、引退ライブを見返してもYELLさんのコメント見当たらなくて、すっごく悲しかったんだよ?」
「...あーまぁ...その...もちろんライブは見てたけど、涙でコメントできなくて...見返すのもしんどいから...コメントもできてなかったんだ」と、打ち明けると嬉しそうに笑う。
「あ、あの!俺、芹沢さんのファンで!さ、サインとか!」
俺と芹沢さんが話していると、そこにクラスの男子が入ってきた。
すると、すごく冷たい声で「もうアイドル引退したので」と、一瞬で断った。
普段は無表情で冷たい姿は俺が見てきた彼女の姿そのものだった。
しかし、俺と話している時は本当に楽しそうに喜怒哀楽を前面に出していた。
そうして、放課後を迎えると、俺と芹沢さんは一緒に学校を出る。
普段であれば少し離れたところに車を止めてくれているのだが、今日は堂々と正面に止めていた。
そして、2人が対面する。
「...私の婚約者から手を離してくれる?」と、まずは先制パンチのエルナさん。
「...婚約者?だから何?そんなのは私には関係ない。私は私の好きな人と一緒にいたいの」と、対抗する。
こうして、バトルが始まった。
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